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ジャガー史上最強のハイパーセダン「XJR575」、そのツボは絶妙なセッティングのアシにあった 【Playback GENROQ 2018】

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ジャガー史上最強のハイパーセダン「XJR575」、そのツボは絶妙なセッティングのアシにあった 【Playback GENROQ 2018】

JAGUAR XJR575

ジャガー XJR575

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史上最強のXJ

ジャガーのラグジュアリーサルーンに575psを発揮する史上最強モデルが加わった。SVO特別カラーとなるヴェロシティブルーとサテンコリスグレーのボディカラー、20インチの専用アルミホイール、ダイヤモンドキルトシートを採用している。エンスーを満足させる装備が盛りだくさんの高性能サルーンのポテンシャルは如何に・・・。

「イギリス車は最後の最後で『機械が人に与える感動』を優先しているように思う」

最近、イギリス車とドイツ車の違いについて考える機会が多い。クルマの特質を生まれた国ごとに分類するのは、ひとりひとりの個性を国籍別に論じるのと同じくらい乱暴なことだが、それでもイギリス車にはイギリス車共通の持ち味が、そしてドイツ車にはドイツ車固有の思想が、それぞれの製品の奥底に息づいているように思えて仕方がない。

私が考えるに、ドイツ車には機械の優秀性を徹底的に追求するドイツ人気質が反映されていて、乗り手も機械の精巧さ、精密さに共感を覚えてドイツ車を愛好しているような気がする。一方、機械の優秀性を追求するのはイギリス人も同じだが、機械としての完成度を最終目標としているドイツ車に対して、イギリス車は最後の最後で「機械が人に与える感動」を優先しているように思う。こうしたスタンスの違いが、ドイツ車にある種の冷たさを、イギリス車にある種の温かさを与えているというのが私なりの推論である。

「ステアリングを握ったときに感じられるのは、興奮というよりもむしろ寛ぎだ」

ジャガーのドライバーズシートに腰掛けたときに感じる心の落ち着きや温もりも、こうしたイギリス車の出自に根ざしたものなのだろう。そしてそれは、先ごろデビューした史上最強のXJサルーン“XJR575”でもまったく変わらなかった。

目の覚めるような鮮やかなブルーにペイントされ、Rの文字と赤い575を組み合わせた専用ロゴが各所にあしらわれていても、XJR575に人を威嚇するような攻撃性は認められない。そしてステアリングを握ったときに感じられるのは、興奮というよりもむしろ寛ぎである。

控えめに響くエキゾーストノートに好印象を抱きつつ走り出せば、その低速域でのしなやかな乗り心地に誰もが驚くはず。いくらジャガーでも、さすがにRの文字がつくとこれまではスプリングとダンパーを締め上げたサスペンションが漏れなくついてきたものだが、このXJR575はまったくの別物。タウンスピードの領域では「これで575psのパワーを支えきれるのか?」と少し心配になるくらい、足まわりはソフトな設定とされていたのだ。

「姿勢変化の過程が、思わず心がとろけそうになるほど心地いい」

ところがワインディングロードでペースを上げれば、あのしなやかなサスペンションのどこにこれほどの筋力が潜んでいたのかと不思議に思うほど、ローリングやピッチングをしっかりと抑え込んでくれる。しかも、その姿勢変化の過程が、思わず心がとろけそうになるほど心地いいのである。そうした挙動は、急にストンと落ちてそれ以上動かなくなるわけでもなければ、最初から動きを拒むような頑なな反応を示すわけでもない。最初はしなやかに、その後は次第にしっかりとボディを支えてくれるのだが、それはまるで、疾走するネコ科の大型動物が強靱な四肢で大地からの衝撃を巧みに受け止めている様子を私たちに連想させる。

ステアリングの感触も人の自然な感覚によく馴染むタイプだ。切り始めのゲインを無闇に高く設定することなく、大きく操舵してもリニアに反応する特性はドライバーに強い安心感をもたらしてくれる。おかげで、初めて走る道でもほとんど躊躇なく限界近くまでプッシュできたが、それでもヒヤッとするような場面には一度も出くわさなかった。

「パワープラントのドライバビリティが高いことにも大いに驚かされた」

575psと700Nmを生み出すパワープラントのドライバビリティが高いことにも大いに驚かされた。きっと出力の立ち上がりがリニアで穏やかなのだろう。おかげでフルスロットルを与えても、ドライバーにほとんど恐怖心を与えることなく、トップエンドまで伸びやかに回転を上昇させていく。過給をスーパーチャージャーで行っているためか、回転数が上昇する前にトルクだけがドンと立ち上がることがないのも好ましいところ。いかにも緻密そうな回り方をする点も、この5.0リッターV8エンジンの魅力だ。

純粋なパフォーマンスだけでいえば、XJR575より速い4ドアセダンはほかにもあるだろう。しかし、これほどドライバーに寛ぎと心の平穏をもたらしながら、いざとなればスポーツカー並みの性能を発揮できるラグジュアリーサルーンをイギリス車以外で探すのは難しい。ポルトガルの丘陵地帯を半日ほど走り続けたあとで改めてXJR575を眺めると、イアン・カラムの手がけた流麗でエレガントなフォルムが傾きかけた陽射しのなかで一層輝きを増しているように思えた。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/JAGUAR LAND ROVER LIMITED

【SPECIFICATIONS】

ジャガー XJR575

ボディサイズ:全長5130 全幅1899 全高1460mm
ホイールベース:3032mm
車両重量:1875kg
エンジン:V型8気筒DOHC+スーパーチャージャー
総排気量:5000cc
最高出力:423kW(575ps)/6250-6500rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/3500-4500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/35ZR20 後295/30ZR20
最高速度:300km/h
0-100km/h加速:4.4秒
環境性能(EU複合モード)
CO2排出量:264g/km
燃料消費率:11.1L/100km
車両本体価格:1887万円

※GENROQ 2018年 1月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

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