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鉄腕アトムの世界のようなアルファロメオはなんと3台で15億円! 「BATシリーズ」は大マジで作られた研究車両だった

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鉄腕アトムの世界のようなアルファロメオはなんと3台で15億円! 「BATシリーズ」は大マジで作られた研究車両だった

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■アルファロメオは1950年代にエアロダイナミズム研究のために3台のデザインコンセプトカーを製作していた

伝説のアルファロメオの姿そのまんまじゃん! 現代に蘇った3億円の「33ストラダーレ」は33台すべて売り切れ

■当時ベルトーネに所属していたフランコ・スカリオーネ氏が3台のデザインを手がけた

■2020年に戦後のアルファロメオとしては最高額となる約15億5820万円で落札された

 アルファロメオが空力研究のためにベルトーネに製作依頼

 アルファロメオが1950年代半ばに、カロッツェリア・ベルトーネとともに、BAT(Berlina Aerodinamica Tecnica)と呼ばれるデザインコンセプトカーの製作を行っていたことを知っているだろうか。

 それは走行中の車両への空気抵抗の影響を研究するために3台のコンセプトカーの製作をベルトーネに依頼するというプロジェクトで、デザイナーはいずれもフランコ・スカリオーネ。ベースとなったのはいずれもアルファロメオ1900で、初作の「BAT 5」は1953年に、それに続く「BAT 7」と「BAT 9d」は、それぞれ1954年、1955年に、いずれもトリノショーで正式に発表され大きな話題を呼んだのである。

 デビューから70年近くが経過しても、この一連のBATシリーズにスカリオーネが与えたデザイン、そしてそれが生み出す優秀なエアロダイナミクスは、なおも魅力的だ。

 そしてこの3車のコンセプトに異論を唱える者は、おそらくはほとんどいないのではないだろうか。ベルトーネがハンドメイドで製作したボディは、エアロダイナミクスの利用という点においてはまさに先駆者的な存在であり、それに華麗な、と表現すべき美しさがどのモデルにも加わる。

 そもそもの始まりは、1952年にスカリオーネがデザインし、ベルトーネが製作した「アバルト1500ビポスト」の成功を受けて、アルファロメオがエアロダイナミクスへの技術的な提案に興味を示したことにあった。

 新たな研究の依頼を受けたベルトーネは、そのプラットフォームに「アルファロメオ1900」を選び、スカリオーネは物理への関心と美学への傾倒を結びつける機会を得た。

 のちにスカリオーネは、クルマの効率の85%はエアロダイナミクスが占めるという持論を発表。その単純ではあるが難しい命題に導かれ、3台のBATシリーズを生み出すことになった。

 3台が一堂に会する機会をファンは待ち望んでいた

 ファーストモデルのBAT 5は空気抵抗の最小化や高速域での安定性を考慮し、4つの実物大モデルを経て最終段階の金属加工へと進んだモデルである。突出したポンツーンフェンダーや丸みを帯びたセンターノーズは、ボンネット上に気流を導くためにも機能するデザインとされたほか、フィンはテーパードしたリヤに向かって緩やかにカーブ。リヤセクションセンター部のデザインでエアはさらに安定する仕組みとなっている。

 そのルックスはいささか過激な印象だが、オンロードでの実用性を考慮してボディが設計されていたのも見逃せない特長。ちなみにBAT 5はわずかに43馬力というパワースペックながら、198km/hの最高速を記録。注目のCd値は0.23を達成している。

 続いて1954年に製作されたBAT 7では、スカリオーネにはBAT 5のさまざまな特徴的なディテールをさらに強調するように求められた。フロントのエアインテークはさらに強く絞り込まれ、ボンネットはより低く、そしてテールフィンもさらに長く手直しが行われた。これらの作業によってBAT 7のCd値は0.19にまで向上している。

 BATシリーズの最終作となったBAT 9dは、アルファロメオから、より実用的なロードユースを目指すことを指示されたコンセプトカーだった。テールフィンは小型化され、リヤホイールスカートも廃止。フロントグリルにはアルファロメオのエンブレムを掲げたグリルが備わるようになった。

 主要なメカニズムはこれまでのBAT 5やBAT 7と同様にアルファロメオ1900。トリノショーの会場で、あるいは世界各国のメディアを通じて、その量産化を期待して熱い視線が集まったのは、言うまでもないところだ。

 発表後、BATシリーズはそれぞれに異なるカスタマーへと売却されることになるが、それだけにひとつだけ叶わなかった夢があった。それは3台のBATを一堂に展示する機会を設けることで、その意義の大きさに気づいた個人コレクターが当時のオーナーへと連絡し、この3台を購入。1990年代前半にヨーロッパのいくつかのイベントでその夢が実現したほか、ペブルビーチ・コンクール・デレガンスやヴィラ・デステ・コンコルソ・デレガンツァなど、世界的なモーターイベントにも姿を現すようになった。

 その後、3台のBATシリーズは、2020年10月に開催されたRMサザビーズ社の「コンテンポラリー・アート・イブニング・オークション」に3台セットで出品され、じつに148万4000ドル(当時のレートで約15億5820万円)という、戦後のアルファロメオとしては史上最高額となる価格で落札された。

 はたして次に我々が3台のBATシリーズを一堂に目にできるのはいつになるのか。いまはその日が訪れることを楽しみに待ちたい。

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