一部改良を受けたマツダ「ロードスター」に、『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキが乗った! まずは金属製ルーフを持つ「RF VS」をリポートする
マツダ ロードスターRF VSの特徴
1.エクステリア
2.インテリア
3.電動格納式ハードトップ
1.エクステリア
雲が低く垂れ込める静岡県、伊豆半島を舞台に、マツダが誇るライトウェイトスポーツの代名詞、ロードスターの一部改良モデルの試乗会が開催された。
ベースキャンプとなった大熱海国際ゴルフクラブの駐車場には、色とりどりのロードスターが整然と並べられ、出番を待ち構えている。空模様は気まぐれで、時折細かな雨粒がフロントガラスを濡らしてはまた日が差すといった、オープンカーの試乗においては天を仰ぎたくなるような不安定な状況であった。
しかし、そんな天候への不安を感じさせず、むしろこのしっとりとした空気感の中に美しさを放っていた1台のクルマがあった。それこそが、今回の試乗プログラムにおいて筆者が最初にステアリングを握る相棒として割り当てられたロードスターRFだ。
試乗車として用意されていたのは、RFのラインナップの中でも最上級に位置する「VS」グレードであり、トランスミッションは6速オートマチック(6EC-AT)を搭載したモデル。車両に近づき、まず目を奪われたのはそのボディカラーだ。マツダが「匠塗(TAKUMINURI)」として心血を注いで開発した「マシーングレープレミアムメタリック」が纏われていた。
この塗装は、単なる暗灰色ではない。光が当たるハイライト部分では金属の硬質で輝きを放ち、影となるシェード部分では鉄のインゴットのように黒く沈み込む。伊豆の山々を覆う薄曇りの空の下において、マシーングレーは周囲の景色を反射し、RFの特徴である流麗なファストバックのルーフラインからリアフェンダーにかけての有機的な曲線を、立体感をもって浮かび上がらせていた。全長3915mm、全幅1735mm、全高1245mmとのコンパクトなディメンションでありながら、そこから放たれる存在感は、欧州のプレミアムスポーツカーにも引けを取らない凄みを感じた。ソフトトップモデルが持つ軽快で若々しい印象とは異なる、酸いも甘いも噛み分けた大人のためのスポーツクーペたる風格が、そこには静かに漂っていたのだ。
2.インテリア
低く抑えられたルーフに注意しながら、低重心のコクピットへと身を沈める。
ドアを開けた瞬間に目に飛び込んでくるのは、外装のストイックな金属感とは対極をなす、温かみと華やかさに満ちた空間であった。VSグレードに設えられた「スポーツタン」カラーの内装である。
シート表皮には、しっとりとした肌触りを提供するナッパレザーが奢られており、その明るくも深みのある茶褐色が、室内にラウンジのような上質なくつろぎをもたらす。ダッシュボードの下部やドアトリムにも同色の加飾が施されており、ブラック基調の樹脂パーツとのコントラストが絶妙な調和を生み出している。
シートのホールド性はスポーツカーとして過不足のないものでありながら、長時間のドライブでも疲労を感じさせない包み込まれるような優しさを持っていた。ステアリングホイールの奥には、中央にタコメーターを配置した伝統的な3眼メーターが鎮座し、走りへの期待を高めてくれる。
スペックシートに目を落とす。今回試乗するRF VS(6EC-AT)の車両本体価格は¥4,246,000。そこに特別塗装色であるマシーングレープレミアムメタリックのオプション費用¥55,000が加わり、総額で¥4,268,000のプライスタグが掲げられている。もはや300万円台から手に入る身近なライトウェイトスポーツの枠組みを超え、プレミアム・グランドツーリングカーとしての価格帯に足を踏み入れている。
しかし、この内外装の仕立ての良さと、専用設計のFRプラットフォームを持つ希少性を鑑みれば、不当に高いとは感じさせないだけの説得力が、静止状態の空間だけでも伝わってくるのだった。
3.電動格納式ハードトップ
エンジンを始動する前に、まずはRFのアイデンティティである電動格納式ハードトップを開けてみることにした。
センターコンソールに配置されたスイッチを押し続けると、背後で微かなモーター音とともに、複雑なリンク機構が精密な“ダンス”を踊り始める。リアのフライングバットレス部分が持ち上がり、分割されたルーフがシート後方の限られたスペースへと吸い込まれていく。その間、わずか十数秒。
しかし、試乗を進める中でひとつだけ気になった点がある。この開閉機構は、安全上の理由から車速が約10km/h以下でなければ作動しない仕様となっているのだ。今回の伊豆での試乗のように、山特有の天候急変により突然強い雨に見舞われた際、走行中に素早くルーフを閉めることができず、一時停車できる場所を探すまでに車内が濡れてしまう場面があった。
手動であれば信号待ちのわずかな時間や低速走行中でも手軽に開閉できるソフトトップの気軽さと比較すると、この点においては少々の煩わしさを感じざるを得ない。
とはいえ、スイッチひとつで完結するエレガントな所作と、クローズ時の美しさは、このクルマのキャラクターには必要不可欠な要素なのだろう(次のページへ続く)。
▲次のページ:「逆風を越える進化」
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