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【なぜ?】ルノー生産拠点の閉鎖 報道が増えた背景 アルピーヌの工場、生き残ると考えるワケ

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【なぜ?】ルノー生産拠点の閉鎖 報道が増えた背景 アルピーヌの工場、生き残ると考えるワケ

ファンは気になるアルピーヌのゆくえ

text:Kazuhiro Nanyo(南陽一浩)

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5月28、29日と、日産とルノーが決算発表を控えた直前の27日に、ルノー・日産・三菱のアライアンス記者会見が行われた。

それは中期の新戦略として「リーダー/フォロワー」をキーに、プラットフォームやコンポーネント共通化からまた一歩、アライアンス強化に踏み込むというものだ。

3社それぞれが強い分野を他2社が活かし、プロダクト開発と生産のリソースを集約することで、より競争力と収益性を高めるという。

具体的には、自動運転や中国市場対応は日産、EVアーキテクチャ含む小型車プラットフォームはルノー、PHEVは三菱といったところだ。

「リーダー/フォロワーの新戦略で、A110のような単独プラットフォームのモデルをどう位置づけるか?」

「新戦略による開発の効率化は、生産拠点の統廃合を伴うか?」

といった質問を、ウェブ会見なので日仏英語でポストし続けた。

が、各国の経済紙の質問に阻まれたか、回答は得られなかった。

工場閉鎖の話題、観測気球の可能性

新戦略に異を唱えはしないが意地悪く見れば、火の出るような決算発表の場を避けて、先手を打った感は否めない。

なぜなら先週、ルノーはフランス国内で4か所の工場閉鎖を検討中であると、報じられた。

名指しされた4つの工場には、2017年に復活したばかり、アルピーヌのディエップ工場も含まれていたのだ。

メイド・イン・フランスの象徴になりやすいアルピーヌの件は、15%の大株主であるフランス政府や労働組合を巻き込んで、社会紛争の様相を呈している。

とはいえ先に結論をいってしまえば、カルロス・ゴーン事件以降のルノーは、大がかりな経営改革は必要としているが、今回の工場閉鎖の話題は観測気球の可能性が強い。

つまりルノーと政府や労働組合との調整が今後、荒れ模様ながらも進み、生産拠点の構造的集約や整理は泥沼ながらも行われ、アルピーヌとディエップ工場はおそらく生き残るのではないかと考えられる。

その理由と背景は、こうだ。

アルピーヌ/工場 生き残ると考えるワケ

まず、ディエップ工場は新型アルピーヌA110のために整えられた生産ラインを3年前の2017年初頭より稼働させた。

そのために3500万ユーロ(約42億円)の投資がなされた。

たった3年で工場閉鎖というのは、現PSA会長のカルロス・タヴァレスが立ち上げ、ゴーン時代に進められた社内ベンチャーの扱いとしても、さすがに合理性を欠いている。

とはいえ2月の決算発表でルノーの2019年度赤字は1億4100万ユーロ(170億円弱)に上る。

現ルノー社長のクロチルド・デルボスは、今後2年間で20億ユーロ(約2400億円)のコスト削減を進める意向を明らかにした。

投資額と収益率の(現状での)アンバランスさという点でも、聖域やタブーのない改革の必要性を示す点でも、アルピーヌは象徴的かつメディア映えする格好の材料でもある。

むしろ問題の核は、ルノーはフランス政府の融資保証でコロナ禍の悪影響を乗り切るための50億ユーロ(約6000億円)を、銀行連から借りる予定であること。

平たくいえば、大借金をしながら失業者を作り出して保証人の顔が丸潰れという、政府激怒の状況だ。

財務大臣のブリュノ・ル・メールは不快感を強調したコメントを連発し、元ディエップ市長も陳情書を公開レターとしてフランス政府に送っている。

それにしてもコロナ復興が始まったばかりの時期に、なぜ工場閉鎖の話題が挙がったか?

そこにはルノーの社内事情がある。

工場閉鎖の話題が報じられた背景

クロチルド・デルボスは財務部トップ兼任の一時的な社長で、元副社長のティエリー・ボロレが降ろされた昨年10月より現職。

生粋の財務エキスパートである彼女のルノー入りは2012年。グループ会長のジャン=ドミニク・スナールより先。

だが、それ以前に国際的な製鉄グループに在籍時、上司の財務ディレクターは他でもないスナールだった。

そのスナールの招きで、7月からはセアトからイタリア人の新社長ルカ・デ・メオが就任するのは既定路線だ。

ミラノのボッコーニ大学で経営学を修め、若い頃にトヨタ勤務を経験し、フィアットで故セルジオ・マルキオンネの下で新型フィアット500の立ち上げやアルファロメオで辣腕を奮った。

VWグループ移籍後はアウディやセアトで実績を残した彼は、カーガイであるといわれる。

以上を鑑みると、財務のプロがやるべき仕事を遂行した、という爪痕を残しつつ、グループ会長の意を汲んで、新社長に警告めいた強いトーンで課題を示した、そう解釈できる。

同時にフランス政府と労働組合、地元の政治家らといったステークホルダー全員を、話し合いのテーブルにつかざるをえなくした、というウルトラCでもある。

それは新社長を歓迎しないとか妨害するといったニュアンスではない。

スナールとデルボスのホットライン連携からイタリア人新社長にとんでもなく難しいパスが渡った、といえる。

ようは引き当てた融資の使い途が、ルノーにとっては問題なのだ。

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