ブリヂストンの新スタッドレス登場
執筆:Shinichi Katsura(桂伸一)
【画像】ドライとスノーで試すブリザックVRX3【北海道テスト】 全38枚
撮影:Yoshihisa Miyazawa(宮澤佳久)、ブリヂストン
4年ぶりに生まれ変わったブリヂストンの新作スタッドレスは「ブリザックVRX3」。
2017年誕生の従来型ブリザックVRX2から、氷上性能を20%、摩耗性能は17%と向上させたその技術は、およそ2世代=“8年分の進化”と言われる。
さらにスタッドレスとしての“効き味の持続性”でも進化したという。
日本列島、寒波襲来で降雪地域は大雪に見舞われ、非降雪地域でも雪が舞う。
こうなって慌てるのは非降雪地域のユーザー。ここ数年、スタッドレスに交換していながらドライの舗装路しか走らない状況が続き、冬タイヤへの交換を遅らせる傾向にあるからだ。
VRX3最大の効果は氷上性能の進化で、とくに氷上ブレーキの20%向上は、VRX2と比較して、クルマおよそ半車身分も手前で停止できる。……ということは、以前アイススケートリンクを使ったテストで体感した。
もちろん一般公道にあれほど定盤のような平坦な路面はない。が、コンディションが一定しているため、路面を噛んで氷着するVRX3の性能と、VRX2からの進化度合が明確に体験できた。
旋回に関しても、VRX3はVRX2より小さな円旋回が描ける。
ステアリング操作に忠実に曲がることを意味していて、横方向に対するグリップ感も手応えがある。ただこれは、あくまでも定量的に比較できるアイススケートリンクでの話だった。
その本質を確認するため、2021年12月北海道千歳に飛ぶ。
ドライ路面は、マイルドかつシッカリ
前夜、移動で乗ったタクシーの運転手氏と話す機会があった。
北海道も「(その時点では)雪がまったく降っていない」とか、「ブリザックは信頼がおける」というナマの声を聞く。
さらにタクシーは走行距離が延びるため、耐摩耗性・効き持ちが重要であると繰り返していた。
そしてテスト当日。北海道は、寒波襲来のまさに“前日”だった。
つまり一般公道の路面は完璧にドライ。それは非降雪地域の者にはドライでのハンドリングと摩耗を確認できるチャンスである。
現地のクルマの流れに乗り、国道と農道をコーナー毎に早いステアリング操作で駆け抜ける。
まずVWポロは、FWDだけに駆動力と曲がる・止まる能力の基本的な部分が前輪に大きくのしかかる。
FWDのポロとクワトロのアウディA4
タイヤのトレッド面が柔らかいのは、路面の突起凹凸の乗り越えで衝撃がマイルドなことからもわかる。
にも関わらず、前輪駆動のポロでも高い速度での直進は、ニュートラルがしっかりと手応えとして感じられる。そこからステア操作した際も、応答性に遅れ・捻れ感・たわみがない。
そこだけを見るとコンフォート系サマータイヤのようである。
車重がより重く、クワトロ4WDであるアウディA4に乗り変えた。
こちらも確かな直進性を示す。早めのステア操作をしても、ひと呼吸おいて追従。舵角に素直に応答するといった特性に落ちつく。
乗り味が滑らかなことは、アウディA4の重厚感と重なり、いい味を出していた。
四駆で検証 イメージは冬の交差点
公道を後にして向かった氷雪道のテストコースは、運ばれてきた雪と降雪機の働きによって、それなりの雪景色。
直線路は、アスファルト、氷路、雪路が入り交じる複雑なコンディションだ。
それが良かった。というのは、降雪地域の交差点で、晴天の日に見られる路面状況に合致するからだ。
「K」から「E」まで、つまり「軽カー」から「メルセデス・ベンツEクラス」まですべて4WDで揃えた試乗車は、どれもゼロスタートからアクセルベタ踏みでも4輪が路面を確かに蹴って加速する。
凹凸や深い轍、ブラックアイスも転在する路面はボディを大きく揺さぶる。
轍を越えてクルマをコントロール
「軽カー」はさすがに路面からの外乱に左右されるが、そこは車体の軽さとタイヤの穏やかで安定した操縦特性。急な姿勢変化は抑えられている。
軽カーに限らないことだが、交差点にできた深い轍でのブレーキ操作は不安定な動きにつながる。それが急制動でABSを作動させても、路面を噛むように停止する安定感があった。
その轍のなかから壁を乗り越えての車線変更・右左折、また、その壁に乗る時の接地性の変化がいい意味で鈍い。
壁をズルッと踏み外したときの挙動は、ドライバーも乗員もドギマギするものだが、そうした急な変化を抑えている点も評価したい。
これらの場面でVRX3の穏やかで粘る、懐の広いグリップ感は安定感とともに安心を与えてくれるのだ。
その特性は、トレッドパターンのアップデートと、ミクロの水膜を吹き上げ徐水する発砲ゴムが進化したことによる。
発砲ゴムの気泡形状が、従来までの丸から楕円になり、気泡の体積がアップしたという。
VRX3の発泡ゴム その印象は?
楕円の気泡はより多くの水を吸い上げ、ミクロの水膜を除水。トレッド面を路面に密着させてグリップを高める。
吸い上げられた水は、タイヤが回転することで気泡から飛ばされる。そのままひと回りして、また同じトレッド面が徐水しつつ氷雪路面を捕えるという流れを繰り返す。
凹凸と轍が続くテストコースは、雪が氷になり、それが溶けてはまた凍る市街地の交差点に似ていた。
轍を縦に斜めに通過しながら曲がる操作を、VRX3は素直に、そして正確に受け入れてコーナーを進んでいく。
かつてスケートリンクで体験したVRX2よりも小さく旋回する前輪の“効き”が、リアルな路面でも驚くほど再現されていた。
今回は新雪や圧雪での確認はできなかったが、より厳しい凍った路面での確かな操縦性・安定性は、ドライバーと乗員の強い味方になってくれると確信した。
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みんなのコメント
ドライ/ウエット路では、サマータイヤと大きな変化なく、スタッドレスタイヤ特有のよじれる感覚はありません。きれいに曲がりきれいに止まります。燃費低下は6~8%といったところでしょうか。唯一気になったのは、走行中の高周波共鳴音です。1輪からだけして、最初はブレーキの故障かと思ったのですが、問題なく、路面の状態によって聞こえないこともあります。
溶けかかった雪坂道でも、いくらかの空転はありましたが、登り切ることもできました。(以前履いていたDSX2では無理でした。)
表面が溶けたアイスバーンにも遭遇しました。停止状態からの発進で、結構な空転があり「ヤバイ」と思いましたが、実際は1秒もかからずにトラクションが掛かり、後続車への迷惑も最小限に済んだと思います。
お勧めです。