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風洞、CFD、両規定ハイブリッド。三車三様の独自開発が特徴のGRスープラ【2023年GT300開発競争その2】

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風洞、CFD、両規定ハイブリッド。三車三様の独自開発が特徴のGRスープラ【2023年GT300開発競争その2】

 2023年のスーパーGTに参戦するGTA-GT300規定車両へ導入された『基本車両と同様の外観を維持』するという新レギュレーション。『2023年GT300開発競争その1』では導入された新規定をあらためておさらいしたが、実際にGTA-GT300規定車両を走らせる各チームは今季に向けてどのような対策を行ったのだろうか。今回はトヨタGRスープラGT陣営のマシンをチェックしていく。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

影響大は外観よりフロア変更。GTA-GT300車両に導入された新規定をおさらい【2023年GT300開発競争その1】

 GT300クラスにトヨタGRスープラがデビューしたのは2020年シーズン。埼玉トヨペットGB GR Supra GTが口火を切り、その車両開発には過去に何台ものレーシングカーを独自に製作してきたaprが協力。2021年にはLM corsaとMax Racing、2022年にはHOPPY team TSUCHIYAがGRスープラにマシンをスイッチしている。Max RacingのHACHI-ICHI GR Supra GTこそ“吊るし”の状態に近いが、GRスープラはチームが独自に開発を進め、三車三様の仕立てになっているのが興味深い。それは2023年規定への対応も同じだ。

■前方から後方までトータルで気流制御。軽量化も実現の埼玉トヨペットGB GR Supra GT
 埼玉トヨペットGB GR Supra GTは、風洞実験を繰り返してエアロを開発してきた。2023年規定に合わせたエアロも風洞をかけたが、1回目の数値は2022年仕様の性能を上回れなかったという。新規定導入の今季においては、ボディとフロアを分け、それぞれで2022年規定のままでの参戦も認められている。

 ただし、いずれかが2022年規定のままの場合、今季中のアップデートはできない。これはほとんどのチームで同意見だったが、GT300規定車両を使うのは、チームとしての技術を磨き、そのうえで優勝、シリーズタイトルを目指すためだ。シーズン中の開発、アップデートが許されないのは、技術の研鑽をスポイルすることにつながる。できる限りそれは避けたい。当初は2022年仕様での参戦も覚悟したというが、細部を見直した2回目の風洞で2022年仕様の数値を上回ることができたそうだ。

 フロントカナードは2022年仕様と同じ3枚構成だが、最下段がフロントリップの延長線上に並んでいたものを少し上にオフセットした。フロントフェンダー後方下部には、渦を作ることでホイールハウス内の空気排出を高める効果を狙った鋸歯状のパーツを設置。これはaprが手がけたトヨタGR86やレクサスLC500hの2023年仕様にも備わるもの。埼玉トヨペットGBとaprは、お互いが試して良かったものを投入する協力関係にあるという。もちろんライバルではあるが、切磋琢磨しつつその相乗効果でGT300規定車両のパフォーマンスを底上げしあっているわけだ。

 リヤフェンダー後方は、タイヤカス飛散防止用のワイヤーメッシュ設置とともに形状も見直した。また、ボンネットのアウトレットもフラットだった部分を段落ちさせて小変更している。空力ではないが、軽量化も追求して約5kgのダイエットに成功したのも今季アップデートのトピックとなる。これらの空力アイテムは、ひとつで効果を発揮するものでも、大きな性能向上を果たすものでもなく、ボディとフロア、前方から後方までトータルで気流制御することによって効果を得られるという。その“チリツモ”によって2022年仕様のエアロダイナミクスを上回り、今季の好調を引き寄せたのだ。

■性能に加え見た目にもこだわったSyntium LMcorsa GR Supra GT
 Syntium LMcorsa GR Supra GTは2021年にGRスープラを導入すると、2022年にはフロントマスクを刷新。LM corsaの母体は大阪トヨペット(OTG)であり、ディーラーチームとして市販車の販売にもつながるようにと、フロントバンパー開口部の形状をベース車両のGRスープラに近いデザインとした。さらに、CFD(数値流体力学)によるシミュレーション解析によってフロントフェンダー周辺も改良。ドラッグを減らし、リヤウイングの効率を上げるべく、フロントフェンダー前方が張り出したデザインを採用した。しかし、2023年規定でそれが禁止になってしまった。

 新ルール対応のためのエアロチェンジにおいてもCFDを活用している。最初に風を受けるフロントフェンダー前方の張り出しがなくなったことで、L/D(エル・バイ・ディー)=揚力と空気抵抗の比)値は下がってしまったが、そこまで大きな差はないという。その対策としてフェンダー上面を高くし、ドラッグの低減とリヤウイングへと流れる空気の効率化を図った。その上面部分は分割式だったものを一体化することで、わずかではあるが軽量化も果たしている。

 フロントフェンダー後方とサイドステップは昨年を踏襲しつつ、フロントカウルを作り直したことでのバランス調整のために小変更。リヤフェンダー後方は、ほとんどのチームが「空力にはあまり影響しない」という見解だったが、凝ったデザインになっている。ボンネットダクトの左右端はリューターによる手仕上げになっているなど、仕上がりが美しいのもSyntium LMcorsa GR Supra GTの特徴だ。OTGではフロントバンパーのような大きなパーツもドライカーボンで成形できるオートクレーブを自社完備しており、だからこそ見た目にもこだわった大掛かりなチャレンジができたという。

 L/D値は昨年仕様よりも下がってしまったが、フロアも含めた見直しで空力バランスは良くなった。それにより、昨年は採用を見送っていた“足まわりのセット”を導入できたそうだ。空力も含めたそのセットは、鈴鹿サーキットやスポーツランドSUGOのようなコーナリングサーキットで本領を発揮する。第3戦鈴鹿では予選3番手、決勝7位だった。得意なサーキットが続く後半での巻き返しに注目したい。

■つちやエンジニアリングの2台は旧規定との“ハイブリッド”仕様
 GRスープラで3年目を迎えたHACHI-ICHI GR Supra GT(初年度はたかのこの湯 GR Supra GT)、2年目のHOPPY Schatz GR Supra GTはともに、つちやエンジニアリングがメンテナンスを担当している。HACHI-ICHI GR Supra GTは、いわゆるカスタマーカーとなるが、HOPPY Schatz GR Supra GTはつちやエンジニアリングが独自に製作したもので、ほかの3台のGRスープラとは一線を画す存在となる。

 プライベーターチームということもあり、費用対効果を重視して2台ともボディは2022年仕様のままとした。そのため、HOPPY Schatz GR Supra GTのフロントフェンダー前方は、昨年同様に張り出したデザインを継続している。シーズン中のアップデートは認められなくなるが、デビューイヤーとなった昨季はエアロのアップデートにリソースを集中していた。今季はセッティングを進化させる1年と捉えているのだろう。

 一方、フロアは2台とも2023年規定としている。多くの(GTA-)GT300規定車両がギヤボックスの逃げを直方体のままとしているのに対し、今年から許されたキール形状を採用。一般的には、この部分をキール形状にすることでドラッグが減ると言われている。

 ボディは2022年規定、フロアは2023年規定の“ハイブリッド”仕様となる2台。GT300規定車両の特権とも言えるシーズン中のアップデートはできないが、HACHI-ICHI GR Supra GTは第1戦岡山で荒れた展開を味方につけながら3位表彰台に登壇。HOPPY Schatz GR Supra GTにはセッティングによる進化が期待できる。残り5戦、2台の存在は侮れない。

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