この記事をまとめると
■「EVは車両保険料が高い」という噂の真相に迫る
EVのバッテリーを交換式にすれば充電待ち時間なくなるじゃん! が「画期的アイディア」とならないワケ
■「型式別料率クラス」を見ると最高料率の17に区分されるモデルもある
■しかしすべてのEVに該当するわけではない
EVはバッテリーが損傷すると全損扱いに!?
「電気自動車の修理は高価になってしまうので車両保険が高額になる」という噂話を聞いたことがないだろうか。
電気自動車(EV)はエンジン車に比べて油脂類の交換が少なく、日常的なメンテナンス費用は安い傾向にあるが、いざ事故を起こしてしまうと修理代が莫大になるという話がまことしやかに囁かれる。
バッテリーが損傷するような事故になってしまうと、高価なバッテリーを交換する必要が出てくるため修理費用が嵩む可能性があることは想像できる。はたしてEVの修理費用の高さは自動車保険料に反映されるほどなのだろうか。
「バッテリーの損傷=全損扱い」という噂については、たしかに事実であろうが、全損扱いになるのはバッテリーが高価だからとは言い切れない。ご存じのように現在のEVに使われているリチウムイオン電池は、衝撃によって爆発的に炎上する傾向にある。そのため、EVの設計上、バッテリーが損傷しないよう非常に強固な構造となっている。
それでもバッテリーが損傷してしまった場合、クラッシャブルゾーンが完全につぶれてしまっているような大きな事故になっている可能性が高い。バッテリーの損傷以前の問題として、モノコックボディの状態からして全損扱いになっている可能性が高い。
側溝に車両を落としてしまうなどして床下に積まれたバッテリーだけを損傷したケースを、エンジン車で燃料タンクをつぶしてしまった状態と比べてみよう。この場合、EVの修理代はエンジン車より大幅に高くなるのは間違いないだろう。
では、実際に自動車保険料はどうなっているのだろうか。車両保険の基準となる「型式別料率クラス」を主要EVについて見てみることで、車両保険をかけたときの保険料が高いのか、標準的なのか、リーズナブルなのかが判断できるはずだ。
参考: 型式別料率クラス検索|損害保険料率算出機構 (giroj.or.jp)
すべてのEVの車両保険が高いとはいえない
損害保険料率算出機構のホームページで調べることのできる「型式別料率クラス」というのは、車両型式ごとの保険実績に応じて保険料を区分している。つまり、過去に保険を使ったケースにおいて、修理代が嵩んだ車種や盗難被害の多い車種というのは料率が高くなる。
なお、過去の実績ベースとなっているため、発売されたばかりのEVの数字を見ても意味がないだろう。販売されてからそれなりに時間の経過しているEVをピックアップして、型式別料率を調べてみたのが以下の一覧だ。
日産リーフ(初代) 8~10
日産リーフ(2代目) 12
テスラ・モデルS 14~17
テスラ・モデルY 13~14
テスラ・モデル3 13~16
自家用普通乗用車・自家用小型乗用車はクラス1~17の17区分となっている。数字が大きいほど、車両保険が高いといえる。そして、グレードや仕様により料率は異なるが、たしかにテスラ車の型式別料率クラスは高めになっているのが見て取れる。モデルSに至っては最高料率となる17に区分されているグレードもあるほどだ。
しかしながら、日産リーフの料率はけっして高いとはいえない。とくに初代の前期については型式別料率が中央値の8となっている。おそらく日本国内では保険適用の機会がもっとも多いであろう初代リーフが平均的な数値であることからすると、「EVで車両保険に入ると保険代は高額になる」という噂は、絶対的には正しくないといえる。
もっとも、テスラの各モデルについては傾向として型式別料率クラスが高くなっているのは事実であり、ここにフォーカスすれば「EVの車両保険は高い」といえるが、リーフとの差を考えると、あくまで「テスラの修理代が高い」傾向にあると理解すべきだろう。
ただし、その理由としてEVが高価なバッテリーを積んでいるからなのか、テスラの設計や部品供給に影響されているものなのか、型式別料率の数字だけでは判断できないのも事実。いずれにしても日産リーフの料率クラスからすると、少なくとも過去の実績としては「保険代が高くなるからEVを買うのは損」と考える必要はないといえそうだ。
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みんなのコメント
板金出来なくてパネル取り換えになるんだから。
保険料が高くなるのはしょうがない。