2011年11月、トヨタから家庭用電源で充電した電力で走行できる「プリウスPHV(プラグインハイブリッド車)」が登場した。電力だけで走るEVはバッテリー切れが心配となるが、プラグインハイブリッドは電力を使い切ると自動的にハイブリッドに切り替わるため安心して走行できるのが魅力だった。当時、このプラグインハイブリッドはどのように受け入れられたのか。今回は登場間もなく行われた国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2012年6月号より)
電力を使い切ったあとはBEVからハイブリッドへ
2012年1月30日から販売が開始された新型プリウスPHV。PHVとはご存じの通りプラグインハイブリッドヴィークルの略で、自宅などのコンセントから充電した電力での走行が可能。AC200Vでは約90分、AC100Vで約180分で満充電となり、EV走行距離はJC08モードで26.4kmを実現。EV走行に必要な電力を使い切ったら、あとは通常のプリウス同様、モーターとエンジンを使ったハイブリッド走行となる。
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ここで新型と謳ったのは理由がある。すでに2009年12月、現行プリウスをベースとしたPHVが官公庁や法人に向けてリース販売されたからだ。これは日米欧の市場に約500台リース販売され、そこで上がった声を今回登場の市販化プリウスPHVにフィードバックしている。
外観はブルー加飾のヘッドランプやリアコンビランプのクリア化などPHV専用デザインも施されるが、あくまでさりげない意匠。右側に充電リッドがある以外は、ノーマルプリウスと際立った違いはない。つまり、リース販売された先代とも外観上は大きく変わることはない。
ただし、中身は先代から大きく変更されている。従来5.2kWhで重量160kg、体積201Lものバッテリーパックを搭載していたが、新型では4.4kWh、80kg、87Lと小型化。これにより、VDA値443Lとプリウス同等の荷室容量を確保(従来は403L)し、日常での使い勝手を向上させている。
また新型リチウムイオン電池の採用、さらなる走行抵抗の低減などで、バッテリーを小型化しながらEV走行可能距離は従来より3km向上。ノーマルプリウスよりも50kgの車両重量増にもかかわらず、EV走行を除いたハイブリッド燃費で、JC08モード31.6km/L(Gレザーパッケージ車は30.8km/L)とプリウスと同等の数値を叩き出している。
2012年現在のインフラ状況を考えると最も現実的な答え
試乗の前にまずは充電の儀式から。先代に比べて充電ケーブルが細く柔らかくなったため、取り回しが向上している。充電リッド内にLED照明を設け、夜間での充電作業もラクになった。
充電状況も自分のスマートフォンで確認できる。さらに車両側から充電の開始時刻や終了時刻を設定する「タイマー充電」ができるので、料金の安い深夜電力を使っての充電も、日中にセット可能だ。
インテリアは、デザインもスペースもほぼノーマルプリウスと変わらない。センターディスプレイの表示が異なったり、3つある走行モードスイッチの右側が「EV/HV」切替になる程度だ。
アクセルペダルを踏み、走り出す。モーターの力で、すーっと力強く速度を上げていく感覚はプリウスと変わらない。独特なブレーキのタッチや若干締まった印象の足まわりなどのフィーリングも、ノーマルと同様。PHVだからといって、特別に気構えることなく運転することができる。
異なるのは、EV走行可能な速度。ノーマルプリウスの場合、EVモードで走行しても50km/hほどでエンジンが始動してしまうが、プリウスPHVの場合100km/hまでEV走行ができる。この際の静粛感は、とても良い。高速走行時は風切り音やロードノイズなどさまざまな走行音が車内に侵入してくるが、そのうちのエンジン音が一切しないということが、プリウスPHVにひとクラスもふたクラスも上の高級感、上質感を与えてくれる。
JC08モードで26.4kmのEV走行距離だが、今回の試乗の場合、通常の街乗りと高速走行を含めて20km強、EVで走行できた。約20kmと聞くと距離が短いイメージがあるが、実際走行すると日常使いの中では相当に走れる印象だ。満充電までの時間も短いからコンセントさえあれば出先で充電するのも現実的だし、何よりハイブリッド走行ができるため、電気を使い果たしても充電スポットを探して右往左往することがない。暑ければ気兼ねなくエアコンを作動できるし、精神的に余裕のあるドライブができる。
2012年現在のインフラ状況を考えると、プリウスPHVは、ファーストカーとして使う次世代環境車としては一番現実的な答えなのではないだろうか。近距離ならばCO2を排出しない。長距離走行も可能。使い勝手はノーマルプリウスと同等、運転フィールも同じ。あとは320万円からという車両価格をどう捉えるか、だけだ。
となると、ノーマルプリウスと差別化するための華がもう少し欲しいところかもしれない。PHVオーナーのために、スマホを使ってリモート充電やエコ運転サポートなどeConnectと呼ばれる新しいコミュニケーションツールを用意したのは、特別感の演出として正解だろう。(文:Motor Magazine編集部)
トヨタ プリウスPHV Gレザーパッケージ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4480×1745×1490mm
●ホイールベース:2700mm
●車両重量:1440kg
●エンジン:直4DOHC+モーター
●排気量:1797cc
●最高出力:73kW(99ps)/5200rpm
●最大トルク:142Nm(14.5kgm)/4000rpm
●モーター最高出力:60kW(82ps)
●モーター最大トルク:207Nm(21.1kgm)
●トランスミッション:電気式無段変速
●駆動方式:FF
●車両価格(税込):420万円(2012年当時)
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