シートの下にヘルメットを収納する、現代的原付スクーターの登場
シート下にヘルメットなどを収納できる「メットイン」は、現在ではスクーターに定番の装備となっています。走っている時はカバンなどを入れ、目的地に着いたらヘルメットに入れ替える、たいへん便利な装備です。
【画像】メットインを常識の装備に!! いっそう便利になったホンダの原付スクーター「TACT FULLMARK」を見る
雨に濡れることもなく、盗難されにくい効果もあるメットインですが、その大ヒットまでには数年間の助走がありました。
ホンダ発のステップスルースクーター「TACT(タクト)」が発売されたのは1980年のこと。その翌年に「タクト」シリーズの追加車種として「TACT FULLMARK(タクト・フルマーク)」の初期型がラインナップされます。
スリムなデザインの「タクト」に対して、「タクト・フルマーク」は後輪を覆うリアのボディカバーを丸く大型化し、荷物を収納できるキーロック付きのサイドトランクを設けました。サイドトランクはスペースに余裕のある右側のみで「ユーティリティを広げます」と宣伝されました。
激化していた原付スクーター市場の覇権争いもあり、さらに至れり尽くせり的な装備が追加されていきます。デビューからわずか2カ月後には雨水の侵入防止対策を施したインナーボックスをフロントカバー内側に装備した特別カスタム仕様車も追加されました。
1982年は「タクト」シリーズが初のフルモデルチェンジとなり、「タクト・フルマーク」も同時にエッジが効いたシャープなデザインを採用します。
1984年発売の3代目「タクト」シリーズでは一転して、丸みのあるデザインにフルモデルチェンジします。
この頃に他メーカーからシート下にメルメットを収納できるスクーターが発売されましたが、大ヒットには至らず連発される新車の中に埋もれてしまいました。
1986年には前後に大型キャリアなどの装備を充実させた「タクト・フルマークS」が発売されます。このモデルでもサイドトランクとインナーボックスの装備は継続され、スポーツスクーターの誕生と好調なセールスの陰で、「スクーターには収納スペースが必要」という声に「タクト・フルマーク」は応えていきます。
そんな中、年々拡大していた原付市場に水を差す、ヘルメット着用の義務化が1986年から施行されることが決まります。すでにホンダの二輪事業の中でも原付スクーターの収益は大きな割合を占めていました。
現在の感覚では理解し難い話ですが、当時はノーヘルで乗れる手軽さも原付の魅力でした。ヘルメットの着用義務化により、売り上げが落ちることが懸念される一方、ホンダとしては原付ライダーのヘルメット着用率が上がり、安全にバイクやスクーターを楽しんで欲しいという気持ちもあったことでしょう。
「これがシート下にあればヘルメットが入るな」という画期的なアイディアは、座っていた円筒形の金属製ゴミ箱から発想されたと言います。
しかしそう簡単にはいきません。シート下には燃料タンクやバッテリー、オイルタンクなどがギッシリ詰まっていました。開発陣はそういったパーツを1つ1つ移動させてヘルメットが収納できるスペースを確保します。
そして最後にシートを支えるリアフレームを、強化したポリプロピレン製の樹脂ボックスとして、そこにシートを直接取り付けるという新技術を開発します。
ヘルメット着用義務施行から半年が経った1987年1月に、メットインの「タクト・フルマーク」が発売されました。
走りやスタイルは新ベーシックスクーターと呼ぶに相応しい魅力があり、何と言ってもシート下のヘルメット収納が市場の要望とマッチし、年間17万台という大ヒットとなりました。
そして1988年に発売されたホンダのヒット作「Dio(ディオ)」は初期型からメットイン機能を装備しており、また同年のマイナーチェンジで「タクト・フルマーク」の車名はここまでとなり、1989年には「タクト」シリーズが全車メットインへ1本化されます。
その後、スクーターは他メーカーも含め、メットインが常識の装備となっていきます。
ホンダ「タクト・フルマーク」(1987年型)の当時の販売価格は13万9000円です。
■ホンダ「TACT FULLMARK」(1987年型)主要諸元エンジン種類:強制空冷2ストローク単気筒総排気量:49cc最高出力:5.8PS/6500rpm最大トルク:0.66kg-m/6000rpm全長×全幅×全高:1655×650×1010mm始動方式:キック、セル併用燃料タンク容量:4.6L車両重量:65kgフレーム形式:低床バックボーンタイヤサイズ(前後):3.00-10-4PR
【取材協力】ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)(柴田直行)
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みんなのコメント
電動でセンタースタンドが直立して後輪を浮かせて停止させる機能には驚きました
シート後部がラクダのように盛り上がりそこがメットイントランクだった。
これに続くチャンプCX共々少し不恰好だったせいかあまり売り上げは芳しくなかったがこれもメットインの礎となった。