FIAは、現代F1マシンのポーパシング抑制に動き出しており、F1第12戦フランスGPから本格的に取り締りをスタートする予定だ。
モーターレーシングの統括団体であるFIAは、第9戦カナダGPを前に、ドライバーからの苦情を受けてマシンの縦揺れを制限するための技術指令をチームに出した。
■FIA、F1ドライバーを悩ませるポーパシング抑制に向け動く……ただ”発端”のメルセデスには不利に働く?
FIAはエアロダイナミック・オシレーション・メトリック(AOM)を作成し、マシンの上下動の許容限界を定義することを目指している。
この指標をオーバーしたチームは、車高を上げてポーパシングを抑えることが義務付けられる。この基準を守らず、バウンドし続けるマシンは「危険な構造物」とみなされ、グランプリから排除されるリスクがある。
FIAはAOMを作成するためにカナダGPからデータ収集を開始。車載加速度計を使用し、マシンの挙動をより深く理解しようとしている。
そのデータを分析したあと、チームのテクニカルディレクターたちと状況を話し合った結果、FIAはフランスGPで測定基準を導入する予定であることをチームに通知している。
今回発表された最新の技術指令では、FIAが制限を加える前に、チームに状況を分析するための猶予が2レース与えられるとされている。
FIAの声明は次の通りだ。
「この技術指令がフランスGPから適用される際、遵守するためにどのような変更が必要なのかを理解するために、次の2グランプリで独自の分析を行なうことができるよう、アップデートがチームに送られた」
FIAはまた、プランク(スキッドブロック)の摩耗と剛性に関連するパラメーターの更新を発表している。
カナダGP前の技術指令で議論を呼んだのが、2本目のステーを追加してフロアの剛性を強化することにゴーサインが出されたことだ。
技術指令にはステーは1本までとしているレギュレーションを変更する権限はないため、この技術指令は規則違反だというクレームが出たのだ。
メルセデスは技術指令に素早く反応し、2本目のステーを追加してカナダGP初日を走ったが、FIAの意向を何らかの形で事前に察知していたのではないかという懸念も生じた。
結局、メルセデスは進歩が望めないということ、ライバルたちから抗議を受ける可能性が高まったことから、カナダGP2日目から2本目のステーを取り除いている。
FIAはイギリスGPを前に、早々に2本目のステー使用を許可する可能性もあったが、その道は選ばなかった。そのため、各チームが直面しているポーパシングを解消するための追加条項は技術指令に設けられなかった。
そもそも、FIAがポーパシング問題に介入する必要があると考えるチームばかりではない。
アルファロメオのトラックサイドエンジニアリング責任者であるセビ・プホラールは、次のように語る。
「必要だと思えば、バウンシングも許容できる」
「どの位置(車高)で走らせるかによるんだ。(車高を下げ)カンガルーのようにバウンドしようと思えば、それも可能だ。それをしないのは、ドライバーの快適性のためだけではなく、クルマにダメージを与えないためでもあるんだ。それで我々のパフォーマンスに影響があるとは思えない」
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