日中連合が挑む新たな水平分業
日本経済新聞が2026年5月11日に報じたところによれば、中国の奇瑞汽車(チェリー)とオートバックスセブンなどが手を組み、新たな合弁会社を立ち上げる。2027年から中国製電気自動車(EV)を日本国内で展開していく構えだ。
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この枠組みには中国の国有企業である江蘇悦達汽車集団や、車載電池で存在感を示す国軒高科、さらには塗装機器を専門とするアネスト岩田も加わった。事業の司令塔となるのは、シンガポールに置かれた共同出資会社の傘下にある横浜のEMT社だ。ここが開発と販売のタクトを振り、日本生まれのブランドとして市場に浸透を図る。
具体的な計画としては、2027年の第1弾モデルを皮切りに、2029年までに合わせて4車種を投入する予定だ。将来的な海外展開も視野に入れている。車両の組み立てについては、まず中国にある江蘇悦達の拠点を活用するが、2030年以降は日本国内での生産も検討していくという。
今回の試みで興味深いのは、開発や生産、販売といった役割を各社で分かち合う「水平分業」の形を採っている点だろう。自前ですべてを抱え込む従来のモデルとは一線を画し、資産を膨らませない身軽な経営で勝負を挑む。
あえて日本法人のEMTを表舞台に立たせる構成からは、地政学的な摩擦を避けつつ、中国製EVが持つ圧倒的なコスト競争力を日本市場へ浸透させようとする意図が透けて見える。日中5社が持ち寄るそれぞれの機能をどう噛み合わせ、日本の環境に合わせていくのか。その実行力が試される局面になりそうだ。
中国勢が担う技術と生産拠点
出資に加わった5社のなかでも、奇瑞は技術面を支える中心的な存在だ。これまで磨いてきた知見を土台にして、開発の指揮を執ることになる。中国国内での競争が激しさを増すなか、同社はロシアや欧州、東南アジアへと着実に販路を広げてきた。なかでも英国での勢いは目覚ましく、2026年第1四半期のシェアは6%近くまで伸びている。右ハンドル圏への適応や、各国の厳しい法規を乗り越えてきた実績は、日本市場を攻める上でも強みとなるはずだ。高度な運転支援やスマホとの連携といった機能を、中国ならではの速いサイクルで製品に落とし込んでいくだろう。
製造の役割を担う江蘇悦達汽車は、かつて現代自動車系の起亜などと提携していた国有企業である。現在は交換式のバッテリーを積んだ商用EVに力を入れており、年間1万台を作る力を備えている。提携先だった新興EVメーカーの華人運通が2024年8月に破産したが、2025年5月にはカナダのエレクトラがその株式の69.8%を取得した。すでに海外から10万台を超える注文を取り付けているという。中国国内で余っている生産設備をうまく使い、日本向けの拠点へと転換していく動きには、徹底した経済合理性がうかがえる。
電池の供給を受け持つ国軒高科の存在も無視できない。2026年第1四半期に世界シェア10.2%を占めて5位に食い込んだ同社は、フォルクスワーゲンが約25%の株を持つ筆頭株主でもある。欧州基準の安全管理や規制をクリアしている事実は、日本国内で根強い発火への懸念や品質への不信感を、資本の背景をもって打ち消す材料になる。奇瑞とのタッグによって、日本メーカーがなかなか手を出せない水準の調達コストを実現すれば、価格競争において大きな優位に立つ可能性がある。
日本勢が築く信頼と販売網
出資に加わった5社のなかで、とりわけ目を引くのが日本市場での企画を担うEMTだ。2025年1月に産声を上げたばかりの同社だが、経営陣の顔ぶれは厚い。最高マーケティング責任者(CMO)には、日産の中国合弁で采配を振った打越晋氏を、最高技術責任者(CTO)には初代リーフの開発を率いた山本浩二氏を招聘した。
この布陣からは、日本の複雑な認証手続きを迅速にクリアし、国内の使い手が求める細かなこだわりを製品へ確実に反映させようとする意志が見て取れる。現在、技術者や品質保証、原価管理といった専門職を幅広く募っており、中国側のハードに日本独自の信頼感を上書きするための地盤を固めているところだ。
すべてを自前で抱え込もうとする従来のメーカーのあり方に対し、今回は各々が強みを持ち寄る形を採る。そこで販売の最前線に立つのがオートバックスグループだ。傘下のバックスeモビリティは、2023年11月に「BYD AUTO 宇都宮」を立ち上げてから、練馬や京都など全国5か所で拠点を広げてきた。そこで得た中国製EVを売るための知見は、何物にも代えがたいはずだ。
国内に約1200店舗を構えるオートバックスの網の目は、新興ブランドが突きつけられる「買った後の不安」を和らげる大きな後ろ盾になる。中古車事業と連携して車の価値を守り、持ち主の経済的な負担を軽くする役割も期待できるだろう。さらに塗装機器のアネスト岩田が加わることで、外観の仕上げといった目に見える質感も日本水準まで引き上げる。消費者の厳しい目に耐えうる体制を、多角的に整えている印象だ。
意思決定の統一と統率力の課題
今回の連合が描く役割分担は、これまでの完成車メーカーのあり方とは一線を画している。部材の調達から製造設備までを網羅した多角的な共同体は、既存の枠組みを超えた試みといえるだろう。
ただ、業種の異なる企業が寄り集まる以上、意思決定の足並みを揃え、ブランドとしての色をひとつに絞り込む作業には困難がともなう。開発から販売までを自前でこなすメーカーであれば物事は円滑に進むが、分業制を採るとなれば、各社が抱える優先順位の食い違いがどうしても表に出てしまう。
例えば、中国側が得意とする「走りながら修正する」スピード感と、日本側が守ろうとする「不備を完全に取り除いてから動く」という慎重な姿勢。これらが衝突すれば、2027年の納車という目標に影を落とすことにもなりかねない。
また、これからの収益源として見逃せない走行データの権利を、どの社が握るのかという点も、避けては通れない課題だ。シンガポール、横浜、江蘇、そして安徽と、拠点が国をまたいで分散するなかで、実務を担うEMTがどこまで統率力を発揮できるか。共通の目標を組織の隅々まで行き渡らせ、各社の思惑を束ねる機能が働かなければ、せっかくの強みを形にできないまま終わってしまう可能性も否定できない。
日本基準の品質保証と保守体制
それぞれの役割が鮮明になるほど、避けて通れないのが中国製車両の品質をいかに担保するかという点だ。2025年の大阪・関西万博で中国製EVバスを展開したEVモーターズ・ジャパン(EVMJ)の事例は記憶に新しい。事故や故障が相次いだことで、市場の信頼を大きく損ねてしまった。
本来なら日本国内での組み立てに切り替えるはずが、輸入販売の域を出ないまま時が過ぎ、保守体制への不安を打ち消せなかったことが響いている。今回の5社連合も、当面は中国で車両を生産する。それだけに、EVMJの二の舞を避けるための品質管理は、事業を軌道に乗せるための絶対条件となるはずだ。
もともと日本のユーザーは、アフターサービスに対して極めて高い水準を求める。故障時の修理スピードや部品の供給網、さらにはソフトウェアの更新といった運用面での仕上がりが、そのままブランドの成否をわけるだろう。
加えて、国の補助金制度が経済安全保障の観点から見直される可能性も否定できない。こうした政治的な動きに即座に応えられる柔軟さも必要だ。優れた製品を持ち込むのはもちろんだが、日本国内で完結する保守の仕組みをどこまで盤石に築けるか。その覚悟が問われている。
EVの常識を覆す新たな価値提案
EMTやオートバックスが主導権を握り、日本の使い手の好みに合わせた車を世に送り出す試みには、確かな手応えが感じられる。EMTには国内メーカーで経験を積んだ面々が顔を揃えており、これからも実務に長けた人材が集まってくるはずだ。既存のメーカーでは踏み込めなかった領域での商品作りには期待が寄せられるが、中国製車両が持つ圧倒的な安さをどこまで引き出せるかが、行く末を左右することになるだろう。
この5社連合は、中国側の素早い生産体制と安値を土台にしつつ、日本側が企画や売り出し後の面倒を見るという仕組みだ。自前の工場を持たないやり方に見えて、その実は役割を細かく分かち合うことで効率を高める、新しい協力の形にほかならない。
国内勢が軽自動車のEV化を急ぐなか、より幅広い層に向けた普通車クラスの空白地帯を突く戦略は、日本の車社会のありようを根底から変える可能性を秘めている。オートバックスが持つ全国の店を拠点に、用品選びから日々の手入れ、保険までを一手に引き受ける。そんな体験に基づいた価値の提案は、これまでの車選びの常識を覆すはずだ。
移り変わる時代に合わせて市場の求めに寄り添うこの動きは、業界の勢力図を塗り替える存在として、これからも関心を集めていくに違いない。(成家千春(自動車経済ライター))
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アホなチャイニーズでも警戒して買わんだろうに(*´∀`)www