■かなり気合が入っていた往年の限定車を振り返る
数年ほど前から、「限定車」が出ると争奪戦が繰り広げられるようになってしまいました。とくに高性能モデルの限定車の人気が異常に高く、発表と同時に完売という状況であったり、抽選販売となるケースも散見されます。
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クルマに限らず、「限定」という言葉は多くの人にとって甘美に聞こえるようで、どうにかして手に入れたい思いにかられるのではないでしょうか。
そんな限定車はこれまで数多く販売されましたが、なかには特別なモデルも存在。そこで、かつて販売された気合がすごかった限定車を、3車種ピックアップして紹介します。
●日産「スカイライン GTS-R」
かつて、日産「スカイライン」はモータースポーツと緊密な関わりがありました。そのスタートはプリンス自動車時代に登場した2代目からで、日産から発売された3代目ベースのスカイラインGT-Rは、いわずもがなといったところでしょう。
しかし、その後はオイルショックや排出ガス規制の強化という時代背景からモータースポーツから一時撤退。1980年代になるとターボエンジンの登場により一気に高性能化が進み、スカイラインは再びモータースポーツの世界へとカムバックしました。
そして、1985年に発売された7代目スカイラインからは、新世代の直列6気筒エンジン「RB型」を搭載。
RB型エンジンでは初代と2代目スカイラインGT-Rに搭載された「S20型」以来となる、直列6気筒DOHCが復活し、さらに高性能な「RB20DET型」ターボエンジンも設定されました。
またスカイラインは、1985年から始まったグループAカテゴリーで戦われる「全日本ツーリングカー選手権」に参戦を果たします。
グループAでは市販車のポテンシャルがそのまま戦闘力の向上につながるため、1987年にレースベースに特化したエボリューションモデルの「スカイラインGTS-R」を800台限定で発売しました。
GTS-Rのエンジンは、専用のターボチャージャーにステンレス製エキゾーストマニホールド、大容量空冷インタークーラーなどが採用され、210馬力を絞り出す専用の「RB20DET-R型」を搭載。
外観は固定式のフロントスポイラーや、当時としては大型のリアスポイラーを装備するなど、戦うマシンへと変貌を遂げています。
GTS-Rはレースで見事チャンピオンを獲得しますが、ライバルに対して圧倒的な勝利とはいえませんでした。
そこで、1989年に新生スカイラインGT-Rが登場し、レースでの圧倒的な強さはいまも語り継がれていますが、スカイラインGTS-Rの存在がGT-R復活の礎になったのは間違いありません。
●スバル「インプレッサ 22B-STiバージョン」
かつて、世界ラリー選手権(以下、WRC)において、ライバルとして性能を高めあった存在が、三菱「ランサーエボリューション」とスバル「インプレッサ WRX」。
どちらも現在は消滅しましたが、なかでも伝説的なモデルとして挙げられるのが「インプレッサ 22B-STiバージョン」です。
グループAカテゴリーで戦われたWRCでは、1997年以降のレギュレーション変更により改造範囲が広がった「WRカー」による戦いが始まり、スバルは2ドアクーペの「インプレッサ リトナ」をベースにした「インプレッサ ワールドラリーカー97」で参戦。
このWRカーを再現したレプリカモデルとして、1998年にインプレッサ 22B-STiバージョンが400台限定で発売されました。
インプレッサ 22B-STiバージョンはSTi(スバルテクニカインターナショナル)が手掛けたコンプリートカーのひとつで、前後ブリスターフェンダーによる迫力あるワイドボディが最大の特徴です。
また、ワイドボディに合わせて専用の前後バンパーや、2段階の角度調整が可能なリアウイングが装着されています。
エンジンは迫力あるボディにふさわしく、2リッターの「EJ20型」をベースにボアアップして2.2リッターとした水平対向4気筒DOHCターボ「EJ22改型」を搭載。最高出力は280馬力を誇りました。
ほかにもクイックレシオステアリングやツインプレート・セラミックメタルクラッチ、ビルシュタイン製ショックアブソーバー、アイバッハ製スプリング、BBS製鍛造アルミホイール、ピレリ「P-Zero」タイヤなどが奢られています。
当時の価格は500万円(消費税含まず)と高額でしたが、発売すると400台は即完売してしまいました。
現在は滅多に市場に出ることはありませんが、3000万円台のプライスで販売されるケースもあります。
■当初は限定車として販売された高性能モデルとは?
●三菱「ランサーGSRエボリューション」
三菱は1960年代から「コルトギャラン」、1970年代は「ランサー」によって国内外のラリーに参戦し、好成績を収めていました。その後1980年代になると、WRCではターボエンジン+4WDのマシンでないと勝てない状況となります。
そこで三菱は「ギャラン VR-4」でWRCへ参戦し、複数の優勝を勝ち取ります。しかし、さらに戦闘力の向上を目指し、軽量・コンパクトなマシンへとスイッチすることになり、1992年に初代「ランサーGSRエボリューション」が登場。後に続くランサーエボリューションシリーズの記念すべき第1弾です。
グレードは普段使いにも適した装備のGSRエボリューションと、モータースポーツベース車の「RSエボリューション」のふたつを設定し、販売は両車合計で2500台の限定発売。しかし、予想以上の反響だったことから最終的には約7600台が販売されました。
ベースとなったモデルは「ランサー1800GSR」で、エンジンはギャラン VR-4に搭載された2リッター直列4気筒「4G63型」ターボエンジンをチューンナップし、最高出力250馬力を発揮。
駆動方式はビスカスカップリングとセンターデフを組み合わせた、三菱独自のフルタイム4WDシステムが採用されました。
また、ボディは剛性アップが図られると同時にアルミ製ボンネットなどによる軽量化もおこなわれ、車重は1240kg(GSRエボリューション)を達成。パワーウエイトレシオはわずか4.96kg/psを実現しました。
ハイパワーなエンジンと4WDシステム、軽量な車体が相まって、加速性能は当時の市販車としては驚異的といえましたが、ランサーGSRエボリューションは急造されたことからシャシの熟成が追いついておらず、加速性能は優れていたものの旋回性能の評価は高くなく、まだ荒削りな面が残っていたといえます。
そのため、後に続くランサーエボリューションシリーズではシャシ性能の向上と、ハイテクを駆使した駆動力制御を進めることになり、インプレッサ WRXと熾烈な戦いを繰り広げました。
※ ※ ※
限定車の争奪戦は日本に限ったことではありません。とくにコロナ禍の影響で世界の富裕層のなかにはお金を使う機会がなく、投機的な意味で限定車を買うというケースもあるようです。
そして、実際に中古車が新車価格を大きく上まわる値段で販売されることも珍しくありません。
資本主義社会において需要と供給のバランスからプレミア価格で売るのは一般的なことといえますが、本当に欲しい、乗りたいというユーザーが買えない事態について、もう少しメーカーも考えてもらいたいとろです。
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