歴代のアストンで最高の操縦性を実現
当時の欧州フォードから移籍した、ウォルター・ヘイズ氏が進めたアストン マーティンDB7は成功。その後を継いだウルリッヒ・ベズ氏は、最先端の技術力を披露することがブランドにとって重要だと考えた。
【画像】当時の世界最高GT アストン マーティン V12ヴァンキッシュ 現行型とDB12、ヴァンテージも 全124枚
それを体現したモデルが、2001年に発売された初代V12ヴァンキッシュ。カーボンファイバーとアルミニウムを適材適所で用いた基礎骨格を、アルミ製ボディでカバー。サスペンションのウイッシュボーンにも、軽量なアルミが用いられている。
エンジンは、当時のヴァンテージに採用されていたV型12気筒をアップデート。トレメック社製の6速セミATと、リミテッドスリップ・デフを組み合わせ、世界トップクラスのグランドツアラーが完成していた。
「歴代最高の操縦性を実現したアストン マーティンでしょう」。初試乗したAUTOCARは、その仕上がりへ熱くなった。「意欲的でありながら優雅。コンパクトでありつつ迫力は圧倒的です」。イアン・カラム氏が手がけたスタイリングも絶賛している。
1878kgと軽くない車重で、動的能力に制限はあったものの、乗り心地も素晴らしかった。ボディシェルは強固で、優れた操縦性も実現していた。
ただし、ジャガー由来だとわかるセンターコンソールに、多少の批判は向けられた。リアシートには、大人が座ることは難しかった。長距離のクルージングを得意としたが、少し気張ると5.0L V12の燃費は著しく悪化した。
サブフレームは錆びがち セミATは複雑
2004年に、V12ヴァンキッシュ Sが登場。新しいインジェクターがエンジンへ与えられ、ECUとシリンダーヘッドはアップデート。鍛造コンロッドが組み込まれ、466psから527psへパワーアップが図られた。
同時にサスペンションは引き締められ、車高は5mmダウン。トランスミッションのギア比はショートになり、フロントブレーキも増強され、運動能力を高めている。インテリアには、専用のスイッチ類などを採用。ジャガーとの一層の差別化も進められた。
そんなアストン マーティンのグランドツアラーは、今ならまだ高騰前。モダンクラシックとして、今後の価値上昇は想定できる。
試乗して、走りに落ち着きが乏しいと感じられる場合は、サスペンション・ブッシュやショックアブソーバーの交換を検討したい。車重が影響し、劣化しやすい。ECUは既に新品での入手はできないため、故障時はリビルドすることになる。
錆びがちなサブフレームや、複雑なセミATなど、V12ヴァンキッシュの維持には相当の手間とコストが掛かる。しかし、英国には献身的な専門ガレージが存在する。どんな問題が発生しても、優れた費用対効果で対策を提案してくれるはず。
オーナーの意見を聞いてみる
「2009年にアストン マーティンDB7へ興味を持ち、ディーラーへ見に行きました。でも、細かい部分で納得できなかったんです。ヴァンキッシュはひと目で気に入りました」。今回、車両協力していただいたスティーブ・ベリー氏が振り返る。
「シャシー番号は61。スウェード張りのザガート・インテリアなど、かつてアストン マーティンの会長だった、デビッド・リチャーズさんがコーディネートしたクルマです。1番のお気に入りとはいえませんが、毎日運転していて、走行距離は8万kmほど」
「とても乗りやすく、このブランドが作った初の本物の乗用車といえるかも。見た目も素晴らしい。イアン・カラムさんが描き出した、究極的スポーツカーだと思います」
「サブフレームとマフラーは新調しました。その際に、それらをすべて外す必要があるので、念のためクラッチも交換しています。10年間での整備費用は、3万ポンド(約585万円)くらい。それとテールパイプが数cm伸びたので、足も火傷しています(笑)」
英国で掘り出し物を発見
アストン マーティン V12ヴァンキッシュ(英国仕様)
登録:2003年式 走行:5万8900km 価格:4万9950ポンド(約974万円)
映画007「ダイ・アナザー・デイ」のボンドカーと同じ、タングステン・シルバーに塗られたV12ヴァンキッシュ。明るめのグレー・レザーのインテリアが、2+2の車内を明るい雰囲気にしている。
これまで2オーナーで、現在のオーナーは2008年から大切に維持してきたという。正規ディーラーでの整備記録がファイルに保管され、問題なく快調とのこと。純正のバッテリーコンディショナーも付属する。
アストン マーティン V12ヴァンキッシュ S(英国仕様)
登録:2005年式 走行:2万9200km 価格:11万5000ポンド(約2243万円)
MTへ換装されたV12ヴァンキッシュ S。ヘリテージモデルやクラシック部品を扱う英国のディーラー、アストン マーティン・ワークス社によって、2009年に作業されている。
ボディカラーはチタン・シルバーで、天井の内張りはキルティング仕上げ。走行距離はとても短く、3オーナー車だが新車のように美しい。整備履歴もしっかり残っている。販売店も、納車前にしっかり点検・整備するとのこと。
この続きは、アストン マーティン V12ヴァンキッシュ UK版中古車ガイド(2)にて。
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