自由とムダを楽しもう。大切なのは「余白」だと思う
今月号の特集を作っていて、確かに4シーターオープンモデルは数を潜めたと感じた。かつてはサーブ900カブリオレ、プジョー306カブリオレ、ボルボC70カブリオレ、さらにはVWゴルフ・カブリオなんかがラインアップされていた。メルセデスやBMW、アウディといったジャーマンスリーとは別に、だ。アメリカ勢にはシボレー・カマロ コンバーチブル、フォード・マスタング コンバーチブルがあった。どちらもスペシャルティカーという位置付けで4シーターのレイアウトだった。
【九島辰也のカーガイ探訪記】水冷→空冷→水冷がクシマ的911マイカー歴。次は電動か!?
共通していたのは、どれもエレガントだったこと。通常のモデルとは異なる独特の世界観を醸し出していた。それは単に屋根が開くというだけではなく、クラスを格上げする意味を持ち合わせていて、ブランドやモデルのステイタス向上にも役立っていた。地中海沿いの高級リゾートホテルの車寄せにゴルフが置いてあっても視線を引かないが、ゴルフ・カブリオだとシーンをグッと艶やかにする。そんな魔法を持っているのが4シーターオープンモデルなのだ。
思うに2シーターオープンとの違いはそこにある気がする。2シーターだとどうしてもその背景にスポーティでレーシーな走りが見え隠れする。つまり、スパイダーやロードスターには速く走るための必然性が含まれている。が、4シーターオープンにそれはない。リアシートという無駄なスペースに大人の余裕が溢れている。
そんなことを鑑みると、4シーターオープンモデルが少なくなっているのは少し世知辛い。現代は効率や合理性ばかり追い求められている時代のようだ。時流でいえば、とにかくSUVのラインアップを増やし、パワーソースに電動化を取り入れれば完了といったところだろう。
1990年代までのほうが、メーカーはもっと自由にクルマ作りをしていた。
これと同じことはピックアップトラックにも当てはまる。というのも、今回特集で取り上げたジープ・グラディエーターや三菱トライトン、トヨタ・ハイラックス、すべて4ドアのダブルキャブとなる。
つまり、リアシートがあって人が乗れたり、バッグなどを放り込めるスペースがあるということだ。もちろん、このほうがセキュリティが高くなるし、雨風をしのぐ点でも都合がいい。通常のセダンのように活用できる。
だが昔は違った。完全な2ドアのシングルキャブや少しだけシート後方にスペースのあるエクステンドキャブがあって、それとは別に4ドアのダブルキャブがあった。ユーザーはそれを自ら選ぶことができたのである。ちなみに、学生時代乗っていたダットサン720ロングのキャビンはエクステンドで、日産はそれを“キングキャブ”と呼んでいた。シートは3名掛けベンチシートという仕様だった。
よって、そのぶんだけベッドの実用性を高める工夫をしていた。テント素材でベッドを覆うカバーを作り、釣り用の耐水性ボックスを活用して荷物を運んでいた。それが楽しかったりする。
ということで、今回は令和のいま、レアなクルマを特集したが、やはり昭和のほうが自由だった気がする。まだマーケットが成熟していなかった分、メーカーがいろんなトライアルを重ねていた。
でもね、本当はクルマが時代に合わせるのではなく、クルマが時代を作るんだけどね。いつの時代も大切なのは“余白”だったりする。
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