■いままでのトヨタ方式がGRヤリスによって変わる!?
トヨタは、東京オートサロン2020で新型「GRヤリス」を初公開。そのお披露目では、サプライズゲストとして登場した豊田章男社長が語った「トヨタが自らの手で作るスポーツカーが欲しかった」という言葉が印象的でした。
トヨタはいま、スポーツカーのラインナップ構築にもっとも力を入れている国産自動車メーカーです。同社には「86」も「スープラ」もありますが、いずれも開発から設計までを、86はスバルとスープラはBMWというトヨタ以外のメーカーが担っています。
デザインや商品企画、そして走りの味付けなどはトヨタがおこなっているのですが、完全にトヨタの手で作られていないことを気にする人は少なくないようです。しかし、もっとも気にしていたのは章男社長自身だったのかもしれません。その気持ちの表れが冒頭の言葉といえるのでないでしょうか。
WRC(世界ラリー選手権)に出場するために開発されたGRヤリスは、そんな章男社長にとって待望のスポーツカーといえるでしょう。
ボディは、5ドアの標準ヤリスとは異なる3ドアで、全幅はオーバーフェンダーによって標準車の1695mmから1805mm、さらに110mmもワイド化されているのだから驚きです。
エンジンは、272psを発生する排気量1.6リッターの直列3気筒ターボで、駆動方式は“GR-FOUR”と名付けられた新開発のスポーツ4WDシステム。小さな車体にハイパワーエンジンを搭載した、まさにリトルダイナマイトといえるキャラクターです。
ボディはエンジンフード、ドアパネル、そしてテールゲートをアルミ化。また天井をカーボンとするなど高価な素材を使って徹底的に軽量化と低重心化をすすめ、さらにバッテリーをエンジンルームではなく荷室床下に置くなど前後重量バランスの最適化を図っているのも、一般的なトヨタの量産車作りとは大きく異なる部分です。
じつはこのGRヤリスは、単なるヤリスのスポーツモデルではありません。WRC(世界ラリー選手権)で戦うためのベース車両です。
トヨタにとってラリー参戦用のホモロゲーションモデル(競技に出場するために性能を高めて認証を取得する特別仕様)の設定は、1994年2月にデビューしたST205型「セリカGT-FOUR WRC仕様車」以来25年ぶり。トヨタがWRCと、このGRヤリスに大きな期待を込めていることが理解できます。
豊田章男社長は、GRヤリスのお披露目の場で、次のようなコメントをしています。
「これまでは一般のお客さまが使うクルマを作り、レースに使えるように改造していた。しかし今度は違います。ラリーに勝つために普段乗るクルマを作りました」
GRヤリスが初期段階から特別な目的をもって開発されたことがわかります。単なるスポーツモデルではなく、競技で勝つことが目的なのです。
しかしいっぽうで、運転する人を選ぶのではなく、「多くのお客さまに“クルマを操る楽しさを教えてくれる”。そんなクルマでもあります」とGAZOO Racing Companyの友山茂樹プレジデントは話します。
そんなGRヤリスは、作り方も通常のトヨタ車とは異なります。なんとトヨタはGRの特殊なモデルのために新たなライン「GRファクトリー」を新設。
従来ベルトコンベアでの流れ作業が一般的ですが、GRヤリスは台車に乗せて熟練の職人が丹念に1台ずつ作る、まるでスーパーカーのような生産方式としているのだから驚きます。
これにより、一般的なベルトコンベア式のラインのように製造時間の制約がなく、自由度の高い車両生産を実現。
トヨタが得意とする大量生産ではなく、多品種少量生産を可能にしました。なんとGRは製造ラインのありかたやクルマの製造方法まで従来のトヨタ車とは変えてしまったのです。
そんなチャレンジが意味するのはGRヤリスに留まらず、特殊なモデルが今後も登場するということにほかなりません。
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みんなのコメント
こんな変態車を手の届きそうな価格で発売してくれる事を望みます。
変態車=素直に褒め言葉、ですよw
デザインは好みでないし値段も高いから買う事は無いけど、まだこういう変態っ気のあるエンジニアがトヨタ内にいる事、そしてこの企画がしっかり通る今のトヨタの社風は凄く評価できる。