カワサキH2エンジンとの組み合わせがカギ
カワサキとの新たなパートナーシップにより再生を果たすイタリアの名門・ビモータ。カワサキから提供を受ける心臓部・スーパーチャージドH2エンジンが放つパワーを、新型テージH2の車体はどのように受けとめ、その性能を引き出すのか? 本稿では、ハブセンターステアリングを始めとしたビモータの独創的な機構について解説する。
往年の名車・伊ビモータがカワサキH2エンジンを得て現代に蘇る!【テージH2】
誕生から四半世紀を経たハブセンターステアリング
イタリア語で”論文”を意味する「テージ」。その最大の特徴は、既存のテレスコピック式フォークに代わる機構として「ハブセンターステアリング」を採用したことである。学生時代に友人とともにこのシステムを考案したデザイナー・ピエルルイジ・マルコーニ氏は、’80年代初頭にビモータに入社。VF400FやFZ750のエンジンを使用した試作車を製作し、’90年にはドゥカティ851のエンジンを搭載する「テージ1D」を発表した。もっとも当時の生産技術では、マルコーニ氏の理想を具現化するのは難しく、’00年代に登場したテージ2D/3Dでも、フレンドリーな操安性は獲得できなかったのだが……。
数多くの経験を積んだマルコーニ氏が、四半世紀以上ぶりに新規開発したハブセンターステアリングなら、このシステムの美点を誰もが体感できるのではないだろうか。なお、かつてのテージシリーズが、側面から見た際にΩ型となるフレームを採用していたのに対して、エンジンに十分以上の強度が備わっているという判断から、テージH2はフレームレス構造を選択している。
独創的な機構で安定感を獲得
前輪をスイングアームで支持することと、前輪のハブ内にステアリング機構を設置していることは、従来のテージ1D~3Dと同様。ただし車体左側面下部に備わるプルロッドは、フロントサス用ショックユニットをエンジン背後に配置した、テージH2ならではの装備だ。
独特なステアリングまわりの機構
ステアリングロッドはリンクを介してハンドルバーに接続。このロッドを押す(または引く)と前輪が切れる。このステアリングロッドは左側の1本だけで、ブレーキの回り止めとなるトルクロッドは左右2本が配される。
並列配置でマスを集中
既存のテージシリーズで車体左側面前方に設置していたフロントサス用ショックユニットは、テージH2ではリンク式のリヤサス用ショックユニットと並列配置。この構造はマス集中化を意識した結果というが、見た目のインパクトも抜群だ。
フレームは存在しない
フレームレス構造のテージH2は、エンジン前後にサスマウント用プレートを設置。リヤはニンジャH2と同様の構造だ。
フロントサス改革の旗手
テージシリーズの最大の特徴であるハブセンターステアリングの目的は、既存のテレスコピック式フォークでは実現できない抜群の安定性を獲得することと、操舵と衝撃干渉という仕事を分離すること。ちなみにこの目的は、BMWのテレレバー/デュオレバーや、’18年型以降のゴールドウイングが導入したダブルウィッシュボーンサスも同様である。
次稿では、テージ1Dの生みの親にして、新作テージH2の開発責任者であるピエルルイジ・マルコーニ氏への直撃インタビューをお届けする。
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高速域でのエンジンからの振動が操作性に影響与えないのだろうか?