女王陛下御用達のオーダーメイド・エリート集団
ドイツの自動車メーカーが古くからいわゆる特殊部隊を重視してきたことについては前回お伝えしたとおりだが、ほかのヨーロッパ各国にも力を入れている自動車メーカーはある。
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まずは昨年1月にEUから脱退してしまったが、ユナイテッド・キングダムこと英国。1922年に前身となるスワロー・サイドカー・カンパニーとして誕生したジャガー、1948年に最初のモデルを発売したランドローバーというふたつの歴史あるブランドをマネージメントするジャガー・ランドローバー社には、SVO(スペシャル・ヴィークル・オペレーションズ)という特別な組織が存在している。
2014年スタートと比較的新しいが、2000万ポンドを投資して設立された専用のテクニカルセンターを持ち、200名ほどのスペシャリストが在籍する本格的な組織だ。
ここではスポーティ&ラグジュアリーなジャガーのパフォーマンスを磨き上げてかなりのハードコアなモデルに、トップ・レベルのオフロード性能とグランツーリスモとしてのパフォーマンスを併せ持つラグジュアリー4×4のランドローバーはそれらすべてをさらに追求した特別仕立てに仕上げている。
本国では2020年にビッグマイナーチェンジした現行モデルではまだ設定はないが、SVOが手掛けたFタイプSVRの通常よりハッキリと一段階上にある速さはもちろんのこと、驚くほどの俊敏に仕立て上げられたハンドリングは忘れられない。その乗り味はレーシングカーさながらだったのだ。
またレンジローバーSVオートバイオグラフィのダイナミズム溢れる速さとどこまででも走っていけそうに感じられる快適な乗り心地、夢のように美しく上質なインテリアなどは、SUVの範疇には収まらず遙かに抜きん出てる印象で、ちょっと筆舌に尽くしがたいほどだ。
英国はいわずと知れたビスポークの本家本元のような国。そうしたスペシャルモデルの他、特別な顧客の特別なオーダーに応える部門も持っている。
英国王室の担当者も崎席しているというのだから恐れ入る。
PSAの特殊部隊はモータースポーツ出身
英国のドーバー海峡を隔てた反対側、フランスはどうかといえば、まずはプジョーの中にあるプジョー・スポール。1981年に”プジョー・タルボ・スポール”として設立されたプジョーのモータースポーツ部門で、その活動はとにかく幅広い。
世界ラリー選手権で猛威を奮ったグループBマシン、205ターボ16をはじめとしたラリー・マシン、ル・マン24時間レースを制したプジョー905や908HDiなどのプロトタイプ・レーシングカー、ダカール・ラリーを後輪駆動で3連覇した3008DKR MAXIのような特殊なマシンなどの開発で知られるが、一方でプライベーターがモータースポーツにチャレンジするための市販ラリー・カーの開発なども行っている。
ここのスペシャリスト達が量産型308にチューンナップを加えた硬派な308GTi by プジョースポールは、段違いの速さと楽しさを手に入れた硬派なホットハッチで、販売が終わってしばらく経つ現在でもマニアの間では絶賛の声が高いモデル。
現行モデルとしては508シリーズにも“508プジョースポール・エンジニアード”が存在し、間違いなくプジョー史上でもっとも高性能なセダン/ワゴンであるが、今のところ日本へは未導入。上陸を首を長くして待ってる人もいるくらいだ。
姉妹ブランドのシトロエンにも同様にシトロエン・レーシングがある。1990年代にはシトロエン・スポールを名乗っていたが、こちらもラリーが中心のモータースポーツ部門。あまり知られてないが、世界ラリー選手権での勝利数102回という全自動車メーカーでトップの数値である。
DS3がまだシトロエンDS3だった時代に世界限定3000台、日本には35台しか入ってこなかったシトロエンDS3レーシングは、このブランド特有の乗り心地のよさを損なうことなく速さと楽しさを膨らませたモデルで、とりわけ玄人筋の評価が高かった。
現在もプライベーターが世界中のラリーで走らせるためのラリー2規定のマシン、C3ラリー2は市販されており、WRC2クラスやWRC3クラスのポディウムの常連となっている。
FF世界一決定戦のホンダのライバルといえばR.S.
対するルノーには、ルノースポールがあった。ルノーは1898年の創業直後から積極的にモータースポーツに参加してきたブランドで、第2次大戦後もパートナー的存在だったゴルディーニやアルピーヌを通じて活躍を収めてきた。
そして1969年にはル・マンでクラス3連覇を収めF1にも参戦してきたゴルディーニを、1973年には世界ラリー選手権を席巻してル・マンでも輝かしい戦績を収めてきたアルピーヌを傘下に収め、ふたつのモータースポーツ・ブランドで競技車両や高性能プロダクションモデルの開発を行った。
さらに1976年にルノースポールを設立してゴルディーニを経営統合すると、ルノーのWRCをはじめとしたラリー用のマシンやワンメイクレース用マシンなどの開発を行った。
一方のアルピーヌは傘下に収まった後もスポーツカー・メーカーとして表舞台で活動を続けたが、1995年に事実上のブランド休止。多くの技術者達はルノースポールのメンバーとなり、活動を支えていくことになった。
ルノースポールはその後もJWRCやERCなどのラリーで優れた戦績を残しつつカスタマー向けのラリー・マシンの開発などを行ってきているが、1996年に最初にして最後のブランドの名を冠したロードカー、ルノースポール・スピダーを発売。
以降はモータースポーツで培った技術を市販車に投入し、エンジンやサスペンションはじめあらゆる部分にチューンナップを加えたスポーツ・モデル、R.S.(ルノースポール)ヴァージョンを開発。メガーヌやクリオ(日本名:ルーテシア)に設定された“R.S.”は、クラスを軽く越えた速さと抜群のハンドリング性能で世界中のクルマ好き達を唸らせてきた。
そして2016年、アルピーヌがブランドとして正式に復活し、翌年に新型A110を発表。
ルノースポールはマシン開発も含めたF1での活動とカスタマー向けラリー・マシンの開発、市販R.S.モデルの開発などを行い、アルピーヌはル・マンをはじめとする耐久レースとスポーツカーの販売を担うことになった。が、この2021年、ルノーはF1での活動や市販高性能モデルの展開などスポーツ色の強いものは全てアルピーヌの名の元に行うことを決定。ルノースポールの名前は消滅し、アルピーヌ・ブランドに統合されることになった。
フェラーリの開発にも携わった元チューニング屋
では、イタリアはどうか。現在も表舞台に名前を残してるモノとしては、アバルトがあまりにも有名だ。
アバルトは2007年に復活して以来ひとつの自動車ブランドとして存在してるわけだが、それらはフィアットをベースに開発を進めた、いわば大胆にチューンナップを加えたような側面のあるスポーツモデル。これも特殊部隊的な存在であるといっていいだろう。
元をただせば1949年に誕生したレース屋であり、チューナーであった。レースの資金を稼ぎ出すために市販車用のエキゾースト・システムをはじめとするチューニング・パーツを開発して販売し、装着すると実際にクルマが速くなったことから、世界に名を知らしめた。
そしてレース活動を継続する一方で、フィアットを中心とする市販車をベースにしたチューンドカーや市販車のコンポーネンツを使ったスポーツカーを開発。それらの速さをに目をつけたユーザー達もアバルトを手に入れてレースに参戦するようになり、1960年までの間に7000を軽く越える勝利を記録することになったという。
そうした中でアバルトはフィアットと密接な関係を築いていき、1971年に傘下へ。以降はフィアット・グループ全体の競技部門的な位置づけで、フィアットはもちろん、ランチア、アルファロメオ、フェラーリなどのマシン開発に携わった。
フィアットの124や131によるラリーでの活躍、ランチアの037ラリーやデルタによるWRCでの活躍、アルファロメオの155によるDTMやBTCCなどツーリングカー・レースでの活躍などは、アバルトの存在なくして成し得なかったものだ。
また、市販モデルについても、アウトビアンキA112やフィアット131などのアバルトの名前が冠された高性能モデルはもちろんのこと、ランチア・デルタHFシリーズやアルファロメオ156GTAなど、フィアット・グループのスポーツモデルの開発にも関与してきている。
1980年代や1990年代は裏方としてフィアット・グループのモータースポーツ活動や市販スポーツモデルなどを支え続けたが、2001年、フィアットは突如としてアバルトの名前を冠したラリー・マシンで公式的に競技へと参戦開始。数年の競技活動を経て、2007年、公式的にアバルト・ブランドの復活が発表され、アバルト・グランデプント、アバルト500を立て続けに市販モデルが発売されることとなった。
アバルト500シリーズは進化と熟成を重ね、現在では595シリーズとして世界的な人気モデルとなっている。
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