ツインモーターで659psのブラックバッジ
BMWへ買収されるまで、ロールス・ロイスは自社のエンジンが何馬力を発生するのか、公表しなかった。1990年代後半までは、「充分なだけ」と表現するに留まっていた。
【画像】紛うことなきロールス・ロイス スペクター・ブラックバッジ 競合する上級EVたち 全113枚
それから四半世紀が過ぎ、ブランドはすっかり様変わりした。最新のクーペ、スペクター・ブラックバッジには2基の駆動用モーターが積まれ、最高出力は659psだと主張されている。史上最強のロールス・ロイスになるという。
0-100km/h加速も、公表されている。実に4.1秒で、その鋭さはサーキットでも実証済みだ。とはいえ、元CEOのクリス・ブラウンリッジ氏が主張するとおり、スペクターは真のロールス・ロイスでもある。
もう少し反社会的な見た目にしたい、と希望する顧客は多いのかもしれない。今回試乗したブラックバッジは、深い色調の威圧的なデザインテーマで仕立てられる。オーダーメイドのビスポークプログラムではない、ラインナップの1つとして追加された。
通常のスペクターより強力なモデルは、当初から計画されていた。一部の特別な顧客へ先行的に試乗してもらい、印象を伺うべく、秘密裏に25台が試作されたという。
そんな高性能は必要ない、と返した人もいたかもしれない。しかし、特別扱いに優越感を感じたユーザーは少なくないはず。「お客様は約半年間、存在しないはずのクルマに乗られていました」。ブラウンリッジが口にする。
ステアリングに追加された無限大記号のボタン
ロールス・ロイスは、年間5000台から6000台のクルマを販売している。それを大きく増やす計画は立てられていない。シェアを広げるのではなく、ユーザーへ特別感を味わってもらうことを、ビジネスの柱にしている。
筆者のもとへやってきたのは、もちろん秘密のスペクターではない。量産仕様のブラックバッジだ。通常との違いは、スタイリングやインテリアだけでなく、技術的な部分にも及んでいる。
外観では、ホイールやダーククロームのトリムが専用品。サイドシルのキックプレートには照明が内蔵され、内装はカーボンファイバー製トリムで飾られる。
1980年代や1990年代のナイトクラブをイメージさせる、バイオレット仕上げも新たに設定された。もっともロールス・ロイスだから、基本的にはオーナー好みにコーディネートできる。事実上、どんな仕上げでも可能だ。
技術的には、659psへのパワーアップが目玉。ただし、デフォルトでは通常と同じ585psに制限されたドライブモードが選ばれている。ステアリングホイールに追加された無限大記号のボタンを押すと、上乗せされた74psが開放される。
このインフィニティ・モード時は、静止時にブレーキペダルとアクセルペダルを同時に踏み込むことで、モーターが身震いするようにひと揺れし、ローンチコントロールがオンになる。同社はこれを、スピリット・モードと呼んでいる。
この時に限り、最大トルクは109.4kg-mへ増強。0-100km/h加速は、4.5秒から4.1秒へ短縮される。
加速力に乗り心地、操縦性は真のロールス・ロイス
インフィニティ・モード時は、ステアリングが僅かに重くなり、アクセルレスポンスは鋭くなる。それでも、テスラ・モデルS プレイドやポルシェ・タイカン・ターボほど過激な特性になるわけではない。
バッテリーEVのスペクターでも、あくまでもロールス・ロイス。全長5490mm、車重2890kgの超高級クーペとして作られている。野蛮なダッシュ力は求められていない。
試しにアクセルペダルを蹴飛ばしてみると、ジェット旅客機が離陸時に加速するほどの勢い。ブラックバッジであっても、ブランドイメージに合致するし、V型12気筒エンジンの感覚とも重なる。
乗り心地と操縦性も同様。インフィニティ・モードの姿勢制御は僅かに引き締まるが、快適ではないと表現する人は皆無なはず。衝撃吸収性は素晴らしい。傷んだ路面を80km/h程度で走っている限り、ボディはほぼフラットに維持される。
加減速時のピッチを抑えるべく、ハードウェアにも変更が加えられた。余計な動きはまったく伴わず、マナーはラグジュアリーでしかない。
内装は細部まで豪華。カーボンファイバー製トリムは、軽量化ではなく織り目の美しさを添えるために与えられている。シートは大きくフラット。素材はくまなく上質で、サイドウインドウの位置は高い。前方に伸びるボンネットが長い。
リアヒンジのドアは重い。開くポジションでドアハンドルを握ると、そのまま身体が優しく外界へ導かれる。
想像以上に運転は楽しい 20%増しの価格へ納得
当然のように、車内は静寂。ただし、加速時に人工音を僅かに奏でることはできる。筆者は短時間で聞き飽きてしまい、オフにしたが。
すると、3mm厚みを増したステアリングホイールのリムを握る音が、1番目立つノイズになる。しっとりしていて、タッチは良い。お抱え運転手は、気に障らないよう、指でそっと操る練習をするはずだ。
路面を占める面積は、ピックアップトラック級に大きい。このクルマをドライバーズカーだと表現することは不思議に思えるが、他のロールス・ロイスと同様に、運転は想像以上に楽しい。
ペダルは、シームレスに発進・停止するのに最適な重み付けと滑らかさ。ステアリングは、極めて正確に反応する。通常のスペクターより速く、姿勢制御も磨かれたようだが、それ以外の美点はすべて受け継いでいる。
英国での価格は20%上乗せになるが、相応の見返りはある。至って麗しい、ロールス・ロイスだ。
ロールス・ロイス・スペクター・ブラックバッジ(欧州仕様)のスペック
英国価格:約40万ポンド(約7800万円/予想)
全長:5490mm
全幅:2015mm
全高:1575mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:4.1秒
航続距離:492-529km
電費:4.1-4.5km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2890kg
パワートレイン:ツイン励磁同期モーター
駆動用バッテリー:102.0kWh
急速充電能力:−kW
最高出力:659ps
最大トルク:109.4kg-m
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)
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