デイトナ・インターナショナル・スピードウェイで開催された2026年NASCARカップシリーズのレギュラーシーズン最終ラウンド、第26戦『Coke Zero 400(コーク・ゼロ400)』は、終盤で燃料不足の懸念がありながらも不屈の闘志を披露したライアン・プリース(RFK Racing/フォード・マスタング)が、オーバータイム(延長戦)の末にカップシリーズのポイント対象レースで初優勝を飾ることに。
この劇的な結末により、プレーオフ進出権のカットライン上で31ポイント先行していたシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(トラックハウス・レーシング/シボレー・カマロ)を大逆転し、プリースがポストシーズン“The Chase(ザ・チェイス)”の16強入りを決めている。
トム・クルーズ主演作が38年ぶり復活。アン・ハサウェイを迎えた『デイズ・オブ・サンダー』続編の製作が決定
いよいよ終盤戦の大詰めを迎えたNASCARは、来季2027年カレンダーの全開催地が確定するとともに、シリーズを題材とした映画『デイズ・オブ・サンダー』の続編が2028年夏に公開されることも決定。主演を務めるトム・クルーズや共演者のアン・ハサウェイらが製作発表とともに現地デイトナを訪れるなど、天王山にふさわしい雰囲気の高まりを見せた。
そのデイトナでは、今回からテスト走行も行われていない新しいエアロパッケージが決勝のぶっつけ本番で導入され、視覚的な変更点としてリヤスポイラーを小型化(4インチ)してエンジンも出力を抑制、併せてギア比の変更も行われることに。これにより空気抵抗が減少し、ドライバーが燃費走行(セーブ)を行えなくなること、マシンの操縦が難しくなること、そしてオーバーテイクの機会が増えることが期待された。
そんな不確定要素入り混じる状況のなか、迎えた予選ではすでにポストシーズン“敗退”が確定しているロス・チャスティン(トラックハウス・レーシング/シボレー・カマロ)が気を吐き、今季初、キャリア通算でも3度目のポールポジションを獲得する。
「正直なところ、ファクトリーを出発した時点では僕らの『ウェンディーズ・ウォーターメロン・シボレー』が、これほどの好結果を出せるとは予想していなかった」と明かしたド派手かつファンシーなリバリーをまとったチャスティン。「つねに効率性を追求し、デイトナに向け空気抵抗(ドラッグ)を最小限に抑えつつ、新パッケージで最大限のグリップ力を確保しようと努めてきた。だからトラックハウスとECR(リチャード・チルドレス・レーシング本拠地内に構えるエンジンビルダー)には脱帽だ。先週はトラブルに見舞われたが、すぐに立ち直り素晴らしいパワーを発揮してチーム全員の名誉を挽回できた。ノースカロライナ州ウェルカムにあるECRのファクトリーとともに、今年のデイトナで(開幕戦に続く)ポールポジションを連覇できたんだからね!」
その好調さはチームメイトにも伝播し、迎えた決勝ではランキング16位で初のプレーオフ進出を賭けた僚友“SVG”がステージ1を制覇していく。しかしこのフィニッシュ時、ライン手前でプリースとRFKのチームメイトであるクリス・ブッシャー、そして王者カイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)がプッシングからスピンを喫し、インフィールドの芝生エリアに飛び出すアクシデントが発生する。
この3台が絡むクラッシュで左フロントフェンダーを損傷するアクシデントに見舞われたプリースは、クルーの懸命な修復を経て後方集団からの挽回を強いられると、前戦勝者ライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)がステージ2を制覇する一方、最後の65周に及ぶステージで燃料を温存しつつ走り続ける戦略を採る。
そしてこの力走が決定打となり、終盤はタイラー・レディック(23XI Racing/トヨタ・カムリXSE)やゼイン・スミス(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)らと首位攻防の展開に持ち込んで行く。
すると155周目のターン3進入時に、プリースのイン側へ強引に飛び込んだカーソン・ホセヴァー(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)がクラッシュ。77号車シボレーをボトムレーン(イン側)に向けたホセヴァーだったが、新エアロの影響かリヤが急激に流れてコントロールを失い、エプロンで弾んだカマロZL1はアウト側の壁へと激突。タイ・ギブス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)がボトム側へとスピンしていく一方、後続のエリック・ジョーンズ(レガシィ・モーター・クラブ/トヨタ・カムリXSE)は、外側の壁際に張り付いていたホセヴァーに激しい勢いで突っ込んだ。
「前の車に近づくと、つねにひどいアンダーステア(クルマが曲がりにくくなる状態)に悩まされていたんだ」と明かしたホセヴァー。「だから、ラインを上のほうから下のほうに変えてみたんだ。そうしたらターン3への進入でノーズに大量の空気が当たってコントロールを失ってしまい、そのまま滑り続けてしまったんだ。ステアリングは真っ直ぐに保っていたのにね……」
この事故により、レギュラー最終戦はスミスを先頭にしたオーバータイムでのリスタートが確定する。
「空気の流れとノーズに掛かった何らかの力で、そのまま滑り続けてしまった。あんな挙動になるとは驚きだったよ。完全に不意を突かれたね」と続けたホセヴァー。「計画どおりに1日中走れて、最後には勝利のチャンスも掴めたのは良かった。上位を走り、トラックポジションを確保し、ラップリーダーにもなれた。チームとしてこれ以上望むことはないよ。全体として、今夜はかなり良い仕事ができたと思う」
このオーバータイムの局面で2台をパスしたプリースがトップに浮上する一方で、ファイナルラップでスミスをプッシュした後、レディックはアウトサイドから仕掛けたが、最終周のバックストレッチで両者は接触。これがレース最終局面での多重クラッシュへと発展してしまう。
その背後で157周目に給油のためピットインし、ここで4本のタイヤ交換を選択していたSVGは、オーバータイムのリスタートを27番手で迎えることとなり、その位置からでは最終ラップで発生した多重クラッシュを回避できず。このニュージーランド出身のRSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップの元“3冠”王者は28位でレースを終え、チェイス進出は絶望的な状況に追い込まれる。
そんな真横での混乱を尻目に、イエローフラッグにより予定されていた160周を6周上回る展開となった決勝で、計3回、合計5周のトップランのみとなったプリースが、最後に並んだダニエル・スアレス(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)を抑え切り満点解答。土壇場での初優勝で、SVGを17ポイント差で上回るプレーオフ最後の切符を手にした。
「今はただ、言葉もないよ」と最後のピンポン玉バトルを制したプリース。「でも、あの連中……つまり『60号車』のクルーメンバーは根っからのファイターなんだ。追い詰められたら全力で反撃する。昨季はネット上で『オレは大したことない』なんて言う連中がたくさんいた。でも今夜、オレたちは奴らを見事に打ち負かしたんだ!」
デイトナ新エアロの導入で燃費走行の結果がどう転ぶかも未知数のなか、見事な戦略完遂となったプリースは、所属するRFKに晴れて夢のポストシーズン進出の権利をもたらした。
「これこそ、マシンがいかに万全に準備されていたかの証だよ。オレはレーサーだから、速さを出すために何が必要かは分かっている。だからRFKのスタッフ全員に感謝したい。今夜、月まで行けるような『ロケット』を用意してくれたことにね。これは名誉挽回(リデンプション)の勝利さ」
併催されたNASCARオライリー・オートパーツ・シリーズ第24戦『Winn Dixie 250 Powered by Coca-Cola(ウィン・ディクシー250・パワード・バイ・コカ・コーラ)』は、これまで通算424戦に出場し5度の2位入賞を果たしてきたジョージア州出身のオーナー兼ドライバー、ライアン・シーグ(JRモータースポーツ/シボレー・カマロ)が、ついにキャリア初優勝を飾ることに。
オーバータイムに向け2列目アウトサイド・レーンからリスタートを切った39歳のシーグは、僚友カーソン・クヴァピルとジャスティン・オルゲイアーを即座に攻略し、劇的な逆転勝利を手にしている。
[オートスポーツweb 2026年09月01日]
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