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「目標は全勝」小泉洋史とコッツォリーノがAFコルセから2023年のル・マン・カップに挑戦へ

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「目標は全勝」小泉洋史とコッツォリーノがAFコルセから2023年のル・マン・カップに挑戦へ

 2023年、ヨーロッパで開催されているミシュラン・ル・マン・カップに、日本から注目のチャレンジャーが挑むことになった。2015年まで全日本F3選手権に挑戦していた小泉洋史が、ケイ・コッツォリーノとともにフェラーリのワークス格とも言えるAFコルセから参戦することになったのだ。小泉とコッツォリーノのふたりに、参戦までのいきさつと意気込みを聞いた。

 ミシュラン・ル・マン・カップは、ル・マン24時間やWEC世界耐久選手権を運営するACOフランス西部自動車クラブが開催するシリーズのひとつ。ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ(ELMS)の前座で開催されるシリーズで、LMP3とGT(GT3)の2カテゴリーのレース。週末に1時間×2レースを開催。バルセロナ、イモラ、ル・マン、ポール・リカール、スパ・フランコルシャン、ポルティマオという6ラウンドが開催されるが、ル・マン24時間の前座として開催されるレースは『ロード・トゥ・ル・マン』と題されている。ル・マン24時間の参戦枠を得られるチャンスがある。

小泉洋史とケイ・コッツォリーノがル・マン・カップのポルティマオ戦でクラス優勝を飾る

 そんなシリーズに、日本から注目のコンビが挑戦することになった。2014年まで全日本F3に挑んでいた小泉、そして日本のみならず、アジア屈指のドライバーとして数えられるコッツォリーノのコンビだ。しかもチームは、フェラーリのワークス格としてさまざまなレース活動を行うAFコルセというパッケージ。現在のところ確定しているわけではないが、車両は新車フェラーリ296 GT3がふたりのために優先的に用意されるという。

■本場ヨーロッパで挑戦するために
 小泉は東海大学出身。大学まで柔道に打ち込み、大会で優勝したこともある猛者だが、モータースポーツ好きが高じビジネスマンとして活躍するかたわら、レースに挑戦を始めた。2005年にはスーパーGTにも参戦すると、2009年には全日本F3のNクラスに挑戦を開始。2014年にはNクラスチャンピオンも獲得してみせた。

 その後、2015年を最後に一度スッパリとレースからは“引退”する。ライセンスも更新しなかったというが、「悪い虫がうずき出しまして(笑)」と53歳でレースに復帰。2022年は、GTワールドチャレンジ・アジアに挑戦を開始した。ここで再会したのが、シリーズで木村武史と組み圧倒的なスピードをみせていたコッツォリーノだった。

 実は小泉がフォーミュラに乗っている頃、コッツォリーノとは都内で同じトレーナーのもと、一緒にトレーニングを行っていた間柄だという。とはいえ、近年は連絡をとっていたわけでもなく、GTワールドチャレンジ・アジアでは「ひさしぶり!」と声をかわしていた。

 そんな小泉がレースに復帰する際、試してみたかったのは「本場のヨーロッパ勢にどこまで通用するのだろうか」ということだった。「やる以上は海外でやりたかった」と考えていたところ、GTワールドチャレンジ・アジアの併催でフェラーリチャレンジが開催されていた。

「私にとって、フェラーリと言えば『AFコルセ』だったんです。以前はずっと門前払いだったんですが、今回、ある知り合いを通じて日本に来ていたAFコルセの方に会って欲しいと伝えたんです。AFコルセのチーム代表であるアマト・フェラーリさんの右腕のアンドレア・グイドッティさんという方に会うことができました」

 小泉は英語はできないが、通訳を通じてこれまでのキャリアなどを猛アピール。「とにかく乗せてください!」と自らを売り込んだ。その熱意が伝わったか、その後GTワールドチャレンジ・アジアでの小泉の走りをウォッチしてくれていたのだという。ここで小泉の実力が評価され、ヨーロッパでのテストの勧誘がきた。

 とはいえ、テスト日程のスケジュールがなかなか噛み合わない。小泉は迷いに迷っていたが、そんなところに「本気で考えているのであれば、まずはテストするよりも、一度レースに出てみないか?」と提案がきた。それが2022年のミシュラン・ル・マン・カップの最終戦ポルティマオだった。

■2022年最終戦への挑戦で勝ち得た信頼
 小泉は「即答したかったのですが、プレッシャーもありましたし、では誰と組むのか……という課題もありました」とこれまた迷いつつも、まずは「出させてください」とレース参戦を決意した。

 もちろんAFコルセだけに、世界トップのフェラーリ使いのドライバーと組むことも可能だった。ただ、それと同時に小泉の言語の課題もあった。そんなやり取りをしているうちに、AFコルセから「そうだ小泉サン、うっかりしていたよ。日本だったらケイ・コッツォリーノがいるじゃないか」という提案がされた。イタリア語も英語も堪能。しかもフェラーリも熟知し、速い。

 願ったり叶ったりの選択で、「彼は僕にとっても友人だ。ぜひお願いしたい」と小泉からAFコルセを通じてコッツォリーノにオファーが届いた。そしてふたりは2022年10月、ポルティマオで開催されたミシュラン・ル・マン・カップにスポット参戦。なんといきなりGTクラスで優勝を飾ってみせた。しかも、アマト・フェラーリが観る眼前での勝利だったという。

 こうしてAFコルセの信頼を得た小泉は「単年度で挑戦を終えるつもりはなくて、自分なりに目標をもち、稚拙な表現ですが『いけるところまでいく』つもりでいます」と腰を据えてヨーロッパに挑戦するつもりで2023年の参戦を計画していった。アマト・フェラーリにもその思いを伝えた。

「今年54歳になりますが、自分なりに真剣に取り組んでいるんです。プロもアマも、経験も関係ありません。F1が用意されて隣にシャルル・ルクレールがいたら、勝負しなければいけないと思っています。遊びでも趣味でもありません……という思いをアマトさんに伝えました」

 シリーズの選択についてはELMS、GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ、そしてミシュラン・ル・マン・カップが欧州スポーツカーレースのなかで高いクオリティをもつ3つと提案され、そのなかでスプリントで走れることから、ミシュラン・ル・マン・カップを選んだ。

 2023年に向けては、他メーカーからの誘いもあったというが、これは断り、AFコルセには「最高のパッケージを用意して欲しい」と伝えた。ドライバーもコッツォリーノ以外に選択肢もあったというが、「ジェームス・カラドなのか、アレッサンドロ・ピエール-グイディなのか、それともケイ・コッツォリーノなのかは分かりませんでしたが(笑)、結果的に相性も含めて、このパッケージが良いだろうと言われました」と、ふたたび2023年に向け、コッツォリーノにオファーが舞い込んだ。

■「やはり本場はヨーロッパ」コッツォリーノの決断
 もちろんイタリア人の血を引くコッツォリーノにとっても、フェラーリ、そしてAFコルセは憧れでもあった。ただ、2022年はスーパーGT、そしてチャンピオンを獲得したGTワールドチャレンジ・アジアと結果を残しており、日本の関係者もそれは熟知していた。

「大変ありがたいことに、日本でも数チームから2023年に向けてオファーはいただいていました」とコッツォリーノは明かす。そんななかでやってきた、ヨーロッパで戦うチャンス。しかもAFコルセでのレースは魅力的だった。

「2018年くらいから、NSX GT3に乗ったこともありましたが、ずっとフェラーリでやってきました。日本生まれですがイタリア人で、憧れのAFコルセというチームで、勝負をかけたいと思いました」

「もちろん今年、日本でも活動はするつもりではありますが、やはりレースの本場はヨーロッパなんですよね。今季はあちらに軸を置いてシーズンを戦うつもりです」

 ふたりにとって、今季はある意味チャンスでもある。それは世界中で愛用されているフェラーリのGT3車両が、488 GT3から296 GT3に変わっていく年だからだ。296 GT3の納車の可能性がまだ100%ではないが、エンジニアたちといち早く良いセットを見つければ、可能性はさらに広がっていく。

 ちなみに2022年、コッツォリーノは木村武史と組んでスーパーGTもGTワールドチャレンジ・アジアも戦った。コッツォリーノは木村にこの決断を相談したというが「ケイはヨーロッパでレースを頑張った方がいい」と応援してくれたという。GTワールドチャレンジ・アジア、スーパーGTとも日程が重なるレースがあるが、先に決めたヨーロッパでの戦いを「優先していいよ」と言ってくれたそう。

■お互いに切磋琢磨し「目標は全勝」
 コッツォリーノは走ったコースがほとんどだが、今季小泉はポルティマオ以外は初めてのコースとなる。ただ現代はシミュレーターという武器がある。「ポルティマオの前に初めてシミュレーターをやったのですが、現実との違いがなんとなく分かりましたし、他のコースも違いを感じながら臨もうと思っています」と小泉。

 当然この体制で臨むからには、目標はチャンピオンだ。コッツォリーノはさらに「僕は全部優勝するつもりでいきます。自分の速さも大事ですが、組むパートナーの速さも大事。小泉さんにいかに時間をかけて乗ってもらうかも大切になってきます。僕は僕で、チームとともにクルマを作り上げなければいけないと思います」と意気込んだ。

「そのやり方で、昨年は勝つことができました。そして、勝ちパターンをいちばん分かっているチームと一緒にやるわけですからね。今年はレベルがさらに上がるとも言われていますが、やる以上は全勝です」

 このコッツォリーノの意見には、小泉も同意する。「昨年、ポルティマオのときはすごくフリープラクティスの時間が長かったので、コースにもクルマにもかなり慣れることができました。合計100周しましたから(笑)」と小泉は語った。

「幸い体力はあるので、最後はエンジニアに心配されたくらいでしたけどね」

 コッツォリーノは、小泉のことを「プロみたいな人。体脂肪率も6~7%くらいですし、ポルティマオのときはレースが朝早かったのですが、小泉さんは朝の5時にサーキットに着いてストレッチしているんです。ファクトリードライバー以上にストイックです」と評する。

 小泉はプロの速さに追いつくべく、そしてコッツォリーノは小泉を引っ張り、ヨーロッパの舞台でプロとして戦う“覚悟”をもって臨まなければならない。「運命共同体ではありませんが、僕もケイの覚悟をもって挑戦しなければと思っています」と小泉は語った。

 AFコルセの一員として戦うことになった小泉洋史とケイ・コッツォリーノ。今季、どんな吉報をもたらしてくれるか、まずは開幕前のバルセロナテストから注目しておきたい。

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