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もはや単なる“飲み物置き”じゃない! 「ドリンクホルダー」がここまで急進化した根本理由

掲載 更新 24
もはや単なる“飲み物置き”じゃない! 「ドリンクホルダー」がここまで急進化した根本理由

歴史と進化

 車内で飲み物を楽しむ際に欠かせないのがドリンクホルダーだ。一見すると単純な装備に思えるかもしれないが、その歴史をたどると、時代の変化やドライバーのニーズを捉えながら、驚くほどの進化と多様化を遂げてきたことがわかる。

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 ドリンクホルダーの起源は1950年代の米国にある。ドライブインレストランやドライブインシアターが広まり、車内で飲み物を楽しむ文化が生まれたことがきっかけだ。最初は、ダッシュボードやグローブボックスに浅いくぼみをつくる程度だった。その後、専用設計の後付けホルダーが登場し、1980年代には自動車メーカーによる標準装備へと進化する。とくに米国市場では大きな支持を得て、他メーカーにも広がった。1990年代には、世界中の車に標準装備として定着した。

 日本での起源は1977(昭和52)年。カーメイト社が後付けドリンクホルダー「ZAX14」を販売したのが始まりとされている。当時、急速に広がっていた自動販売機文化と相まって、この製品はヒットした。多くのドライバーに支持された。

 近年では、ドリンクホルダーはさらに進化している。より使いやすく、便利な機能を備えるようになった。本稿では、自動車のドリンクホルダーがここまで多様化し、進化を続ける背景と、未来に向けた可能性を探っていく。

革命をもたらした「A/Cホルダー」

 自動車におけるドリンクホルダーの進化は、「車内でより快適に過ごしたい」というユーザーの潜在的なニーズを掘り起こすことから始まった。その象徴が、星光産業が1990(平成2)年に発売した「A/Cホルダー」である。

 この製品は、エアコンの送風口を使って飲み物を保冷・保温できるという画期的なアイデアだった。夏や冬の快適性を高める点が評価され、多くのドライバーから支持を集めた。後付け市場だけでなく、純正装備への影響も大きかった。

 A/Cホルダーの成功は、単に飲み物を安定して置けるという機能にとどまらない。ドライバーが

「飲み物を適温で楽しみたい」

と感じていたことに応えた点が大きい。これまで見過ごされがちだった欲求に応えたことで、ドリンクホルダーは収納ではなく、快適性を支える重要な装備として認識されるようになった。

 A/Cホルダーの登場は、後付けドリンクホルダー市場を活性化させた。それだけでなく、車内快適性への関心を自動車メーカーにも広げる契機となり、現代の多様なドリンクホルダーへとつながっていった。

容器の変化が促す進化

 ドリンクホルダーの進化を語るには、飲料容器のトレンド変化を無視できない。時代と共に主流の飲み物やその容器が変われば、車内でそれらを安定させるホルダーも変化を求められるのは自然なことである。ドリンクホルダーは、まさに時代の変化を映す鏡のような存在だ。

 1990年代半ば、缶コーヒーや缶ジュースが主流だった時代から、500mlの紙パック飲料が普及し始めた。これに対応して、四角い形状のドリンクホルダーが登場した。さらに1990年代後半、ペットボトル飲料が急速に普及。これに対応するため、円筒形で深さのあるドリンクホルダーが登場した。

 全国清涼飲料連合会のデータによると、2022年には清涼飲料の生産量に占めるペットボトル容器の割合は75.4%に達した。これにより、ペットボトル対応型ドリンクホルダーの重要性が裏付けられた。

 2010年代に入ると、新たなトレンドが現れた。コンビニが淹れたてのコーヒーを提供し、これが大ヒット。手軽に本格的なコーヒーが楽しめるようになり、ドライブ中にコンビニコーヒーを飲む習慣が広がった。しかし、コンビニコーヒーのカップは、従来のペットボトルや缶と異なり、サイズや形状、重心の高さが違った。そのため、既存のホルダーでは不安定になることがあった。

 この問題を解決するため、2014(平成26)年頃にはコンビニコーヒーのカップに最適化された形状や、サイズ調整が可能なアジャスター機能を備えたドリンクホルダーが登場した。こうした容器トレンドへの対応は、現代のドリンクホルダー市場にも影響を与えている。

多様化する現代と今後の展望

 ドリンクホルダーは、今や形状、機能、デザインにおいて多様化している。従来のシンプルなカップホルダーに加え、スマートフォンや小物を収納できる大容量のバッグタイプやコンソールタイプが登場した。さらに、スマートフォンの充電機能を備えたものや、エアコン送風口、ドアポケット、シートの隙間などのデッドスペースを活用する取り付け方法も増えている。

 素材にも変化が見られ、プラスチックだけでなく、高級感を演出する金属調や木目調、静粛性を高めるシリコン製などが採用されている。デザイン性と機能性が両立し、飲み物がこぼれにくい構造や、手入れが簡単な耐水性素材も一般的になった。ユーザーの細かなニーズに応える製品が増えている。

 ドリンクホルダーの進化と需要の高まりを受け、市場は世界的に拡大している。市場調査会社・グローバルインフォメーションの調査によると、2021年から2027年にかけて自動車用ドリンクホルダーの世界市場は年間平均成長率5.2%で拡大し、2027年には33億ドル(約4600億円)規模に達すると予測されている。この成長には、

・自動車保有台数の増加
・高級車需要の拡大
・通勤時間の延長による車内飲食機会の増加

が影響している。

 今後、ドリンクホルダーはさらに技術革新が進み、その役割は拡大するだろう。現在、一部の高級車には冷却・保温機能が搭載されているが、これがより高性能化し、長時間にわたり飲み物の温度を最適に保つようになるかもしれない。

 スマートフォンアプリと連携した温度調節機能も考えられる。さらに、ワイヤレス充電機能や、センサー技術を活用して飲み物の残量を知らせたり、ドライバーの眠気を検知して注意を促したりする先進的な機能を備えたホルダーが登場する可能性もある。

 ドリンクホルダーはもはや単なる付属品ではない。カーライフの質を向上させる重要なインターフェースとして、今後もドライブ体験と共に進化を続けるだろう。

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みんなのコメント

24件
  • ko2********
    そして運転は『ついで』の行為になった
  • bek********
    でだした頃のドリンクホルダーはドアのウインドウに挟み込むタイプだったのですが、飲みかけの缶ジュースを入れたままうっかりドアを開け閉めしたら、えらい事になったものです。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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