日本でのディーゼル車の売れゆきが好調だ。2018年度上期(4~9月)の乗用車販売では、ハイブリッド車が伸び悩んだのに対して、ディーゼル車は国産車、輸入車ともに過去最高で、前年比20.1%増を記録した。
非常に厳しい排ガス規制である「ユーロ6」の施行(2014年)、そして翌2015年のVWによる不正発覚が決定打となり電動化の流れが加速する世界の中で、日本のあり方はある意味異様とも取れる。
「価値あるマイチェン」を果たしたクルマはどれだ? 2018年 マイナーチェンジ大賞
とはいえ、そんな日本にあっても数年先ディーゼルの売れ行きや価値がどうなっているかは非常にビミョウだ。巷に流れるディーゼルの様々な憶測についてはこちらの記事で詳しくお伝えしているが、欧州を筆頭に世界でまるでディーゼルを駆逐せんとするかのような流れが起きているのは紛れもない事実で、その波に日本が易々と飲まれないとは限らないからだ。
さて、前置きが長くなったが、そんな中で数年後にあっても損のなさそうな「買いのディーゼル車」はどれか? というのがこの記事のテーマだ。
新型D:5からプジョー・ジャガーまで。国産車・輸入車の主要ディーゼル15車が「買い」なのか、「待ち」なのか? 自動車ジャーナリストの渡辺陽一郎氏に解説・吟味してもらった。
※本稿は2018年11月のものです
文:渡辺陽一郎/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2018年12月26日号
【解説】 ズバリ! ディーゼル車はいま「買い」なのか?
クリーンディーゼル車は、ガソリン車に比べると設計が全般的に新しい。実用回転域の駆動力が高く、燃費も優れ、しかもディーゼルの欠点とされるノイズや振動を低減させたエンジンが多い。
したがって今のディーゼル搭載車に、設計の古い選ぶ価値の下がったクルマは少ない。
特にマツダは、プラットフォームの種類や車種の数を少なく抑える代わりに、改良を頻繁に行う。ディーゼルエンジンを含めて、性能を常に高く保っているから、安定性や乗り心地も良好だ。2019年にフルモデルチェンジを受けるアクセラを除くと、マツダ車はいずれも選ぶ価値が高い。
マツダ以外のメーカーからは、ディーゼル車がほとんど売られていないが、ランクルプラドは実用回転域の駆動力がかなり高く、悪路走行でも使いやすい。オフロードSUVの性格に合っている。今は悪路向けのSUVが減ったから、ランクルプラドは、ディーゼルの搭載と相まって貴重な選択肢になった。
デリカD:5は発売から12年近くを経過するが、大幅な改良を施して魅力を高めた。
輸入車ではディーゼルを含めてベンツCクラスの運転感覚が上質だ。BMW3シリーズも設計の新しいディーゼルを搭載するが、車両の作りが古い。3シリーズは次期型を選びたい。VWティグアンはディーゼルを含めて新しいが、加速感覚はガソリンに近い印象だ。運転感覚が好みに合えば、選ぶ価値がある。
なおディーゼル車は、高い動力性能と低燃費を両立させるから、中古車市場でも人気を得ている。ガソリン車に比べて新車価格は高いが、売却時も高値になる。
またディーゼル車は新車購入時に、一部の車種は申請をすることで、経済産業省の補助金も交付されるのでお得だ。
■MITSUBISHI デリカD:5
主なグレードの価格:Gパワーパッケージ・4WD 408万2400円
ミニバンでは唯一のディーゼル搭載車になる。マイナーチェンジで2.2Lディーゼルは改良されて最大トルクが36.7kgmから38.7kgmにアップ。尿素SCRシステムや新開発の8速ATも新搭載した。正式発表と発売は2月からとなるが、全国の三菱ディーラーで試乗会を展開中だ。
【買いか? 待ちか?】…オススメ!
■TOYOTA ランクルプラド
●主なグレードの価格:2.8TX Lパッケージ(5人) 466万7760円
排気量が2.8Lと余裕があり、低回転域でも駆動力の落ち込みが小さい。ノイズも抑えられて上質なディーゼルに仕上げた。悪路の走破力を徹底的に高め、なおかつ舗装路の安定性も満足できて買い得だ。
【買いか? 待ちか?】…オススメ!
■MAZDA アテンザ
●主なグレードの価格:XDプロアクティブ・2WD 336万9600円
2018年に大幅な改良を行い、2.2Lディーゼルは実用回転域の駆動力が向上した。回転フィールも滑らかで、操舵感と乗り心地の突っ張り感も改善している。走りを洗練させ、発売から6年が経ったが選ぶ価値がある。
【買いか? 待ちか?】…オススメ!
■MAZDA デミオ
●主なグレードの価格:XDツーリング・2WD 201万4200円
全長が約4mのコンパクトカーだが、ディーゼルを搭載して実用回転域の駆動力は2.5Lのガソリンエンジン並みだ。走行安定性も優れ、内装は上質に仕上げた。後席と荷室は狭いが、ドライバーの満足度は高い。
【買いか? 待ちか?】…オススメ!
■MAZDA アクセラ
●主なグレードの価格:15XD Lパッケージ 268万9200円
1.5Lと2.2Lという2種類のディーゼルターボを用意する。デミオに比べて後席が広く、乗り心地も重厚だが、2019年にフルモデルチェンジを受ける予定。プラットフォームも刷新するので次期型を待ちたい。
【買いか? 待ちか?】…熟考すべし。
■MAZDA CX-3
●主なグレードの価格:XDプロアクティブ・2WD 263万880円
マイチェンでディーゼル車は排気量を1.8Lに拡大して、回転フィールが滑らかになり、吹き上がりも向上した。街中では駆動力の高いガソリンエンジンのように感じる。乗り心地は少し硬いが、揺すられ感を抑えた。
【買いか? 待ちか?】…太鼓判!!
■MAZDA CX-5
●主なグレードの価格:XDプロアクティブ・2WD 311万5800円
今年の改良で2.2Lのディーゼルは動力性能がアップしノイズも抑えられ、洗練度が向上。走行安定性も以前の欠点だった後輪の接地不足が解消され、乗り心地はしなやかになっている。走りの質は全般的に高い。
【買いか? 待ちか?】…太鼓判!!
■MAZDA CX-8
●主なグレードの価格:XDプロアクティブ・2WD(6人)369万3600円
海外向けのCX-9をベースに全幅を縮めたため、ボディは重いが、走行安定性と乗り心地のバランスがいい。この運転感覚が2.2Lディーゼルの性格にマッチしている。マツダ車のなかでは走りが最も上質だ。
【買いか? 待ちか?】…太鼓判!!
■VOLVO XC60
●主なグレードの価格:D4 AWDモメンタム 599万円
今のボルボはエンジン排気量の上限を2Lに抑えている。D4が搭載するディーゼルは実用回転域の駆動力が高くノイズは小さい。XC60はボディがワイド過ぎるが安定性は優れ、走行性能が総合的に高い。
【買いか? 待ちか?】…太鼓判!!
■VW ティグアン
●主なグレードの価格:TDI4モーションハイライン 494万円
エンジンは高回転域の吹き上がりがいい。ディーゼルらしい低回転域の粘り感は少し乏しいが、性能的な不満はない。基本設計が新しいので、乗り心地も満足できる。総合的に優れた商品に仕上がっている。
【買いか? 待ちか?】…オススメ!
■BMW 3シリーズ
●主なグレードの価格:セダン320dスポーツ 585万円
2016年に搭載された新しいディーゼルターボは、ノイズが大幅に抑えられた。ガソリンエンジンのように軽快に吹き上がり、新世代のディーゼルと思わせる。ただし3シリーズ自体は設計が古く選ぶ価値が薄れた。
【買いか? 待ちか?】…熟考すべし。
■Mercedes-Benz Cクラス
●主なグレードの価格:C220dアバンギャルド 578万円
ディーゼルらしく実用回転域の駆動力が高い。その一方で吹き上がりもよく、ノイズも小さいからディーゼルエンジンの欠点を感じさせない。9速ATは滑らかに変速し、フル加速時には高回転域をキープする。
【買いか? 待ちか?】…太鼓判!!
■PEUGEOT 308
●主なグレードの価格:アリュールブルーHDi 299万9000円
ディーゼルは1.6Lと2Lを用意する。割安な1.6Lも充分な性能を発揮するが、1400回転以下では駆動力が物足りない。ディーゼル特有のノイズも少し気になる。走行安定性はよく、適度に機敏でスポーティだ。
【買いか? 待ちか?】…オススメ!
■Citroen グランドC4スペースツアラー
●主なグレードの価格:シャイン ブルーHDi 380万円
今のC4はグランドスペースツアラー(以前のC4ピカソ)のみだ。ディーゼルはプジョー308と共通の2Lで、実用回転域の駆動力が高い。車両重量は1600kgを超えるが充分な性能を発揮する。車両の設計は古い。
【買いか? 待ちか?】…熟考すべし。
■JAGUAR XE
●主なグレードの価格:ピュア(ディーゼル) 519万円
2Lのディーゼルと8速ATの組み合わせで、滑らかな加速を味わえる。操舵感は適度に機敏でよく曲がり、スポーティな印象だ。ジャガーのセダンとディーゼルの組み合わせでも、違和感は生じない。
【買いか? 待ちか?】…オススメ!
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