■ハイブリッド車黎明期は迷作もありました
1997年にトヨタが世界初の量産ハイブリッド車「プリウス」を発売してから、すでに20年以上経ちました。その間、国内外のメーカーから多数のハイブリッド車が登場しています。
いまや軽自動車から大型セダンまで、ハイブリッドは当たり前のような存在ですが、プリウスが出た直後は玉石混交の状況が続き、なかには性能面と販売面の両方で中途半端なモデルもありました。
そこで、これまで国産メーカーが販売してきたハイブリッド車のなかから、珍しいモデルや販売面で苦戦したモデルなど5車種をピックアップして紹介します。
●日産「ティーノハイブリッド」
トヨタ「プリウス」の発売から遅れること3年の2000年、日産初の市販ハイブリッドモデル「ティーノハイブリッド」が発売されました。
ティーノハイブリッドは1998年に発売されたハイトワゴン「ティーノ」をベースとして、燃費を同クラスのガソリンエンジン車の2倍以上を目的としたハイブリッド車です。
さらに、ガソリンモデルと同等の走行性能を発揮するとともに、大人5人がゆったり乗ることができ、充分な荷室スペースも確保するという使い勝手を持つことが特長でした。
パワートレインは101馬力の1.8リッター直列4気筒エンジンと、23馬力のモーターを組み合わせ、バッテリーは当時、プリウスでも採用していなかったリチウムイオンでした。
発進時や低速走行時はモーターの動力のみで走行するEV走行が可能で、急加速時はモーターがエンジンをアシスト。さらに減速時にはモーターが回生発電をおこない、バッテリーに充電もできました。
燃費は10・15モードで23km/Lと、プリウスの28km/Lと比べると劣っており、また、価格も330万7500円(消費税5%込)とプリウスよりも100万円高で、価格面でも太刀打ちできませんでした。
ただし、100台限定販売ということでティーノハイブリッドはスタディモデルだったということと、プリウスは利益を度外視した価格設定だったという話もあり、あながち残念な性能ではなかったかもしれません。
日産はティーノハイブリッドの販売以降国内では10年間ほどハイブリッドモデルを生産しませんでしたが、実際はEVの開発にシフトしていたということです。
●スズキ「ツイン ハイブリッド」
1997年にドイツのスマートから2人乗りのマイクロカーが発売され、大きな話題になりました。このスマートの日本版といえるのが、2003年に発売された2人乗りの軽自動車スズキ「ツイン」です。
通常、軽自動車の寸法は規格内ギリギリに拡張されて設計されていますが、ツインの全長はわずか2735mmとなっていました。
さらに「ツイン」にはハイブリッドモデルがラインナップされ、これは市販軽自動車初の快挙でした。
ハイブリッドシステムは、エンジンとトランスミッションの間に薄型モーターを配置して、加速時などにエンジンをアシストする、いまでいうマイルドハイブリッドです。
バッテリーは12Vの小型鉛電池を16個直列につなぎ、192Vの電圧でモーターを動かしていました。
アイドリングストップシステムも採用され、10・15モードで34km/Lの超低燃費を実現していました。
しかし、ガソリンモデルが51万4500円(5MT、消費税5%込)からと低価格になっていましたが、ハイブリッドモデルが135万4500円からと高価で、そのうえ2人乗りということで販売は苦戦し、ツインはわずか2年8か月ほどで販売を終了しました。
●ホンダ「インサイト」
1999年にホンダは、世界最高水準の低燃費を目指したエコカー「インサイト」を発売しました。
1リッター直列3気筒エンジンに、アシスト用モーターを組み合わせた「ホンダIMA(インテグレーテッド・モーターアシスト)システム」と呼称されるパラレルハイブリッドを搭載。
当時は量産モデル(ガソリン燃料)として世界最高の低燃費を達成して35km/L(10・15モード)を実現しました。
そのための施策として、2名乗車にアルミ製シャシやアルミと樹脂を組み合わせたボディパネルを採用して、車両重量は800kg台前半に抑えられていました。
外装もリアタイヤをスカートで覆い、徹底的に空気抵抗を減らす工夫が施され、Cd値は0.25を達成。当時のホンダが持つ低燃費化技術が余すことなく投入されたクルマでした。
しかし、2名乗車では一部のユーザーからしか受け入れられず2006年に販売終了となり、次期型インサイトはトヨタ「プリウス」を意識した5ドアハッチバックとなりました。
■軽商用車にもハイブリッドモデルがあった!?
●ダイハツ「ハイゼットカーゴ ハイブリッド」
ダイハツは軽商用車では初となるハイブリッドモデル「ハイゼットカーゴ ハイブリッド」を2005年に発売しました。
ハイゼットカーゴ ハイブリッドは、軽商用車「ハイゼット カーゴ」をベースに、1モーター方式のコンパクトな「ダイハツハイゼット ハイブリッドシステム」を採用し、高い走行性能と優れた燃費・低排出ガス性能を両立。
バッテリーはニッケル水素を採用し、リアシート下に格納していましたので、荷室容量への影響は最小限に留められました。
また、価格は215万5500円(消費税5%込)と、ベース車に対して100万円以上高価ということもあり、顧客は主に官公庁や地球環境に関心の高い企業がターゲットとされていました。
燃費は10・15モードで20.0km/Lで、当時のガソリンモデルが15km/Lほどでしたから約3割向上していましたが、100万円の価格差をガソリン代で相殺するのは、現実的ではなかったようです。
結局、ハイゼットカーゴ ハイブリッドの販売は低迷し、2010年に生産を終了します。その後、ハイブリッドモデルはラインナップされていません。
●ホンダ「シビック ハイブリッド」
前出の初代「インサイト」は、燃費性能向上のため乗車定員を2名とするなど、ストイックなまでに軽量化を実現していました。
しかし、使い勝手という面では一般に受け入れられず、ホンダは3代目「シビック フェリオ」をベースに「シビック ハイブリッド」を2001年に発売します。
ハイブリッドシステムはインサイトと同様な、薄型モーターを使って1.3リッターエンジンをアシストするパラレルハイブリッド「ホンダIMAシステム」が採用されました。
燃費はついにトヨタ「プリウス」を上回る29.5km/L(10・15モード)を達成。しかし、2002年にはプリウスは31.0km/Lを達成し引き離されます。
2005年には、2代目のシビック ハイブリッドにチェンジしますが、このシビックをもって日本市場から撤退。現在はシビックにハイブリッドモデルはラインナップされていません。
※ ※ ※
プリウス登場後の2000年初頭から、ハイブリッドモデルは一気に増えていきましたが、やはりプリウスを超えるのは非常に難しかったことがわかります。
いいかえると、それほどまでにプリウスの開発において、トヨタの叡智が集まっていたということでしょう。
いまトヨタは、ハイブリッドシステムや燃料電池に関わる特許を無償公開しています。「トヨタは太っ腹」と思われますが、おそらくトヨタは他の追随を許さない、次世代の革新的技術を用意できているのかもしれません。
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