<日本企業が商品を企画して、中国企業が生産を担当>
佐川急便が宅配事業で用いる軽バンとして、電気自動車を7200台も導入すると発表したことが話題となっています。
佐川の新EVは「中国車」じゃない? 日本発のファブレス方式でEV市場の覇権を狙う
注目された理由は、その軽バンEVが日本製の軽自動車ではないから。日本のファブレス(自社工場をもたない)企業の「ASF」が企画、生産は中国の企業が行なうという、自動車業界としてはまったく新しい手法で生産されます。
“ファブレス企業が海外で生産して日本市場で販売する”というビジネスモデル自体は珍しいものではありません。iPhoneもそうだし、モビリティでいえばほとんどの電動キックボードも同様のビジネスモデルです。クルマ関係ではドライブレコーダーも多くが大陸系企業で製造され、国内系ブランドから販売されていたりします。
今回のケースではおよそ10年をかけてトータルで7200台が佐川急便に納品されます。年間800台程度の規模で一般ユーザー向けに販売するとなると、販売方法、メンテナンスや修理、部品供給などの問題が出ますが、佐川急便という単独ユーザーで、おそらく自社での整備を前提としていれば、運用上の問題もないのでしょう。
充電設備についても最適化した整備が可能ですから、コスト効率が高められるのは容易に想像できます。というわけで、「中国製の電気自動車が上陸する」といった報道もありますが、商品企画の主体は日本企業で、生産委託先が中国企業だった、というだけの話ともいえます。
<いま日本市場では軽商用EVが空白になっている>
むしろ、問題とすべきは佐川急便の案件を既存の日系自動車メーカーが受注できなかったことにあります。
国産の軽EVバンである「三菱 ミニキャブ・ミーブ」は日本郵便に1200台という規模での納入実績はありますが、2021年3月をもって生産終了となっていて、遠からず軽自動車EVを発売するとアナウンスしている日産にしても、まだまだ時間がかかりそう。ホンダも2024年に軽自動車EVを出すと発表していますが、それが商用バンである可能性はさほど高くないでしょう。いま、日本市場では軽EVが空白の期間となっているのです。
しかし、佐川急便の案件は急に決まった話ではありません。今回は実車を伴った発表だったためインパクトが大きかったのですが、ASF社と佐川急便が軽EVバンの共同開発をするという合意は、実は2020年6月に結ばれていたのです。
納期、台数、コストといった佐川急便の要望を受けるだけの余裕が日系メーカーになかった反面、海外での生産を睨んだファブレスメーカーは受注可能だったというわけです。
かつて、トヨタが実質的にヤマト運輸の専用モデルといえる「クイックデリバリー」というウォークスルーバンを生産していたことがありました(一般販売もしていました)。このように、かつての日系メーカーには柔軟性もあり、小回りが効く部分もありました。いま、そうした柔軟なビジネスに対応できる力は、旧来のメーカーからファブレスメーカーに移ってしまっているということを、この一件は示しています。
ちなみに、ASF社の主要株主には総合商社である双日(そうじつ)の名前を確認することができます。双日といえば、自動車販売事業では長い実績を持ちます。今回のプロジェクトにおいては、そうしたバックボーンがあることも無視できません。CASEというキーワードで示されることの多い自動車産業の変革は、多くの企業にとってもチャンスといえるでしょう。
軽自動車にもEVを展開するという日産やホンダは果たして“軽EVバン”というカテゴリーに参入するのでしょうか。自社で軽商用車を生産しているホンダはまだしも、OEM供給を受けている日産はほぼ可能性がゼロといえます。軽自動車というのは日本独自の規格で海外メーカーにとっては参入障壁という声もありましたが、ここを突破口に軽自動車にも海外生産モデルが増えていくのかもしれません。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
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これを認めるのであれば運転アシスト機能の義務化なんて全て止めて、望まないユーザーが無い物を選択出来る状態にするべきですよ。