2026年6月、トヨタはアルファード/ヴェルファイアの一部改良モデルを発表しました。フルモデルチェンジから約3年を迎えるなかで実施された今回の改良ですが、グレード展開の拡充から乗り心地の向上まで、ユーザーの要望に応える幅広い見直しが盛り込まれています。
かつて「キング・オブ・ミニバン」とよばれた新型「エルグランド」の登場を控えるなか、王者ミニバンとしての地位はさらに盤石になったのか!?? 一部改良の内容をご紹介しつつ考えてみましょう。
【画像ギャラリー】“王者ミニバン”はさらに盤石になったのか!?? 2026年6月に一部改良となったトヨタ「アルファード」/「ヴェルファイア」(15枚)
文:吉川賢一/写真:TOYOTA
王者ミニバンがさらに熟成!! 今回の一部改良で何が変わった?
今回の一部改良でまず大きなトピックとなるのが、アルファードのグレード構成の見直しです。これまでプラグインハイブリッド車(PHEV)は最上級グレードの「エグゼクティブラウンジ」に限定されていましたが、新たにミドルグレードの「Z」にもPHEVを設定。PHEVならではの静粛性や力強い走りに魅力を感じながらも、エグゼクティブラウンジは価格的なハードルが高いと感じていたユーザーにとって、選択肢が大きく広がりました。
さらに、従来はウェルキャブ(サイドリフトアップチルトシート装着車)にのみ設定されていたアルファードの「G」グレードが、登録車(一般向け仕様)にもハイブリッド専用グレードとして新設定されました。3眼LEDヘッドランプや14インチディスプレイオーディオ、パノラミックビューモニターなどの快適装備を備えながら、アルファードの魅力をより幅広いユーザーに届けるグレードとして位置付けられています。同時に従来設定されていた最廉価グレード「ハイブリッドX」は廃止となっています。
内外装にも手が加えられました。アルファード/ヴェルファイアともに、ボディカラーの「ブラック」を、「ニュートラルブラック」へ変更。最上級グレードであるエグゼクティブラウンジでは内装加飾を「ブロンズスパッタリング」に統一しました。従来は内装色がブラックの場合に組み合わされていた「シルバースパッタリング」が廃止され、ブロンズへ変更されたことで、ブラック内装でもより上質で落ち着いた雰囲気に仕上げられています。
さらにアルファードでは、18インチアルミホイールに金属感を強調したハイパークロームメタリック塗装を採用。Z(ガソリン車・HEV車)には標準装備され、Gグレードではメーカーオプションとして設定されます。
また、従来はアルファードの「エグゼクティブラウンジ」とヴェルファイアに採用されていた周波数感応型ショックアブソーバーが、アルファードの全グレードへ拡大採用されました。路面から伝わる振動の周波数に応じて減衰力を最適化することで、うねりのある路面では車体の揺れをしっかり抑え、荒れた路面では細かな振動をしなやかに吸収。後席の快適性を重視するアルファード/ヴェルファイアらしい改良といえます。
新型エルグランド迎撃準備!? アルヴェルが乗り心地を磨いた理由
このうちもっとも注目したいのが「周波数感応型ショックアブソーバー」の拡大採用です。アルファード/ヴェルファイアのような高級ミニバンといえば、まもなく日産の新型「エルグランド」の登場が予定されていますが、その新型エルグランドには、走行状況に応じて4輪それぞれの減衰力を自動制御する電子制御ショックアブソーバー(インテリジェント ダイナミックサスペンション)が全車標準装備となります。
大柄なミニバン特有のふわつきやピッチングを抑えてくれるもので、偶然かもしれませんが、アルファードの周波数感応型ショックアブソーバーの全車標準装備化は、こうした新型エルグランドの内容を踏まえた布石とも受け取ることができます。
ライバルが先進のシャシーテクノロジーを武器に、乗り心地や走りの質感で存在感を高めようとするなか、トヨタも快適性という得意分野にさらに磨きをかけ、ライバルのアドバンテージをあらかじめ相殺しにいった格好にみえ、もともと乗り心地への評価が高い現行アルファードが、さらに強みを伸ばして、久々となる本格ライバルの登場を迎え撃とうとしようとしているようにみえます。
新型エルグランド登場で際立つ!? アルファードの絶妙な価格設定
もうひとつ今回の一部改良で注目しておきたいのが、グレード再編によって生まれた価格設定です。トヨタは一般的に、エントリーグレードの「X」、ミドルグレードの「G」、上級グレードの「Z」というグレード体系を採用しており、アルファード/ヴェルファイアでは「Z」の上にさらに「エグゼクティブラウンジ」を設定していますが、前述したように、今回の一部改良でアルファードは、エントリーグレードの「X」を廃止し「G」を設定。最廉価モデルがより上級へと移行しました。
その結果、最廉価モデルの価格は従来から約50万円上昇。これによって「G」よりも上級となる「Z」グレードとの価格差が縮まり(ガソリンZも今回の一部改良で4万9000円値上げされていますが)、「ハイブリッドG 2WD 」と「ガソリンZ 2WD」は税込559万9000円で同価格となりました。
ハイブリッドは優れた燃費性能や静粛性が魅力である一方、上級の「Z」グレードは18インチアルミホイールやエグゼクティブパワーシート、上質な内装加飾などを備えています。つまりトヨタは、同じ予算のなかで「電動パワートレーンの価値」と「上級装備の価値」を比較できる構図をつくり上げたのです。
静粛性や燃費性能を重視するなら「ハイブリッドG」、装備や内外装の上級感を重視するなら「ガソリンZ」。従来よりもユーザーの選択基準が明確になったことは間違いありません。
ここで気になるのが、新型エルグランドとの価格差です。新型エルグランドは全車e-POWERかつe-4ORCEとなり、エントリーグレードのXでも689万7000円、上級のGは757万9000円です。アルファードの「ハイブリッドZ E-Four」(661万9800円)よりも高く、少し頑張れば新設された「Z」のPHEV(764万9400円)に手が届く価格帯となっています。
高性能化と高価格化によってプレミアム路線を鮮明にしたエルグランドに対し、アルファードは500万円台後半の価格帯に複数のグレードを配置することで、幅広いユーザー層を取り込める商品構成としました。トヨタがどこまで新型エルグランドを意識していたかはわかりませんが、こうした細かな価格設定やグレード展開は、販売規模の大きいトヨタならではの強みといえるでしょう。ライバルの動向を見据えながらも市場の取りこぼしを防ぐ姿勢は、王者らしい戦略といえそうです。
王者の牙城はさらに強固に!??
エルグランドはかつて「キング・オブ・ミニバン」とよばれたこのカテゴリの先駆者であり、初代アルファード誕生のきっかけになったともいわれる存在です。いまや絶対王者となったアルファード/ヴェルファイアにとっても、決して無視できる相手ではありません。
グレード再編によって、アルファードは従来以上に幅広いユーザー層を取り込めるラインアップを手に入れました。乗り心地という強みにさらに磨きをかけたうえで、価格戦略でも隙を減らしたことを考えれば、今回の一部改良で、アルファード/ヴェルファイアの商品力は、ライバル登場を前にもう一段引き上げられたといえそうです。
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