7月12~14日、ブラジル・サンパウロのアウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェ(インテルラゴス)で開催されるWEC世界耐久選手権第5戦『サンパウロ6時間レース』。シーズン最大のイベントである第4戦ル・マンから4週間というインターバルで、戦いの舞台は南米へと移ることになる。
各車が金曜の走行開始に向けて準備を進めた木曜のインテルラゴスのパドックから、各種トピックスをお届けする。
復帰するトヨタのコンウェイ、レーシングカーの運転は“未知数”。「まだあちこちに痛みがある」
■コースを知る者のアドバンテージをブエミが語る
WEC世界耐久選手権の開幕3ラウンドと同様に、今週末の第5戦サンパウロ6時間レースには、合計37台の車両がグリッドに並ぶ予定で、そのうち19台はハイパーカークラスのエントリーとなっている。
インテルラゴスのアウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェでWECのイベントが開催されるのは、今週末が4回目。じつに10年ぶりの開催となる。当初は、2019/20シーズンのカレンダーに含まれていたものの、サーキット・オブ・ジ・アメリカズに取って代わられていた。
今年グリッドに並ぶドライバーのうち、2014年のサンパウロ6時間レースに出場していたのはわずか14人。セバスチャン・ブエミ、マイク・コンウェイ、ブレンドン・ハートレー、フレデリック・マコウィッキ、アンドレ・ロッテラー、ジェームズ・カラド、アレッサンドロ・ピエール・グイディ、ロイック・デュバル、マシュー・バキシビエール、ニール・ジャニ、ダビデ・リゴン、クラウス・バッハラー、リヒャルト・リエツ、そして土壇場で参戦が決まったクリスチャン・リードだ。
さらに、小林可夢偉とジャン・カール・べルネイはともに2013年大会に出場した経験がある。また、ニコラ・ラピエールは2012年の初開催時に出場し、トヨタTS030ハイブリッドでアレクサンダー・ブルツとともに総合優勝を果たしている。
トヨタのドライバー、ブエミは、たとえ10年前のものであったとしても、インテルラゴスのレイアウトでの過去の経験が、プラクティスでスピードを上げるうえで役立つと考えている。
「コースを知っていることは、最後にいつコースを走ったかに関係なく、常に有利だ。フリープラクティス1では、どこを走ればいいか分かっているので、少し楽になるね」
彼はさらにこう付け加えた。
「奇妙なことに、(第2戦の地)イモラはトロロッソのシェイクダウン(F1)以外、一度も行ったことがなかった。レースもしたことがなかったんだ。シミュレーションはしたが、最初のセッションは大変だった。だから、コースを知っているだけで何となく役に立つものなんだ」
■ハートレーのジンクス
トヨタとポルシェは、2012年と2014年にサンパウロでそれぞれ初のWEC優勝を果たしている。2013年のレースでは、アウディが優勝を飾っていた。
WECは今週末、90回目のレースをブラジルで迎える。興味深いことに、トヨタのドライバー、ハートレーは、シリーズの30、40、60、80回目のレースで優勝を飾っている。
なお、今週末グリッドに並ぶブラジル人ドライバーは2名のみ。どちらもLMGT3クラスで、アウグスト・ファーフス(チームWRTの31号車BMW M4 GT3)とニコラス・コスタ(ユナイテッド・オートスポーツの59号車マクラーレン720S GT3 EVO)のふたりだ。
ファーフスが最後にインテルラゴスでレースをしたのは2022年のストックカー・ブラジルで、コスタは今年4月にTCRブラジルでレースをしている。
■キャデラックの優位性
キャデラックVシリーズ.R(キャデラック・レーシング)のアール・バンバーは、アレックス・リンとの2号車の2ドライバー・ラインアップが有利になると考えている。「全員のクルマがどうなるか、誰も確かな見通しを持っていないと思う」とバンバーは語った。
「本当に白紙の状態だ。プラクティス(の時間)は限られており、全員がトラックを習得しなければならないため、2ドライバー戦略は僕らにとって有利に働くと思う」
■「僕らは誰よりも経験豊富」と可夢偉
可夢偉は、トヨタがこの南米のサーキットでの過去の経験を活かし、ハイパーカーのライバルたちに対して優位に立つことを期待している。
「多くの人にとって、そして多くのチームにとって、これは新しいコースですが、僕らは誰よりも経験豊富です」と彼はSportscar365に語った。
「このコースに僕らのクルマはよく合うと思いますが、チャンピオンシップでできるだけ多くのポイントを獲得する必要があります。僕らはまだタイトル争いに加わっていますが、ポルシェとフェラーリは強いでしょう」
■12号車は引き続き「レンタル中」
ハーツ・チーム・JOTAの12号車ポルシェ963は、ル・マン24時間レースのプラクティス中にカラム・アイロットが事故に遭った後、クルマの再構築に使用されたのと同じポルシェからの「貸し出し」シャシーで参戦する。チームの共同オーナーであるサム・ヒグネットは、Sportscar365に次のように語った。
「これは貸し出し車だが、現実的には、フライアウェイ(レース)中にシャシーを交換するのは非常に困難だ」
ヒグネットは、チームとつながりのあるプライベーターのコレクターが所有するこのクルマは、最終的には修理済みのオリジナルのシャシーに再装着される予定であり、タイミングとポルシェが貸し出し車を走らせるのをどれだけ長く許可するかに応じて、「将来」再び走行する予定であることを確認した。
■ブラジルの著名人、すでに来場
木曜日、ブラジルのレース界の著名人数名がインテルラゴスのパドックに現れた。その中には、F1世界チャンピオンのエマーソン・フィッティパルディ、甥のクリスチャン、ルーベンス・バリチェロ、ネルソン・ピケ・ジュニアもいた。
■LMGT3のタイヤ使用可能本数が増加
グッドイヤーは「インテルラゴスはLMGT3にとってチャンピオンシップの新しいコースであり、摩耗や性能低下に関する不確実性があるため」、通常のタイヤ割り当てを増やすよう要請し、これが受け入れられた。
これにより、LMGT3チームは、通常の18本ではなく、予選とレースで22本のタイヤを利用できるようになる。
グッドイヤーは、サンパウロ6時間レースの開催に先立ち、マンタイEMAポルシェのドライバー、モリス・シューリングがル・マン24時間レースで最速のLMGT3ダブルスティントを成し遂げ、『ウイングフット・アワード』を受賞したと発表した。
ル・マンでのみ設けられたLMP2クラスでは、IDECスポーツのドライバー、レシャド・デ・ジェルスが同じアワードを受賞している。
■旅のトラブル
サンパウロに向かう途中、プジョーチームのメンバーを含む多くのチームが、旅のドラマに見舞われた。彼らはフライトのキャンセルによりロンドンで1日足止めを食らった。
一方、フェラーリのスタッフ数名とBMW MチームWRTのラファエレ・マルチェッロは、離陸時にテールストライク(飛行機の後端部が地面に接触すること)に見舞われたため、彼らの乗った飛行機はミラノへと引き返して緊急着陸しなければならなかった。
また、アンソニー・デビッドソンは病気のためブラジルに渡航できなかったとみられており、そのため通常グラハム・グッドウィン、マーティン・ヘイブンとともに務めるWEC公式放送の解説役を務めることはできない模様だ。
走行初日となる12日金曜日は、2回のフリープラクティスが行われる予定だ。
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