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「戦場で生き残るために」 スバル水平対向エンジンを「火砲」に搭載! 自走可能な「155mm榴弾砲FH70」とは

掲載 更新 25
「戦場で生き残るために」 スバル水平対向エンジンを「火砲」に搭載! 自走可能な「155mm榴弾砲FH70」とは

■スバルの水平対向エンジンを積んだ火砲「155mm榴弾砲FH70」とは

 陸上自衛隊の野戦特科部隊(砲兵)が保有する火砲でもっとも数が多いのが「155mm榴弾砲FH70」です。
 
 このFH70には、スバルの水平対向エンジンを搭載されていますが、どのような特徴を持つ火砲なのでしょうか。

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 このFH70火砲は1963年に西ドイツ、イギリス、イタリアの3か国が「牽引・自走両用の近接支援用榴弾砲」として共同開発を開始しました。

 普段はトラックにけん引されて移動しますが、自走もできるというのがFH-70の特徴のひとつです。

 1978(昭和53)年から製造が始まり、陸上自衛隊では1983(昭和58)年に採用して国内でライセンス生産しています。

 FH-70が自走するために補助動力装置(APU)が搭載されていますが、ヨーロッパ生産品にはフォルクスワーゲン製の空冷水平対向1.8リッターエンジンと前進3速・後退1速のマニュアルトランスミッションがAPUを構成しています。

 一方で日本のライセンス生産品には、スバル製の水冷水平対向1.8リッターエンジンが付いています。

 エンジンルームは砲架の前部にありますが乗用車のようなスペースはありませんので、エンジン全高が低くできる水平対向エンジンを収める仕様になっています。

「水平対向エンジンといえばスバル」という位ですので、防衛装備品業界にスバルが参入することになったのです。

 ちなみにこのエンジンは製造時期から2代目「レオーネ」と同じものだと思われます。

 運転席は前進方向の左側でいわば外国車のような左ハンドルで、運転席右側にあるバーハンドルを基本片手で操作して砲脚部(砲架後部から左右に開いたの脚)に付いた小型車輪が操舵できます。

 操縦操作は単純ですが、全長が約9.8mと長いので車体感覚を覚えるのとフォークリフトのような後輪ステアリングで、演習場や戦場のような荒れた路面を走行しなければならず操縦には訓練が必要です。

 最高速度は20km/hとなっていますが、実際には16km/h程度に抑えているようで、航続距離は明らかになっていませんが、あまり長距離移動はできません。

 エンジンが2代目レオーネと同じものだとすれば出力は100PS/5600rpm程度です。

 レオーネの車両重量は930kgですが、FH-70の全備重量は約9.6tもあり、単純比較で10倍の重さですのであまり高い機動性は期待できません。

 導入当初は自走するけん引砲ということで、部隊で操縦訓練を実施したのですが、まだ少なかった砲を教習で走らせ過ぎてエンジンが早く消耗してしまったという話も聞いたことがあります。

 また自衛隊の戦車や装甲車、トラックは軽油を使うディーゼルエンジンですが、FH70の燃料はガソリンのため、給油の管理には注意を要するそうです。なお、自衛隊でも日常業務に使う乗用車(業務車)などにはガソリン車もあります。

■なぜ火砲にエンジンを搭載したのか? 今後は全車退役か

 では、なぜトラックでけん引する火砲にわざわざエンジンが付いたのでしょうか。

 それは現代の苛烈な砲撃戦を生き残るという切実なニーズがあるからです。

 火砲はトラックで砲撃位置までけん引されて設置した後射撃を開始しますが、ずっと同じ場所で撃ち続けるわけにはいきません。

 敵も撃たれっぱなしというわけにはいきませんから、反撃の砲撃を仕掛けてきます。

 砲弾は発射されると物理の法則に則って弾道を描きますので、レーダーなどを使えば比較的簡単に発射場所が特定されてしまいます。

 また最近ではウクライナでの戦闘の様子は多く投稿されていますが、無人機(ドローン)による空中映像は地上を動き回る人や車両などが丸見えであることが分かります。

 撃ったら逃げるが基本ですが、けん引式の場合トラックに連結して移動するまでどうしても時間が掛かります。

 それでも数百メートルすぐに移動できれば生存性がぐっと高まります。そこで構造が複雑になることを承知のうえでエンジンを載せて自走できるようにしたのです。

 そうでなくともトラックを呼ばなければ微動だに出来ないというのはかなり不便です。約9.6tもある重量物ですから自走できればかなり扱いは楽になります。

 ではトラックに直接火砲を載せてしまうアイデアはどうでしょう。

 すでにトラックの荷台に火砲を載せた新装備「19式装輪自走155mmりゅう弾砲」の配備が始まっています。

 155mm砲の発射時の反動は強烈ですので砲架と車台の構造を工夫して反動を直接地面に逃がすようにしています。

 20世紀では革新的ともいえたけん引・自走両用のFH-70もデビューから40年以上経過し、開発国だったドイツでは全車退役しました。

 日本でもレオーネを見かけることはほとんどなくなりましたが、FH-70も19式の配備に伴って数を減らしていくでしょう。

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THE EV TIMES

みんなのコメント

25件
  • 19式もいいけど
    FH70の方が安くない?

    後継機開発して、数を確保した方が

  • スバル自体というより、桐生工業委託でEA18を作ってるってことか?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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