命名方法をあらためて登場
2014年にシトロエンからの独立を果たし、21世紀のフレンチ・プレミアムブランドとして歩みはじめたDSオートモービル。でもその魅力を象徴するようなフラッグシップがあったかというと、うーんと唸ってしまう。
【画像】大統領も乗るフランスの新フラッグシップ!『DS No8エトワールAWD』 全54枚
独立直後はDS 5が最上級車種とされたが、サイズは当時のシトロエンC5より小柄だったうえに、乗り心地も硬めで、ラグジュアリーな雰囲気はいまひとつ。その後DS 7やDS 9が登場したが、前者はミドルクラスのSUVであり、大柄な3ボックス4ドアセダンだった後者は、スタイリングがあまりにオーソドックスだった。
DSオートモビルの中の人たちも、似たようなことは感じていたのかもしれない。命名方法まであらためて登場した『No8』は、フレンチプレミアムならではのアヴァンギャルドでエレガントな姿をまとっていた。
全長4820mm、全幅1900mm、全高1580mmというボディサイズは、5m超えのクルマも多い中では大柄とは言えないが、フランス人はサイズやスケールを誇示するのはセンスがないと考えているようだし、4800×1800×1500mmだったクラシックDSに近いので、納得のボリュームだ。
ホイールベースは3mを大きく超えていたクラシックDSほどではないものの、それでも2900mmと、STLA-Mプラットフォームを共有する車種では、3列シート7人乗りのプジョー5008と共通となっている。
ブランドにふさわしいプロポーション
ボディのプロポーションもまた、DSブランドにふさわしい。
ルーフからリアウインドウに向けて、ゆったりしたカーブを描きながらなだらかに降りていく。リアエンドが左右のコンビランプをつなぐトレンドに乗らず、装飾にも頼らず、微妙な面の表情で魅せるところもこの国生まれらしい。
顔つきは、少し前に試乗記を紹介したNo4に似るが、グリル風のブラックパネル全体にカーテンのようなライトシグネチャーが仕込まれているところが違う。最上級車種ならではの演出だ。ちなみにNo8はマクロン大統領も乗っていて、その車両はこのライトシグネチャーがトリコロールに光る。
昨年開催された大阪・関西万博のフランスパビリオンが似た演出で、エントランスが劇場のカーテンをイメージしたというパイプを使ったヴェールになっており、夜は青と赤の照明が彩りを加えていた。No8のそれは、『DS劇場への入口』という意味が込められているのかもしれない。
「この手があったか!」
インテリアで何よりも目立つのが、十文字スポークのステアリングだ。もう少し径が大きいと、さらにクラシカルに見えそうだが、現状でも思わず送りハンドルで操作したくなる。「この手があったか!」と唸ってしまった。
ドアトリムやセンターコンソールなどには放射状のディテールが施され、エアコンルーバー周辺にはシャンパンゴールドを起用。イルミネーションの中には白熱電球のような暖かい色もあって、歴史的建造物の中にいるような感覚だ。
どれも派手ではないのに上質。さすがパリ生まれ、高級のなんたるかを知り尽くした仕立てに感心した。
ハイバックタイプのフロントシートは、ナッパレザーらしいしっとりした着座感。DSのロゴが刻まれた首の部分からは、冬は温風を出すことも可能だという。リアは座面の傾きが大きく、背もたれに上半身を預けて座る感じ。座面はそんなに高くなく、見晴らしよりも密室感を重視していて、これもクラシックDSに近い。
アクティブスキャンサスペンションを採用
No8はEVで、前後合わせて350psのツインモーターによるAWD。満充電での航続距離は欧州仕様で691kmと、充分な値だ。
フォーミュラeに草創期から参戦しているうえに、フラッグシップということもあるだろう、加減速はEVとしては唐突感がなく、扱いやすい。全開加速を強烈と感じさせないのも性格づけだろう。もちろん回生ブレーキの調節はパドルで可能だ。場所によってはタイヤの音が気になるものの、静かさはやはり印象的だった。
STLA-MプラットフォームにはDSならではの、カメラからの情報でサスペンションの硬さを変える、DSアクティブスキャンサスペンションが組み込まれている。DS 7やDS 9のようなストローク感は控えめだったが、独特のゆったりとした揺れは体感できた。
AWDのEVということで、ハンドリングは前輪駆動のエンジン車とは違い、車体全体で曲がっていく感触。コーナーの立ち上がりでは後輪の駆動力も感じる。モーター駆動ということもあって、モダンな移動体という印象が強い。
クリアになってきたDSの世界
試乗車はアブソリュートパッケージのオプション(価格40万円)が組み込まれていて、マッサージ効果をもたらすフロントマルチポイントランバーサポート、フォーカル・エレクトラ3Dプレミアムサウンドシステムなどを装備。
こうした快適装備を味わい、優美なボディの内側にしつらえられた、凝ったインテリアに囲まれてクルージングしていると、DSオートモビルの提案する世界が、これまでよりクリアになってきた。
デザインやエンジニアリングに迷いを感じるプレミアムブランドもある中、いい意味で振り切っている。限られた人だけがこの世界を知るのはもったいないのではないか。繁華街などに展示して、多くの人がフレンチプレミアムの真髄を感じ取れるようにしてもらいたい。
なお日本導入は『DS No8エトワールAWD』1グレードで、価格は1005万円。ボディカラーは『ノアール・ペルラ ネラ』のほか、12万円のオプション色として『クリスタル・パール』(取材車)、『グリ・パラディオム』、『ブルー・トパーズ』、『ブラン・アルバータ』が用意される。
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