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【岡崎宏司カーズCARS/CD名車100選】Cd値=0.35、0→400m加速16.1秒、生粋のターボファイター、1982年三菱スタリオンの強烈ダッシュ

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【岡崎宏司カーズCARS/CD名車100選】Cd値=0.35、0→400m加速16.1秒、生粋のターボファイター、1982年三菱スタリオンの強烈ダッシュ

ライバルから「スピード競争」を仕掛けられるファイター

 スタリオンは三菱の本格派スポーツである。試乗車はGSR-IIだ。ギアボックスは5速MT、価格は199万5000円(東京地区)。ターボの中では下から2番目のグレードだが、装備は十分だ。

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 シートはスウェード調素材を張ったフルサポートタイプで、AM/FMマルチラジオと、カセットデッキが標準。メカ的にも上級モデルとほとんど変わらない。試乗車にはオプションのアルミホイールと、ブリヂストンの高性能タイヤ、ポテンザが組み付けられていた。

 欧州仕様をドイツで走らせたとき、かなり人目を集めた。ニューモデルに慣れている日本でも、スタリオンの精悍なルックスは、注目のマトだった。静かに走っているときでも、パワーエリートらしいムードがにじむのか、ハイウェイで、交差点からのスタートで、RX-7やランサーEXターボ、フェアレディZといったクルマのドライバーから、よくスピード競争を仕掛けられた。そんなときには、ほんの一瞬フル加速をし、たちまち相手をリード。スタリオンの実力の断片をはっきり見せてやった。スタリオンの強力な加速は、ほんの一瞬のバトルでも、ライバルに敬意を抱かせるに十分な実力がある。

 エンジンは、シグマ/ラムダ・ターボと共通のG63B型ターボエンジンを搭載している。5速のギアボックスも同じだ。だがファイナル比は違う。シグマ/ラムダは3.545だが、スタリオンは加速力アップを狙って3.909と大きくなった。したがって、ゼロヨンのタイムもシグマ/ラムダが16.5秒、スタリオンは16.1秒と0.4秒も速い。これは定員乗車のタイムだから、1人乗りなら当然15秒台に入るはずだ。少々のライバル車が並んだとしても、まず負ける心配はない。このスタリオンに、まともに勝負を挑めるダッシュ力を持つ日本車は、ほんの数えるほどしか存在しない。

 ところが、比べるライバルのいない孤独な走りでは、せっかくの速さが感じられない。ターボの効き具合がスムーズで、パワーが段階を刻まずにカーブを描いて上昇すること、1/2速の低めのギアリングが理由だろう。低いギアリングは、パワーの伸びをすぐに頭打ち状態にしてしまう。パワーがグーンとアップし、スピードが伸びていく、あのシビレるフィーリングが1/2速では体感できないのは残念だ。
 ボクの考えをいえば、ファイナル比をシグマ/ラムダと同じ3.545にしたほうが、トータルとしていい結果を生むように思う。

 GSR-IIのステアリングはパワーアシスト付き。クルマの動きはなかなか軽快で、いかにもスポーツ車らしい。ちょっと飛ばす領域なら、ゴキゲンな気分に浸れる。ステアリング特性は一般的なスピードレンジでは弱いアンダーステアだ。軽いステアリングの手応え、高いコーナリングパワーを示すポテンザ、レスポンスのいいサスペンションの美点が最高に発揮される。足をしっかり地につけ、しなやかにロールする感触はゴキゲンだ。飛ばすのはほどほど、というユーザーは、パワーステアリングの軽めの操舵力を含めて、ハンドリング/ロードホールディングに大いに満足するに違いない。

 だがホットにワインディングロードを攻める本格派になると、完全にニコニコしてはいられなくなる。限界に近いスピード領域では、パワーステアリングとサスペンション、そしてポテンザのマッチング問題が、表面化してくる。追い込むにつれてアンダーの度合いが強まるのだ。とくにタイトコーナーだと、その傾向が顕著だ。最終的にはリアは流れ出すが、そのコントロール性はややシビアである。パワーステアリングとサスペンションのセッティングを、頑張っていま一歩、煮詰めてほしい。

 日本の道路環境の中のスタリオンは、スピードもキビキビした身のこなしも、よかった。新登場のスポーツカーにふさわしい実力を備えている。現在でも魅力的だが、足回りのポテンシャルをビシッと磨き上げれば、それこそ素敵なクルマになるのは間違いない。その日が一日も早く来てくれ、と願おうではないか。
※CD誌/1982年12月号掲載

【プロフィール】
おかざき こうじ/モータージャーナリスト、1940年、東京都生まれ。日本大学芸術学部在学中から国内ラリーに参戦し、卒業後、雑誌編集者を経てフリーランスに。本誌では創刊時からメインライターとして活躍。その的確な評価とドライビングスキルには定評がある。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員

文:カー・アンド・ドライバー 岡崎宏司
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みんなのコメント

15件
  • GLV
    洋画キャノンボール2でジャッキーチェンと大男のコンビがのる黒のスタリオン、パトカーに追われた時はアフターバーナーで逃げ切り、池に落ちたら潜水艦になって水中移動と結構面白い車になって劇中に出てたのを覚えてます。
  • eguchi
    若い頃はゼロヨンタイムで速さを感じていたが当時ポルシェ930(911)ターボが13秒を切ったタイムだったので国産車の非力さを感じていたなぁ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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