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サブスク制「シートヒーター」はなぜ批判されたのか? 「買ったのに使えない」が映したクルマの価値転換、愛車は「買って終わり」ではなくなるのか

掲載 更新 109
サブスク制「シートヒーター」はなぜ批判されたのか? 「買ったのに使えない」が映したクルマの価値転換、愛車は「買って終わり」ではなくなるのか

搭載機能の有料化が生んだ世界的な批判

 自分が購入した車両に最初からシートヒーターが搭載されているにもかかわらず、スイッチを押しても作動しないという出来事が現実のものとなった。ドイツのBMWは2022年、同社の「BMWコネクテッド・ドライブ・ストア」を通じて、シートヒーターのサブスクリプション提供を開始した。

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 対象領域は韓国をはじめ、英国、ドイツ、ニュージーランド、南アフリカなど複数の国や地域に及び、あらかじめ車両に搭載されたハードウェアを有料契約時のみ利用可能とする方法を採用している。価格は月額18ドル(約2500円)に設定され、ソフトウェアで初期状態では作動しないよう制御された機能を、契約後に遠隔操作で有効化する仕組みだ。

 この事例が報じられると、SNSや海外のテック系メディアを中心に多様な議論が巻き起こった。車体と一緒に購入したはずのハードウェアに対して継続的な支払いが発生する仕組みに対し、IT分野で用いられる追加コンテンツ購入の手法や不正解除を指す用語とともに話題が広がり、一般の自動車ユーザーにも広く認識されるに至った。事前に搭載された機能をソフトウェアの制御で有効化する仕組みが、これまでの製品購入体験との間で大きなギャップを生んだためである。

 継続課金の対象はシートヒーターにとどまらない。ステアリングヒーターのような快適装備から高度な運転支援機能まで含まれており、車載ソフトウェアを軸とした多様な領域で継続的に収益を得るモデルへと移行しつつある。

 これは個別の施策という枠を超え、製造時に車両を完成品として販売して完結する形態から、引き渡し後もソフトウェアを介して機能を順次提供していく形態へと、製品と顧客の関わり方が変化したことを示している。

 さらに、物理的に存在するハードウェアの利用権をソフトウェアで制御する手法は、新車販売の場にとどまらず、中古車として再流通する際の評価プロセスにも影響を及ぼす。車両の転売時に機能の利用権がどのように引き継がれるか、あるいは再有効化の手続きをどう進めるかといった点を含め、自動車のライフサイクル全体にわたる流通形態の多様化を促す結果となった。

EVシフトにともなうコスト高とソフト収益化

 BMWは2023年9月5日からドイツ・ミュンヘンで開催された自動車関連カンファレンス「IAA MOBILITY」で、シートヒーターのサブスクリプション提供を今後は行わない方針を明らかにした。一方で、高度な運転支援機能をはじめとする純粋なソフトウェア基盤の機能については、引き続きサブスクリプション形式で提供を維持する考えを示している。

 自動車メーカーが機能の継続課金を推進する背景には、電気自動車(EV)への移行にともなうコスト構造の変化がある。巨額の投資を要するEVシフトの負担は大きく、例えばフォードのEV部門である「Model e」は、2025年第3四半期単体で14億ドル、同年1~9月の累計で36億ドルのEBIT損失を計上した。

 EV化にともない車両1台あたりの製造コストが上昇する中、販売価格への上乗せには限度があり、業界全体で持続的な収益確保の手段を模索する動きが顕著だ。あわせて、車両の電子制御を集約し、無線通信によるソフトウェア更新(OTA)で機能を後から追加・変更できる技術基盤が整ったことも要因の一つと言える。

 生産面においても、車両ごとに異なる仕様の部品を製造現場で組み分けるより、全車に同等のハードウェアをあらかじめ実装した上でソフトウェアによって機能を調整する方が、部品調達や製造ラインの工程を均一化できる合理的な面を持つ。一次サプライヤーとの関係も、従来の部品売り切りから、ソフトウェアの共同開発や機能提供に応じた新たな収益分配へと広がりを見せる。

 すでに実績を上げている例も少なくない。GMはリモートアクセスや事故自動検知を含む車載サービス「OnStar」などのサブスクリプション売上により、2021年時点で20億ドル近くを計上しており、2030年までに最大250億ドル規模へ広げる計画を公表した。EV化とコネクテッドカー化が進展する中、自動車産業はハードウェアの販売で完結していた従来の事業形態から、ソフトウェアを通じて継続的に価値を創出し収益を獲得する構造へと転換期を迎えている。

物理装備の所有意識と代替環境の広がり

 S&P Global Mobilityが実施したコネクテッドカーサービスに関する調査では、車の機能サブスクリプションに課金する意向を示す消費者の割合が、2024年の86%から2025年には68%へと推移し、1年で18ポイントの下落を記録した。

 こうした動向の背景には、一度製造すれば継続的な運用コストが限られるハードウェア機能と、クラウド基盤の維持や定期的な更新をともなうソフトウェア機能との間で、利用者の受け止め方に違いが存在する点が挙げられる。あわせて、スマートフォンと車載インターフェースの連携が進んだことで、ナビゲーションやエンターテインメントといった領域において、手持ちの端末やアプリで機能を代替できる環境が整った影響も大きい。

 Cox Automotiveが2023年に発表した調査では、主要な車載機能の利用にサブスクリプション契約が必要となる場合、回答者の約69%が

「他のブランドに乗り換える」

と答えた。同社が2022年に行った調査においても、92%の人がシートヒーターや冷却シートは購入価格に含まれるべきと回答し、リモートスタートについても89%が

「サブスクリプションではなく購入価格に含むべき」

との見解を示している。ユーザーは車両の物理的な装備を購入時の権利範囲として捉える傾向が強く、運用コストをともなうオンラインサービスとは異なる区分で認識していることがうかがえる。

 さらに、アリックスパートナーズが2026年に発表した「グローバル自動車消費者意識調査」によると、世界の回答者の63%が、サブスクリプション形式で有効化できる車両機能は

「購買意欲に影響しない、あるいは購買意欲が低下する」

と回答しており、消費者の根強い抵抗感が浮き彫りになった。メーカー側においては、出荷後の機能更新による利便性の向上と、ユーザーが納得して継続的に利用できる課金体系のすり合わせが現在も続く。

車両定額制の浸透と透明性を備えた展開

 日本では現在、トヨタ系列の「KINTO」や日産のサブスクリプションサービスのように、車両を丸ごと定額で利用できる仕組みが定着しつつある。実際に、KINTOの新車サブスク「KINTO ONE」の累計申込数は2024年12月末時点で約13.7万件に達し、2024年度の業績において創業以来初となる黒字化(純利益7.95億円)を達成した。

 車両代、保険、税金、メンテナンスを一括化した形態は、若年層をはじめとする幅広い層の支持を集める。一方、すでに納車された車両内のハードウェアを後から追加料金で利用可能とするモデルは、国内においてはこれからの領域と言える。

 ただし、市場環境は確実に変化の兆しを見せている。トヨタとKINTOは2022年1月28日、既存のトヨタおよびレクサス車両に対して、なめらかブレーキなどの先進安全機能の後付けや、経年劣化にともなう内外装のリフォームを提供する「KINTO FACTORY」(現在の「TOYOTA UPGRADE FACTORY」および「LEXUS UPGRADE FACTORY」)を開始した。

 現在は機能ごとの買い切り販売が主軸であるが、将来的には継続利用を見据えた多様な提供形態も視野に入る。EV化の進展やOTA技術の普及にともない、国内の自動車メーカーにおいても機能に応じた継続課金を導入するための基盤整備が本格化しつつある。

 日本の市場環境においては、個別の小規模な機能に逐次課金する手法よりも、安心感や透明性を重視した提供方法への関心が高い。リアルな接点を持つ正規ディーラー店舗が、機能の仕組みや更新内容をユーザーへ対面で分かりやすく説明するサポート拠点として役割を担うことも想定される。

 また、購入時に権利が決定する基本装備と、OTAを通じて機能が継続して向上するソフトウェアサービスとの区分を事前に明確化し、提示する方法も模索されている。機能課金の仕組みへの理解と納得感を高める取り組みが、今後の自動車市場における多様なサービス展開を支える確かな土台となるはずだ。(木村義孝(フリーライター))

文:Merkmal 木村義孝(フリーライター)
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みんなのコメント

109件
  • kan********
    オレもそうなったら 間違いなく 
    そのメーカーのクルマは買わない

    なんで毎月金を払う必要があるのか?
    納得できないな
  • ********
    BMWセコイ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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