通学の危機
米国では、スクールバスは最も一般的な通学手段である。児童や生徒を安全に通学させる重要なシステムであり、また、公共交通機関がなく、自家用車での移動が必要な郊外では、通学の手段として不可欠なものとなっている。
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しかし、ここ数年、米国国内では深刻な
「スクールバスドライバー不足」
が報告されている。
スクールバスのドライバーを確保できない学校や地域では、隣接地域のドライバーなどに依頼し、かけもちで複数の校区をまわってもらっているところもある。結果として、生徒が登校時間に遅れてしまったり、 帰宅時も長時間のバス待ちで貴重な学習時間や余暇時間を削られたりしている。
「権利」に厳しい米国で、これは児童や生徒の
「教育を受ける権利」
を侵害するものであり、由々しき事態が発生しているといえる。教師や保護者が、ドライバーとして協力することを余儀なくされているケースもあり、教育現場はもちろん、住民の日常生活にも影響を与える深刻な問題となっている。
そんななか、中西部のウィスコンシン州でこの危機的状況に一石を投じるユニークな試みが成功している。なんと、子育て真っただ中の母親たちが、バスドライバーとして起用され、乗務しているというのだ。
米国の子育てお母さんたちは、どのようにしてバスドライバーとして仕事をしているのだろうか。
スクールバスドライバーの不足原因
そもそも、なぜ米国ではスクールバスドライバーが不足しているのか。理由はやはり、
・賃金の低さ
・労働条件の悪さ
である。2022年5月の「米国労働省労働統計局」のリポートによると、軽配送ドライバーの平均時給が21.65ドルであるのに対し、スクールバスドライバーの平均時給は
「20.39ドル(日本円で3070円)」
だ。さらに、軽配送ドライバーのなかには、地域によっては40ドル以上の高時給を得ているドライバーもいるのに対し、スクールバスドライバーの時給は、高くても30ドルに届くことはない。
時給のみの比較では見えにくいが、スクールバスドライバーは、
「朝夕の送迎」
という限られた時間帯のみが労働契約となることが多く、就業時間が短いことから、生活を支えるまでの給与額を稼ぐに至らないという難点もある。
さらに、スクールバスドライバーは、乗務前後の点検、清掃や給油などのメンテナンス、子どもたちの忘れ物のケアなどに、意外と多くの時間を割かれる。そして、そういった雑用を契約時間外に対応せざるを得ないというのが実情だ。
このような賃金の低さと労働条件の悪さに起因するドライバー不足は、コロナ禍でさらなる悪化の一途をたどっている。
ロックダウンで学校も閉鎖されていた時期、スクールバスの出番は当然ながら激減した。そして、そもそもスクールバスドライバーは年齢層が高く、健康上の懸念から、対人のドライバー業から引退するドライバーが相次いだのだ。
しかも同時期、外出を控えるようになった人々のオンラインショッピング利用が激増。結果的に、配送ドライバーの需要が増加するという現象が起こっている。配送ドライバーの給与が必然的に上がると、スクールバスを運転していたコマーシャルドライバー(職業運転免許所有者)たちは、こぞって配送業界へと流れてしまったわけだ。
子ども同伴の柔軟労働
そんななか、バスドライバーの確保に見事に成功しているのが、前述のウィスコンシン州の例である。
ウィスコンシン州のカウカウナという街で、子育て真っ最中の母親たちがスクールバスのドライバーとして活躍しているというのだ。彼女らの活動は、地元のみならず全国的にも注目され、
「ママ・アーミー(お母さん軍団)」
とまで呼ばれて、その活動が州内に広がっている。小さな子どもを抱えた彼女らは、一体どのようにバスドライバーとしての仕事をこなしているのだろうか。
答えは至ってシンプルだ。
乗務するバスに自分の子どもを同乗させているのだ。つまり
「子連れ勤務を許されている」
ということだ。乳幼児を育てている最中の母親にとって、仕事をするハードルは高い。そんな彼女らにとって、子ども同伴で、すぐ目の届くところに子どもを置いて働ける環境は願ってもないものだ。
スクールバスドライバー不足に悩む地域社会にとっても、ドライバーを確保できることは願ったりかなったりの状況なので、固定概念にとらわれない柔軟な発想から生まれたこの活動は、まさに双方に
「ウィンウィンの関係」
を構築している。
地域と共に育む子育て
母親たちの乳幼児を同乗させてのドライバー勤務は、さまざまなメリットを生んでいる。
・ドライバー不足の解消
・子育て中の親への就業機会提供
というふたつの大きなメリットはもちろんだが、実際に従事しているドライバーからは、母親として「助かる」ことがあるのだそうだ。
子育て経験者ならわかる人もいると思うが、ぐずる赤ん坊は車に乗せてドライブすると泣きやむことがある。車でのドライブは、赤ん坊にとって決して相性の悪くない環境なのだ。
また、ほかにも意外なメリットも報告されている。それは、
「子どもたちの交流」
という社会性を育む面での効果だ。あるお母さんドライバーが、インタビューに答えていたが、彼女の子どもには、明らかに「出勤」を楽しみにしているような反応が見られるそうだ。バスに乗り込んでくる「お兄さん、お姉さんたち」に会えるのを楽しみにしているようで、積極的に「乗務」したがるという。
「お兄さん、お姉さんたち」側である児童や生徒たちにも変化が表れている。彼らにもまた、バスに常駐している小さな「乗務員」にあいさつし、声掛けをしたり、あやしたり、そういった行動が自然に出てきているという。
インターネット社会に生きる現代の子どもたちは、学校や家庭以外で他者とコミュニケーションをとる機会が少なくなりがちだ。このような交流から生まれるコミュニケーションは、地域の子どもたちにとって、社会性を育てるという面でのよい相乗効果となり、
「地域でともに子育てをする」
という地域社会の理想形がそこに見えてくるのだ。このウィスコンシンの「お母さん軍団」の活動は、ドライバー不足という暗くどんよりした現象を、柔軟かつユニークな発想で地域社会に光を投げかける形へと変えた。
このように固定概念にとらわれない発想の柔軟さをもつことが、就労問題を含めるさまざまな社会問題を解決へと導くヒントを含んでいるのではないだろうか。
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みんなのコメント
・何事も否定から入り、できない言い訳を考えることに必死になる
外国は、何をすべきか、どうすればできるかを考える
この差は、近年どんどん大きくなっている気がする・・・
点検は業者に任せるとかして。
アメリカだとスクールバス止まっている時追い越し禁止とかになるルールあるから
日本もそのようなルール作って良いと思う。