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保守的なセグメントで勇躍するBMW 745eとアウディ A8 55TFSI。乗ればわかる味わい深さをレポート 【Playback GENROQ 2020】

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保守的なセグメントで勇躍するBMW 745eとアウディ A8 55TFSI。乗ればわかる味わい深さをレポート 【Playback GENROQ 2020】

BMW 745e × Audi A8 55 TFSI Quattro

BMW 745e × アウディ A8 55TFSI クワトロ

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プレミアムの表現法

全長5mを超えるサルーンは、プレミアムブランドの世界観が最も強く現れるカテゴリーだ。アウディ A8、BMW 7シリーズという2台のサルーンを乗り比べることで、それぞれが示すハイエンド・サルーンの哲学を検証してみよう。

「日本国内のこのクラスでは、BMWもアウディもオルタナティブ側だが・・・」

日本におけるLセグメントは販売面からみれば、メルセデス Sクラスとレクサス LSがそれを構築している。昨今ショーファードリブンとしての役割はアルファード系のクルマが担うことも多いとはいえ、礼式視点からみればブランドや車名自体が社会に認知されているという点も強力な支持に繋がっているのだろう。

と、セグメント的に守旧的な一面もあるこの市場においては、さしものBMW 7シリーズもアウディ A8もオルタナティブの側に回ることになる。が、海外に目を向ければこれらドイツ3モデルの販売は日本とは比べられないほどに接近しているのもまた事実だ。

2015年に登場したG11系7シリーズは、昨夏にLCI、すなわちマイナーチェンジを受けたモデルが日本に上陸した。否が応でも目につくのは前期型に対して面積で40%広がったという大型のキドニーグリルだ。当然ながら個性や独自性を示す象徴としての拡大だが、賛否両論あるのはご存知の通りだ。

「LCI後の7シリーズの技術的なトピックはADASとインフォテイメントシステム」

が、実物を目にすると車格の大きさもあってか、写真で見ていた際の違和感はあっさり霧散する。少なくとも僕はそうだった。むしろ最新のモードに則った灯火類などによって前期型よりも俄然シャープさが高まり、それが鮮度にも繋がっている。

LCI後の7シリーズの技術的なトピックは、ADAS=先進運転支援システムのアップデート、AI対話型ボイスコマンドシステムや新世代のメーター&インフォテインメントの採用、パワートレインの強化、などが挙げられる。ADASに関しては、高速道路での60km/h以下の状況ではハンズオフでも前車を捕捉、追従する渋滞運転システムや直近50mの軌跡を記憶し、後退時には自動的にその軌跡を辿るリバースアシストなど、最新の3シリーズなどと同等の支援システムを手に入れた。

試乗した745eは、前型では740eとしてラインナップされていたPHVの後継だが、新型はエンジンを2.0リッター直4から3.0リッター直6にスイッチ、バッテリー容量は12‌kWhに拡大され、WLTCモードで最長50.4kmのEV走行を可能としている。

「745eのEVモードは、都市部では必要十分のパワーを備えている」

最高140km/hまでバッテリーのみの走行を可能としているという745eのEVモードは、都市部では必要十分のパワーを備えているかなという印象だ。東京近郊になぞらえれば、首都高を使わない片道10km程度の通勤ならエンジンが稼働することはないだろう一方で、首都高速の合流など瞬発力を要する時にはエンジンパワーも必要になる可能性は高い。が、その際のパワーソースの連携も先代に対して一段と滑らかになった。これは一次振動のない直6がゆえの効能でもあるだろう。

モノコックの芯材にカーボンを用いるCLARアーキテクチャーのおかげで、745eは12‌kWhのバッテリーを搭載していながら車重は2090kgとこのクラスのPHVとしては相当に軽い。ハンドリングに濁りや鈍さはなく、20インチの低扁平ランフラットタイヤを履いていながら乗り心地もスッキリと洗練されており、バネ下回りから無粋なアタックやシェイクが伝わることは殆どない。この味わいは前述の軽さに加えて、BMWならではのランフラットタイヤの特性を踏まえたダイナミクスデザインの知見があってのものだろう。

「A8の操作系が思いの外重く調律されていることに驚かされた」

こと7シリーズの軽快感についてはSクラスはもとより、A8も敵わないだろうと思っていたが、18年に日本に投入された4代目A8は最新世代のASFテクノロジーで、アルミだけではなくマグネシウムやカーボンなどを剛結部材に用いたハイブリッドボディを実現している。ベルトドリブンの48Vマイルドハイブリッドシステムを採用した3.0リッターV6クワトロをして、車重は2040kgとこちらも重量に関しては一家言持つクチだ。

走り始めてちょっと驚かされたのはステアリンングやスロットルといった操作系が思いの外重く調律されていることだった。かつてはアウディが先陣を切って進めてきたインターフェイスの操作力低減は他のドイツメーカーにも伝播したが、今やA8のそれは7シリーズよりもずしりとした手応えを伝えてくる。

A8はこの秋から新たに「プレディクティブ・アクティブサス」がオプションで選択できるようになった。これは前方用のカメラでセンシングしたロードサーフェスに準じて、エアサスユニットに装着されたアクチュエーターを作動、伸び側沈み側の双方にエアサスをアクティブに応答させることで徹頭徹尾のフラットライドを実現するものだ。加えて、万一の側方衝突の際には衝突側の車高を上げて衝突エネルギーの伝播を軽減する機能や、停止後ドアを開くと少し車高を上げて乗降を補助する機能なども備わっている。

「ドライブの楽しさを満喫できる2台。スルーしてしまうのは、あまりに勿体ない」

日本の都市部は道もよく整備されているが、油断していると時折大きな凹凸や陥没気味のスポットに出くわすこともある。通過時にちょっと身構えてしまうような、そういう路面状況でドライバーはこのサスの効果を実感することになるだろう。実際、試乗中に現れた大きな凹面を、このA8は車体を揺することなくスイッとこなしてくれた。

V6ターボのパワー&トルクはこの車格に十分以上。そこにこのマジックカーペットライドの組み合わせは、ドライブの歓びをハイテクで支えるというアウディの個性を飛ばしても流してもたっぷり実感することになるだろう。7シリーズも然りだが、食わず嫌いでスルーしてしまうのはあまりに勿体ない話だと思う。

REPORT/渡辺敏史(Toshifumi WATANABE)
PHOTO/藤井元輔(Motosuke FUJII)

【SPECIFICATIONS】

BMW 745e ラグジュアリー

ボディスペック:全長5125 全幅1900 全高1480mm
ホイールベース:3070mm
車両重量:2090kg
エンジンタイプ:直列6気筒DOHCターボ
総排気量:2997cc
最高出力:210kW(286ps)/5000rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/1500-3500rpm
システムトータル最高出力:290kW(394ps)
システムトータル最大トルク:600Nm(61.2kgm)
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前後245/50R18
燃費:12km/L(WLTCモード)
車両本体価格:1221万円

アウディ A8 55TFSI クワトロ

ボディスペック:全長5170 全幅1945 全高1470mm
ホイールベース:3000mm
車両重量:2040kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2994cc
最高出力:250kW(340ps)/5000-6400rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1370-4500rpm
システムトータル最高出力:-
システムトータル最大トルク:-
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前後255/45R19
燃費:10.5km/L(JC08モード)
車両本体価格:1172万円

※GENROQ 2020年 2月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

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みんなのコメント

2件
  • 地味だけどアラフィフのオジサンとしては、最新のSクラスなんかより落ち着きとクラシカルな部分も残っていて好き。飽きが来ないのも自分には重要。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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