コンコルソ・デレガンツァ・ジャパンは世界のコンクールに比類する「美の祭典」
680年、天武天皇は妻(後の持統天皇)の病気平癒を祈って薬師寺を発願する。ところが完成を待たずして当の天皇が先に崩御された。薬師寺は即位した持統天皇が亡き夫の遺志を継ぎ飛鳥の新京、藤原京近くに造営、697年には本尊薬師如来の開眼が行われる。そして710年、元明天皇の時代には藤原京が平城京へと遷都、薬師寺もまた現在の地、右京六条二坊へと遷ることになった。以来、戦火や地震をくぐり抜け、当時の姿をとどめる東塔を筆頭に、当時の様子をほとんど復興した伽藍は古都奈良を象徴する風景として、また今日まで続く祈りの場として日本人の心の拠り所となってきた。
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そんな薬師寺の白鳳伽藍へ、17時の閉門と同時に多くの名車たちが入ってくる。戦前のレーシングカーから最新のハイパーカーまで、まさに自動車史の「走る絵巻」が繰り広げられた。圧巻は降り降りしきる雨の中、大講堂と食堂の間に敷かれた巨大なランウェイ(レッドカーペット)を10のクラスに分けられた60台の名車たちがオーナーのドライブで走り抜けるシーンだった。ともに人類の歩みながら途方もなく大きな歴史に小さな、けれども偉大な歴史が交差する。1300年にも及ぶ薬師寺の歴史始まって以来の快挙であった。
コンコルソ・デレガンツァ・ジャパンは東京に始まって、パンデミック前までは同じく世界遺産の京都二条城で開催されてきた。縁あって今年はその場所を薬師寺に移したが、京都の変遷を遡るような開催地選びが面白い。これもまた歴史の妙というものだろう。
10のクラスで「美」を競う名車の祭典。ベスト・オブ・ショーは「ランチア・ストラトスHFゼロ」
イベントは2025年3月15/16日の2日間にわたって催された。信仰の場である寺院ゆえ、参拝者の多い日中に境内を完全に貸し切っての開催は難しい。そこで日中は玄奘三蔵院伽藍のある寺務所周辺の美しいスペースに名車たちをクラスごとに並べて誰もが自由に見学できるようにし、閉門時間後に白鳳伽藍へと参加車両が移動するという手の込んだ趣向となった。主催者の苦労がしのばれる。
クラス分けとともに主だったモデル(クラスウィナー)を紹介しておこう。クラス1はプリウォー(戦前)のオープンクラスで、1940年式のアストンマーティンCタイプがウィナーとなった。クラス2は同じくプリウォーのクローズドクラス。ウィナーは1934年式ジャガーSS1ライトサルーン。ここからは戦後(ポストウォー)でクラス3はコンペティション(レーシングカー)、ウィナーは1967年式アバルトOT1300Sr2ペリスコピオ、クラス4はエレガントクラスAで1951年式マセラティA6Gヴィニャーレ、クラス5はエレガントクラスBで1965年式マセラティ・ミストラルスパイダーと、クラシックカーコンテストの常連が揃う。
クラシックカーのイベントというと以前はどうしても1960年代以前のモデルが中心となりがちだった。けれども歴史はどんどん積み重ねられている。1970年代でもいまや半世紀前のクルマだ。そういう意味では比較的新しいモデルも評価の対象に入れていくというコンコルソ・デレガンツァ・ジャパンの方向性は、世界のコンクールと同じである。
クラス6は20世紀のスーパーカー、ウィナーは1974年式フェラーリ365GT4BB、スペシャルエディションクラスのクラス7では1970年式のランチア・ストラトスHFゼロが受賞。スーパーカー世代にはたまらないセレクトだ。クラス8のポルシェミュージアムクラス(1956年式ポルシェ356 1500GSカレラ)とクラス9のザガート・クラス(1958年式フィアットアバルト750ビアルベーロ・レコルト・モンツァ・ザガート)で、いったんいつものクラシックカーイベント的になるが、クラス10はなんと21世紀のスーパーカー! 2024年式のフェラーリデイトナSP3がクラスウィナーとなった。
審査は世界各国で活躍する専門家たちで構成するジャッジチーム(元F1ドライバー、ティエリー・ブーツェンの姿も!)が行う。日本からは中村史郎氏や奧山清行氏らが加わっていた。彼らがこのイベントで最もエレガントで美しいモデル、ベスト・オブ・ショーとして選出したのは、米国から参加したランチア・ストラトスHFゼロだった。
鬼才マルチェロ・ガンディーニがベルトーネ時代にデザインしたコンセプトカーで、ストラトスというよりものちのカウンタックに大きな影響を与えている。ランチア・フルビアのメカニカルコンポーネンツを使っており自走可能。乗り降りは前面ドアで行う。フロントウィンドウドアを開けると連動してステアリングが上がり、出入りもしやすくなるという仕掛けだ。ドアを開けたまま、まるでトラックのように上を向いたハンドルを器用に回しながら短い距離を移動する様子が衝撃的だった。
「過去のモダンを守り、未来のヴィンテージを育てよう」。審査員の一人がランウェイを走り出そうとする21世紀のスーパーカーの紹介でそう発言した。その言葉が、伝統を守りながらいまも祈り続け、未来に希望を託しつつ1300年もの歴史を重ねてきた薬師寺の姿と見事に共鳴する。だが、言うは易く行うは難し。その実践のためには世の中が「平和」でなければならない。奈良時代からいまなお残る東塔以外は大火や内乱で消失し、再建されたものであることを私たちは決して忘れてはならない。
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