梅雨が明けてからというもの、35度を超える猛暑日を連日記録し、容赦なく照りつける直射日光は死の危険を感じるほどだ。
連日、TV報道などで連日、熱中症警戒アラートが発表されている通り、死に直結する熱中症への警戒も必要だ。
高速道路上の落下物でクルマが損傷 被害を受けたドライバーにも責任があるって本当?
この熱中症警戒アラートは、熱中症を予防することを目的に環境省と気象庁が共同で発表して、暑さへの「気づき」を呼びかけるための情報(関東甲信地方対象)で、暑さ指数(WBGT)が「33」を超えると予想された場合に発表される。
2020年の夏は、全国的に平年より気温が高く、西日本や東日本を中心に厳しい暑さとなり、9月に入っても高温傾向が続き、お彼岸の頃までは残暑が厳しくなるとのこと。
もちろん、強い陽射しが降り注ぐ車内は灼熱地獄となる。こうした車内に降り注ぐ強い陽射しやお肌の大敵・日焼けの原因となる紫外線、ジリジリとした暑さを生む赤外線を大幅に低減してくれるのがカーウインドウフィルムだ。
エアコンの効きをよくし、車内の温度を下げる効果もあるので、熱中症の予防効果も絶大だ。
そこで、カーウインドウフィルムはどれほど進化しているのか? カーウインドウフィルム施工専門店に徹底取材!
さらにカー用品店で販売されているウインドウフィルムをDIYで貼り、貼る前と貼った後の温度を測ってみた。
文/高根英幸
写真/高根英幸 トヨタ ホンダ IKC トラフィック
【画像ギャラリー】コーラが破裂寸前! 気温30度以上の真夏日に車内で実験! 結果を写真でチェック!
UVカット機能付きウインドウ装着車も増えてきた
UVカット機能付プライバシーガラス(リアドア、リアクォーター、バックドア)が装着されたカローラツーリング
すでに5月から紫外線は増加している。より波長の長い可視光線や赤外線も当然増えているのだ。
オートエアコンで1年中車内の気温を一定に保っているつもりでも、実はこうした陽射しの影響などでも快適性は変わってくる(もっともオートエアコンも日照センサーなどで、内外の気温以外の状況も加味してくれているのだが)。
そんな陽射しによる暑さを大幅に軽減してくれるのがウインドウフィルムだ。ウインドウガラスの内側にフィルムを貼ることで日焼けの原因となる紫外線をカットして、ジリジリとした暑さを抑えてくれる。
それだけでなくフィルムの色によって眩しさを和らげてくれるし、冷暖房の効率も高めてくれる。
しかし、現在は後席やリアウインドウにプライバシーガラスを採用している車種が多いが、実はプライバシーガラスのなかにもUVカット機能があるモノとないモノがある。
さらにいえば、フロントウインドウやフロントドアにもUVカット機能を備えたガラスを採用している車種も珍しくなくなった。
10年ほど前から車種によっては熱線も4~7割もカットする高機能なガラスを採用しているし、新型フィットなどはフロントウインドウに遮音ガラスまで採用して、従来のコンパクトカー以上の快適性を追求している。
このように自動車メーカーもウインドウガラスからの日焼けや暑さ対策を充実させているのである。
なぜかといえば、前述の通りUVや熱線をカットすれば、冷房の効率が向上するため、燃費向上に役立つからだ。カタログ燃費には直接影響はないが、実燃費では大きく変わる。
つまりカタログ燃費と実燃費の乖離を抑え、ユーザーに満足してもらうための工夫でもあるのだ。
そういった車種ならウインドウフィルムを貼っても効果がないのでは、と思われるかもしれないが、実際はそうでもない。それはガラスとフィルムの特性の違いも大いに影響している。
プライバシーガラス採用車でもフィルム追加は効果アリ?
N-BOXのスーパーUV・IRカットパッケージはお肌の大敵、紫外線(UV)とジリジリした暑さを生む赤外線(IR)をカットするガラスをすべての窓に採用。紫外線約99%カット(ISO9050基準)と赤外線約70~80%カット(波長域780~2500nm)を実現
フィルムとガラスとの違い、それは熱伝導率だ。ガラスは熱伝導率が高い上に比熱も高い(=温度が上がりにくい)ため、金属のように常に周囲の気温より低い温度を維持している。そのため冬はガラスを通じて冷気が室内に伝わってきてしまう。
フィルムのような樹脂は熱伝導が低いため、ガラスの冷たさを伝えず室温に影響を与えにくいため、冬は陽射しをカットしながらも暖房の効果を高めるので、結果として暖かくなりやすいというメリットがある。
また、もともとIRカット機能があるガラスでも、さらにIRカット機能があるフィルムを貼ればより遮へい率は高まり、室内を涼しくしてくれる、ということになる。
そんなフィルムには色の種類と濃度、それにUVカットとIRカットという機能の有無によって違いがあり、各メーカーそれぞれ様々なバリエーションを用意している。
もちろんプライバシーガラスではないクルマの場合は、後席のプライバシー性を高めることができる。プライバシーガラスを採用している車種でもさらに色付きフィルムを貼って、外からは見えないほどスモークを濃くしているクルマも珍しくない。
この色付きフィルムの場合、着色はフィルムを後から染める染色と、フィルムの素材に顔料を混ぜて着色する原料着色、通称原着があるが、それぞれにメリットがある。
染色は色の鮮やかさを求めるようなカラーのフィルムには向いているが、スモークなどの濃い色は光の当たり方によって白く曇ってみえてしまうこともある。
紫外線などによる色褪せも比較的大きいようだ。原着は濃い色でも発色が自然で染色と透過率が同じでも透明感のある仕上がりとなるが、フィルム製造のコストは高くなる。
そのため種類も限られるようで、プロが使うフィルムは原着、カー用品店で販売されているフィルムは染色であることが多いようだ。
高性能なカーウインドウフィルムは3M、東レといった有名ケミカルメーカーの製品で、例えば3Mのカーフィルムは200層ものフィルムを重ね合わせることで透明ながらUVは99%、IRも80%のカット率を誇るものもある。
一方で、プロのフィルム施工業者は、そうした最高の性能を誇るカーウインドウフィルムを使っているかといえば、そうとは限らない場合もあるようだ。
ウインドウフィルム施工専門店に聞いてみた
東京都葛飾区の環状七号線沿いでカーウインドウフィルムとボディコーティングを専門に施工する「トラフィック」の金山 功代表に話を聞いてみた。
「ウチで使用しているのはIKCというメーカーのフィルムです。東レや3Mの製品は確かに良いんですが、価格ほどの差は感じません。つまりお客さんにとって一番お得な内容になっています」。
■トラフィックのホームページはこちら!
IKCのホームページに掲載されている断熱タイプのカーウインドウフィルム「ルミクールSD」のフィルム濃度の見本。プライバシー性の違いだけで性能は同じように感じるが、今回の実験でも分かった通り、色の濃いフィルムの方が室内温度は上昇しにくいようだ
■IKCのホームページはこちら!
IKCは国産メーカーで品質も高く、価格もそこそこ。コスパを考えたら、最も納得できる仕様といえそうだ。
同店でもフィルムは色の濃さのほか、UVカットのみのタイプとIRカット機能もある断熱タイプを用意しているが、実際の価格差は5000円程度なので、ほぼお客さんは断熱タイプを選ぶそうだ。そりゃそうだ、絶対にモトが取れるに決まっている。
「今のクルマはプライバシーガラスになっているクルマが多いんですが、フィルムを貼るお客さんは、プライバシーガラスではスモークの濃度が薄いという印象を持っていますね」(トラフィック金山代表)。
気になる価格はリア3面(リアウインドウ、リアドア、リアクォーターウインドウ)で3万円から6万5000円。国産車と輸入車、ボディサイズなどで価格は変わってくるそうだ。
ちなみにトラフィックでは、電話で作業の予約をすると料金が30%オフになるキャンペーンを現在実施中だとか。
それを含めて考えるとフロントドア両側にクリアな断熱フィルムを貼ってもらっても5万円から6万5000円前後で収まる予算感だ。
作業時間は3時間程度ほどで貼ってもらえる(ただし施工後1、2日は窓の開閉は不可)から、葛飾周辺で買い物や散策するだけでフィルムを貼って快適になったクルマに乗って帰れる。
しかも1ミリ以下のゴミ混入を除き、色飛びや剥がれなどのトラブルは5年間保証してくれるそうだ。
自分で貼ったらどうなる? DIYでウインドウフィルム貼りに挑戦!
そうはいっても、ウインドウフィルムを素材として購入するなら1台あたり数千円から1万円程度。カー用品店で売っているのを見たこともあるだろう。
これだけの価格差があれば、クルマ好きのなかには「自分で貼った方が安上がり」だと思う人も多いのではないだろうか。
そこで今回、筆者が自分のクルマにウインドウフィルムを貼ってみることにした。これまで自分のクルマを含めて4、5台のクルマにフィルムを貼ったことはあるが、当然仕上がりはプロ並みという訳ではない。
単にDIYメンテの一環として荷室の目隠しやエアコンの効率アップを目的に自分で作業したことがあるだけだ。
フィルム自体は某ネットオークションや某ECで簡単に手に入る。車種別にカット済みのフィルムも用意されており、それを選べば型取りをする必要なく、フィルムを貼ることができるので便利だ。
しかし、今回筆者はカットされていないフィルムを入手し、型取りからやることにした。
その理由は筆者のクルマ(フィアットムルティプラ)は数が少なく、リアウインドウとリアクォーターウインドウが大きく湾曲しており、カット済みフィルムでは決められた型通りにフィルムを収縮させなければいけないので、かなり難易度が高いからだ。
1m幅のシート状フィルムを購入してウインドウの大きさに合わせて大まかにカット。ウインドウの外側から当てて型取りしてガラスの形状通りにカットしていく。ダーマトグラフ(柔らかい色鉛筆)で型取りして作業台の上でカット
まずは型取りしてフィルムをカットすればそのまま貼れるフロントドアとリアドアのウインドウから作業を始めた。フロントドアは透過率80%でUVカット99%、IRカット率85%(ホントか?)という透明フィルムを貼ってみた。
ガラスの掃除を入念に行なわなかった(水拭きのみ)ため、ゴミの混入があったり、完全に平面ではないため、わずかに浮いてしまった場所があるが、透明なので目立ちにくい。感覚に個人差はあるが、まあ許せる範囲だろう。
リア3面はグリーンのフィルムを貼ることにした。純正のグリーンガラスに近い色調でやや濃いめの透過率35%というものだ。スモークの濃いものより上品に見えると思って決めたのだが、これがなかなかの強敵だった。
リアドアのガラスに貼ろうとしたところ、位置決めの状態でガラスに貼り付いてしまい、何とか剥がしたら接着剤の層が剥がれてガラス側に残ってしまった。
原因は窓の汚れをキチンと落とさなかったことと、界面活性剤を入れた水のスプレーがちょっと少なかった?
それとフィルムの品質の問題だろう。これまでヘラで押える前に貼り付いたフィルムを引っ張って剥がしても、接着剤が剥がれてしまうことなどなかったからだ。
そこでリアクォーターとリアウインドウはより慎重に作業してみた。ガラス表面を粘土クリーナーで掃除し、リアクォーターもリアウインドウもフィルム1枚をヒートガンで加熱収縮させて成形して貼ることに挑戦した。
ヒートガンを使ってウインドウの外側に置いたフィルムをガラスの湾曲に合わせて熱で縮ませる。ウインドウフィルムは熱を加えると伸びるのではなく、縮むのでそれを利用するのだ。しかしこの技はコツを習得するにはかなりの練習とセンスが必要なようだ
実は以前、やはりリアクォーターウインドウにフィルムを貼ろうとして熱成形に挑戦し、見事に失敗した経験がある。だから今回はカット済みではなく、シート状で余分に購入し、何度か挑戦してやろうと思ったのだ。
しかし湾曲がきついガラスにフィルムを収縮させて密着させるのは、やはり難しい。
リアクォーターで2回試し、リアウインドウで1回試してみたものの、どちらも最後はフィルムの収縮の限界を超えてしまい、シワシワに縮んで硬化してしまった。
リアクォーターの2回目は、リアウインドウでの失敗も踏まえて、全体を上手く収縮させるようにしてみたのだが、それでもシワは入ってしまい、貼ってみると見るも無残なものに。我ながら笑うしかなかった、トホホ……。
大失敗のリアクォーターウインドウ。ガラスが3次元に大きく湾曲しており、フィルムを熱収縮させるのは非常に難しい。後で上下3分割で貼り直すことにした
そしてリアウインドウは上下に3分割して、それぞれを熱成形させてみるとことにした。
これまでの失敗から、若干コツを掴んだこともあって、大分マシな成形具合。リアウインドウ内側に貼り付けてみると、まだ数ヶ所は密着せずに浮いてしまったが、濃いスモークより目立たないので、このまま作業を進めた。
リアウインドウは3分割して熱収縮させたが、それでも浮いている箇所が…。フィルムが濃いスモークなら浮いている箇所は目立つが、中程度の濃さのグリーンとあって、それほど目立たないのが救い(それを狙った選択でもある)
ボディの輝きがプロの磨き屋には敵わないように、ウインドウフィルムの仕上がりもプロと素人では雲泥の差。
経験値が段違いなのだから、美しい仕上がりを望むなら迷わずプロに任せることをオススメする。ガラスが湾曲しているなら特に、だ。よほど腕に自信がある人以外はプロに任せた方がいいと改めて痛感した(実に悔しい)。
ウインドウフィルムを貼ったことで車内の温度はどれだけ下がるのか検証!
曇り時々晴れという天候の中、1時間ほど屋外駐車場に駐車して、各ウインドウからの陽射しによって内装の温度がどれだけ上昇するか確かめた
仕上がりはともかく、フィルムを貼ったことでどれだけ効果があるのかも検証してみた。
薄曇りから時折太陽が顔を出す気温33℃を記録した日に屋外駐車場に1時間ほど放置して、室内の温度上昇とフィルムの有無による陽射しの違いでシート表皮などの温度がどれだけ違うか確かめた。
するとエアコンを切って1時間後の室内は、日陰部分のシート表皮の温度とほぼ等しいとすると36℃ほど。しかしダッシュボードの温度は50℃を超えている。
これがフィルムなしの陽射しによるものだ。そしてフロントドアの透明フィルムを透過した光が当たっていたところは41℃と、明らかに温度上昇が抑えられている。
手で触っても約10℃の違いは明らかだ。ところが、リアドアに貼ったグリーンのフィルムを透過した光が当たっていた部分の温度は36℃と、ほとんど日陰と同じくらい温度が低い。
グリーンのフィルムはIRカットを謳っていないのに、温度上昇は透明フィルムと同じくらい抑えられていたのである。
フロントウインドウを通じて陽射しが入ったダッシュボードやシート表皮は57~58℃になった
透明断熱フィルムを貼ったフロントドアからの陽射しでは42℃と15℃以上の差が付いた。
不思議に思われるかもしれないが、これにはキチンと理由がある。太陽光には紫外線と赤外線のほか、その両者の間となる可視光線があり、赤外線と可視光線が熱エネルギーとしてほぼ同量(紫外線には熱エネルギーはほとんどない)持っている。
つまり、透明フィルムは赤外線を8割カットしても、可視光線を2割しかカットしないのであれば、全体として熱エネルギーは5割しかカットされていないのだ。
一方、透過率35%のグリーンのフィルムは可視光線を65%カットするだけでなく、赤外線も何割かはカットするため、熱エネルギーのカット率では透明フィルムに近い性能となったのだろう。
つまりUVやIRのカット率は同じフィルムでも、スモークの濃さが異なれば熱エネルギーのカット率は大きく変わる。
やはりスモークが濃い方が夏は車内の温度上昇を抑えられる、ということになる。
リアドアはグリーン系のUVカット機能のみのフィルムを貼ったが、こちらも43℃(左写真)と透明断熱フィルムとほぼ同等の遮熱ぶりを記録した。ちなみに日陰側のシート表皮は37℃(右写真)だった
もっとも車内の気温はウインドウからの日射だけで高まるわけではなく、ルーフやドアパネルが日射によって温度上昇したり、エンジン停止直後はエンジンルームからの熱気も伝わってくる。フィルムだけで防げる遮熱対策には限度があることも知っておくべきだろう。
とはいえ、ウインドウフィルムを貼った状態は、陽射しによる暑さを和らげてくれることは確かだ。
省燃費や冷房の効果を高めたい、家族にもっと優しいクルマにしたい、というならカーウインドウフィルムを貼ることを検討してはいかがだろう。
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