8社の業績 6社が減益
2019年上半期の自動車市場は大きな混乱に見舞われた結果、2018年が堅調だったこともあり、いくつかの自動車メーカーでは予想に反して損失が発生している。
中国市場の減速もその要因のひとつだが、世界的な貿易戦争に対する懸念や、英国のEU離脱問題、さらにはディーゼルゲートや、ドイツにおける反トラスト法に基づく法的措置なども、こうした状況をもたらす原因となっている。
今回われわれが注目した8社のうち、BMW、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)、フォード、日産とPSAの5社は第2四半期、または半期での黒字を確保しているものの、8社のうち6社は減益決算であり、フォードやメルセデス、日産など、大幅な利益減少に見舞われたメーカーもあった。
なお、3月決算の日本メーカーでは、4月から6月の3カ月間がQ1と呼ばれる第1四半期であり、米国や欧州企業にとっての第2四半期と同じ期間を意味している。
別記事ではアストン マーティンの苦境もレポートしているが、今回はわれわれが選ぶ勝者と敗者をご紹介しよう。
テスラ
最終損益:3億3600万ポンド(431億円)の赤字(-43%)
売上高:44億4000万ポンド(5701億円)(+60%)
販売台数:9万5356台(+128%)
*それぞれ第2四半期の数値
モデル3の生産が順調に進んだことで、第2四半期は販売台数と売上高が順調に伸びるとともに、最終損益の赤字幅も縮小している。
モデル3の生産台数はこれまでの3倍となる7万2000台にまで達しており、営業損益の赤字幅も縮小したことで、テスラは正しい方向に進んでいるようだ。
しかし、9600万ポンド(123億円)に上るリストラ費用などの特殊要因によって、収益性を確保するまでには至っておらず、モデルSとモデルXの販売台数も落ち込んでいる。
BMW
最終損益:18億6000万ポンド(2388億円)の黒字(-28.4%)
売上高:234億ポンド(3兆48億円)(+2.9%)
販売台数:64万7504台(+1.5%)
*それぞれ第2四半期の数値
生産台数は史上最高を更新したものの、ディーゼルゲートに関連したEUの反トラスト法違反に伴うコストを計上したことで、最終損益は大幅に減少している。
さらに、激化する競争環境と新型モデルの投入に伴うコスト、さらにはますます増加する電動化と自動運転技術の開発費用も収益悪化の原因だとしている。
第2四半期にはそれなりの最終利益を計上しているものの、BMWでは「急減」したとしており、6.5%という営業利益率はPSAをも下回っている。
各ブランド別販売台数では、BMWで56万6000台(+2.7%)、ミニでは8万9000台(-5.8%)、ロールス・ロイスが1328台(+36%)となっており、多くの自動車メーカーが苦戦する中国市場でも、BMWグループ全体の販売台数は24%の伸びを記録している。
一方、欧州市場では依然苦しんでおり、販売台数は4%減となった。
PSA
最終損益:30億1000万円(3865億円)の黒字(+10.6%)
売上高:349億ポンド(4兆4816億円)(-0.7%)
販売台数:190万3000台(-12.8%)
※それぞれ2019年上半期の数値
2019年上半期に収益を伸ばしたPSAは自動車業界にとっての希望の星であり、世界での販売台数は減少したものの、新型モデルの投入や新たにグループに加わったオペル-ヴォクゾールの貢献が、その原動力となっている。
営業利益率は、高級ブランドでないことを考えれば異例とも言える8.7%に達しており、PSAによれば、オペル-ヴォクゾールとのプラットフォーム共通化によるコスト削減が大きく貢献したことで、中国市場における2億7500万ポンド(353億円)ものマイナス要因を相殺することが出来たと言う。
グループベストセラーの座は依然としてプジョー208のものだ。
ジャガー・ランドローバー
最終損益:3億9500万ポンド(507億円)の赤字(+49%)
売上高:50億7000万ポンド(6510億円)(-2.8%)
販売台数:12万8615台(-11.6%)
※それぞれ第2四半期の数値
第1四半期はなんとか収益性を確保することに成功したJLRだったが、第2四半期ではふたたび赤字に沈んでいる。
世界的な販売減がその原因だが、英国での販売台数は増加傾向にあり、6月の中国販売が回復するなど、今年後半に向けての明るい兆しも見えてきている。
工場閉鎖とWLTP適合遅れも現在の苦境の原因となっているが、JLRでは前を見据えており、現在進められている25億ポンド(3210億円)ものコスト圧縮策は、第2四半期だけでも4億ポンド(514億円)分の効果を発揮したという。
(後編へつづく)
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