ついにEU(欧州連合)からの脱退を実行したイギリスから、またまた刺激的なニュースが飛び込んできたのは2020年2月4日。ボリス・ジョンソン首相が、これまでの計画を前倒しにして「2035年にハイブリッドを含むエンジン車(乗用車)の販売を禁止する最初の国になる」と宣言したのです。2035年というと遠い未来のようにも感じるかもしれませんが、2020年からすると15年後であって、すぐ先の話ともいえます。本当に、エンジン車の販売を禁止するようなことはできるのでしょうか。また、イギリス国内ではどのように捉えられているのでしょうか。
このインパクトのある発言のあった翌日2月5日に開催されたイギリス議会(下院)における運輸関連の質疑についての議事録を読むと、そこにはゼロエミッションに向ける強い意志と、気候変動だけでなく大気汚染対策として内燃機関の撤廃を狙う議員たちが意見を戦わせている様子が見て取れるのでした。これまでモビリティを支えてきたエンジン車は悪者になってしまった印象です。
また、ゼロエミッションビークルといえば電気自動車が中心になると考えがちですが、議論を読み込んでいくと「EVシフトをすると中国に頼らざるを得ない」ので、政治的な不安もあるといった意見も見られます。そのためイギリス政府がイニシアティブをとれるよう水素燃料電池に注力すべきという意見もあるようです。思えば、イギリスを構成するひとつであるスコットランドは水素関連の社会実験に積極的な地域です。そうしたノウハウを全土に展開することを考えているのかもしれません。
そしてエンジンを否定する対象はクルマだけではなく、航空機もその対象として考えていくべきだという視点も持っているようです。電動航空機が技術的に難しいということは理解しているようですし、バイオ燃料は自然破壊につながる部分があることも承知しているようですが、問題意識を持っていることは間違いありません。
さて、乗用車のゼロエミッション化というのは、現在使われているクルマをEVやFCVに置き換えるという意味だけではないようです。ここでの議論を見ていくと、バスネットワークを再整備することなどにより公共交通機関を充実させて移動手段の主役と位置付けることも議論されています。あわせて列車の電動化を進めることも挙げられていますし、自動車の利用が減ることで交通事故の低減にもつながるといった内容が議論されています。
多くの議員が発言している長い議事録ですが、その最後はCO2低減についての政策を担当する、ジョージ・フリーマン運輸大臣の発言で締められています。そこで注目したいのは「運輸省の研究戦略として、優先順位の高いほうから水素、バイオ燃料、電気飛行機を検討している」ということです。さらに「電気自動車の充電に4億ポンド(約565億円)、水素に4億ポンドの予算を与えている」とも発言しています。政治家の言葉をそのまま鵜呑みにすることはできませんが、イギリスの脱エンジンのカギを握るテクノロジーとして水素燃料電池を重視していることがうかがえます。すでに他国が主導権を握っている電気ではなく、水素社会の新しいルールを作ることで、イギリスはリーダーシップを発揮することはできるのでしょうか。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
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