F1スペインGPでレッドブルの角田裕毅は13位となった。ピットレーンからスタートして13位ならば、まずまずの結果のように思える。しかしレースペースと当時のギャップを考えれば、8位に入ったアルピーヌのピエール・ガスリーの上も狙うことができたかもしれない。
角田はスペインGPの予選でまさかの最下位。マシンのパフォーマンスが全く上がらなかったのだ。これによりチームは、ウイングとサスペンションのセッティングを変更。レギュレーションにより、ピットレーンからスタートすることになった。
■角田裕毅、大惨事の予選からはパフォーマンス向上。しかし入賞には届かず「求めているレベルではなかった」
ミディアムタイヤを履いてスタートした角田は、すぐに隊列に追いついた。しかしアルピーヌのフランコ・コランピントをなかなか抜けない。そのためチームはある選択をする。ソフトタイヤを履くマシンよりも早く、ミディアムを履く角田をピットに迎え入れたのだ。
角田は予選Q1で敗退したことで、あるアドバンテージを抱えていた。それは、新品タイヤが豊富に残っていたことだ。チームはこの残っているタイヤを贅沢に使い、それを最大限に活かそうと考えた。
■レースペースが優れていた角田裕毅
このグラフは、F1スペインGP決勝レースでの中団グループ勢のレースペース推移を示したものだ。
紺色の実線で示したのが、角田のレースペースの推移である。パッと見ていただいて分かる通り、角田のペースは中団グループの他のマシンのペースを圧倒していた。
角田は予選では全く振るわず最下位となってしまったわけだが、決勝に向けて施したセッティング変更が功を奏していたということが、よく分かろう。
「ペースは僕たちが期待していたレベルではありませんでしたが、中団グループのマシンと比べれば悪くはなかったです。今日なら、入賞できるだけのポテンシャルはあったと思うので、少し残念です」
角田のそう語るコメントの裏付けになっていると言える。もちろん、ここで満足していてはいけないわけだが。
ただこの角田のペースを実現するには、前述の通りチームの判断が効いていた。
■タイムロスをことごとく避ける戦略
こちらのグラフは、レース中の中団グループ各車のギャップの推移を示したモノである。基本的には7番手(終盤だけ6番手)のドライバーが、縦軸0の位置にいる、そんなグラフである。
こちらも、紺色の実線で示した角田のポジションをご覧いただきたい。
レース序盤は、コラピントをなかなか抜けず、押さえ込まれていた(グラフ赤丸の部分)。そこでチームは早々に角田をピットストップさせることを選択した。角田を前に邪魔がいない、いわゆるフリーエアのポジションを走らせようとしたのだ。
ここで角田がコラピントを抜けなかったのは、DRSトレインとなっていたことももちろん大きいが、各車がソフトタイヤを履いていた中、角田がミディアムタイヤを履いていたということもあるだろう。
ただ本来ならば、ミディアムタイヤはできるだけ長く走りたいタイヤ。それを早々に使い捨てるという判断を下したレッドブルは、ある意味さすがだと言える。
角田は2スティント目に新品のソフトタイヤを選択。他のマシンよりも速いペースで走り、実質的なポジションを上げていった。そんな中であるマシンに引っかかってしまう。それがオリバー・ベアマン(ハース)であった。
角田はベアマンに抑えられ、前との差が開きつつあった(青丸の部分)。そのためチームは再び早めの選択。角田を2回目のピットストップに呼び込んだのだ。これが24周目……レースは66周だったので、まだ半分にも到達していない段階で2回目のピットストップを行なったわけだ。
ここからの角田のペースも良く、途中ハースのエステバン・オコンを数周にわたって抜きあぐねたタイミングもあった(緑丸の部分)が、これをなんとか交わした。そして44周を走り切ったところで3回目のピットインを行なった。
3回目のピットインがこのタイミングになったのは、抜いたばかりのオコンがピットストップを行なったことも当然あろうが、速いマシンが追いついてきたため、周回遅れになる際に無駄にタイムをロスしないようにするためだったとも考えられる。ちなみにグラフからは読み取れないが、マクラーレン勢2台はコース上で角田を抜かねばならなかった。その時にフェルスタッペンが差を縮められないか……そんな期待もチームにあったかもしれない。
3回目のピットストップを終えた角田は、1~2周にわたってオコンに付き合わされた(紫丸の部分)がこれを抜くと、前にはウイリアムズのカルロス・サインツJr.が近付いてきた。サインツJr.だけでなく、すぐ目の前にはベアマン、フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)、リアム・ローソン(レーシングブルズ)、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)も急激に近付きつつあった(黄色の丸の部分)。
これら5台のうちローソンを除いた4台は、角田よりもかなり前にタイヤ交換を終えており、ペースの面で苦しみつつあった。そこに新品ソフトタイヤに履き替えた角田が迫っていたわけだ。そのペース差、タイヤ利用履歴の差を考えれば、角田がこれらのマシンをコース上で抜くことも十分に可能だっただろう。
しかしここで、角田にとってはまことに不運、一方前を走るマシンにとっては実に幸運なタイミングでセーフティカーが出動した。メルセデスのアンドレア・キミ・アントネッリが、コース脇にマシンを停めてしまったのだ。
これで各車はピットイン。角田もこのタイミングでピットに入り4回目のタイヤ交換を行なったが、当初は潤沢に残っていたはずの新品ソフトタイヤはもう残っておらず、予選で使った中古のソフトタイヤを履くことになった。
これでは、レース再開後にせっかくのタイヤの使用履歴の差を活かすことができず、思うようにポジションを上げることができなかった。
「SCはユウキのレースに悪影響を与えた。ペースとタイヤのアドバンテージを考えれば、ポイント圏内には入れなかったとしても、かなり接近することができていたはずだ」
レース後にレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表はそう語ったが、まさにそれを裏付けていると言えよう。実際、セーフティカー出動前のペース差があれば、ガスリーにまで届いた可能性はあるし、それまでのレッドブルの戦略は実に秀逸だったように思う。
そしてセッティング変更後の角田には、中団勢に差をつけるパフォーマンスがあったことも間違いない。マシンのセッティングさえ最初から整っていれば、今回のような予選・決勝結果になることはまずないだろう。
■今後のヒュルケンベルグ&ザウバーにご注意!
さて今回のグランプリでは、もうひとり特筆しておきたいドライバーがいる。それは、ザウバーのニコ・ヒュルケンベルグである。
ヒュルケンベルグは終始良いペースで走り、最終的には5位でフィニッシュした。実は彼もQ1落ちを喫していたため、角田と同じように贅沢に新品タイヤを使うことができた。そして終盤のセーフティカー中にもまだ新品ソフトタイヤが残っており、これを武器にアイザック・ハジャー(レーシングブルズ)とルイス・ハミルトン(フェラーリ)を抜いて5位を手にした。
このグラフは、金曜日のフリー走行2回目の、各車のミディアムタイヤでのロングラン時のペース推移だ。実はヒュルケンベルグは、予選Q1敗退だったものの、ロングランのペースが非常によかった。
つまりザウバーは今回、パフォーマンスを上げていた可能性が高く、この5位という結果はフロックではなく、実力通りのポジションでフィニッシュしただけとも言える。今後も目が離せない存在となりそうだ。
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