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F1レッドブル・ホンダピンチ! なんと同点で最終戦! 勢いは完全にメルセデス。ここまで差をつけられたワケとは?

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F1レッドブル・ホンダピンチ!  なんと同点で最終戦!  勢いは完全にメルセデス。ここまで差をつけられたワケとは?

 サウジGPでなんとか2位となったフェルスタッペン。しかし、ハミルトンに抜かれた後は全く歯が立たず。いい勝負になるかと思いきやどんどん離される始末。しかし、前日の予選クラッシュまではコンマ4秒速かったわけだからマシンは速いはずだ!! だが、現実にはどうなんだろうか? ブラジルから速くなったメルセデス、一方ここ数戦低迷しているレッドブル・ホンダ。この両マシンについて元F1メカニックの津川哲夫氏に解説していただいた。

文/津川哲夫、写真/Mercedes-Benz Grand Prix Ltd,Red Bull Content Pool

ついに復活! 超名門インテグラは消滅してもなお「俺たちのホンダ」の伝説だ!!

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■ハミルトンがブラジル・エンジンを積んでから大きく差がついた

 21戦を戦ってきて、ついに迎える最終戦アブダビ。例年ならば既にチャンピオンシップはほぼ決まっていて、最終戦は賑やかな消化ゲーム……というのが通常のシーズンエンド。しかし今年は大きく違っていた。

 トップ争い2チームの2台、可能な限りの開発や戦略的エンジンチェンジ、政治的な攻防、そして激しいフィジカルチェックまで入っての凄まじい戦いと、努力向上の結果のこの状況をどう表現すれば良いのか?

 最終第22戦サウジアラビアに向かう2人のコンテンダー、レッドブルのマックス・フェルスタッペンとメルセデスのルイス・ハミルトンによるチャンピオンシップポイントは全くの同点。それも1ポイントではなく0.5ポイント単位まで同じ数字が並ぶ異様な程のイーブン。したがって最終戦のレース結果がそのままチャンピオンを決めるという、実に単純明快なレースがアブダビに用意されたわけだ。

 この2チームのこの2人、もちろん優劣はつけ難い。シーズン前半は明らかにレッドブル・ホンダが上手を取ったが、中盤の英国で状況は変りハミルトンのメルセデスPUが驚速を発揮、ここからじわじわとレッドブル・ホンダのアドバンテージが崩れ始めた。そして終盤ブラジルではさらにメルセデスが次元の違う速さを見せた。

 ハミルトンは戦略的にエンジン交換を行い、そのブラジル・エンジンのおかげか、それともエアロや様々な開発が功を奏したのか、続くカタールやサウジアラビアでも他を圧倒する速さを見せつけたのだ。もちろんレッドブルもメルセデスの速さに対抗するも、高速型サーキットが続く3連戦、なかなか思うように事は運ばない。つまりメルセデスはブラジル・エンジンのアドバンテージを護り続けて最終戦に対峙するのだ。

■メルセデス速さの秘密は、中低速域での速さが増したこと

 このメルセデスのパワーアドバンテージに対してレッドブルはセッティングでの向上を目指し、色々と試しているが問題はメルセデスのトップスピードだ。これに対抗するには中高速でのスピードを何とか獲得しなければ勝負にならない。

 レッドブルの基本戦略は効率の良いダウンフォースの発生だ。減速・コーナリング・加速等の必要時には必要分のダウンフォースを供給し、必要のない時には削減してドラッグを減らす、理論通り働けば理想のセッティングなのだ。

 これに対してメルセデスはエンジンでのパワーアドバンテージが大きい。これが高いトップスピードを実現する要だが、英国以後エアロダイナミクスの開発も進み、高いトップスピードを得ながらも、これまで苦手としていた中低速コーナーでの速さも増した。しかし高速でのトップスピードのアドバンテージを若干失う形にもなっている。

 ブラジルでの圧倒的なトップスピードは、カタールやサウジアラビアではレッドブルとほぼ同等になりながらも、その分をダウンフォースに回したのか中低速域での速さが増した。

ルイスはブラジル・エンジンを再搭載してサウジGPに挑み、フェルスタッペンを圧倒した

 ところがレッドブルは、負けているトップスピードを得るために、ここ3戦レッドブル的ではないセッティングで、トップスピードではメルセデス並になっているが、その反面これまで得意としていた中低速域で苦しみ始めているのだ。

 つまりメルセデスは中低速重視、レッドブルは高速重視と、それぞれこれまでのパターンの逆のセッティングが両チームで施された様に思えるのだ。

■レッドブル・ホンダは高回転域をできるだけ使うギリギリのセッティング

 もう少し具体的に分析して見れば、レッドブルはエンジンパワーと回生を重視して、高速コーナーの連続は凄まじく速く、減速時は若干高回転のダウンシフト、ハミルトンよりも下のギアまで落とし、加速時には各段を引っ張る、つまりハミルトンよりも高回転を維持する使い方がされている。

 減速時、高回転数の維持はそのままエンジンブレーキの使い方と回生量の増加に繋がる。その回生電力を加速時に出力して効果的な加速とトップスピードを得る努力がなされたようだ。メルセデスのブラジル・エンジンに対抗する手段ということなのだろうか。したがってレッドブルは、高回転域を使う事でセッティングは結構ギリギリの領域にまできているのではないだろうか。

サウジGP予選Q3のラストアタックでルイスにコンマ4秒差をつけていたが、最終コーナーでクラッシュ! 万事休す

 ではメルセデスは? メルセデスの弱点はレッドブル程にはダウンフォースの制御がままならないこと。話題の動く(!?)リアサスペンションやしなるウィング疑惑等は、その制御が苦手なはずなのに余りにも見事に解決したからに他ならない。

 リアサスペンションの稼働量と稼働スピードがこれまでのメルセデスと違うことを疑るのは、もちろん他のチームではなく、道理を理解できないメディアなどの話で、現実にはセッティングでいくらでも動きの制御は出来るのだ。

 そして中低速の速さはエンジンパワーと電力出力/回生効率が優れていることで、多少ドラッグが増しても大きいダウンフォースを発生するウィングを使えば可能なことなのだ。ブラジル・エンジンのハイパワー化でそのゆとりが出来たということなのだろう。

■はたしてマックス・フェルスタッペンは王者になれるのだろうか?

サウジGPでは焦りが出ていたフェルスタッペン。クルマは速いはずだがレース終盤ルイスについていけなかった。シリーズチャンプに赤信号が……

 こう考えると最終戦、背伸び一杯のレッドブル・ホンダのフェルスタッペンとごく僅かアドバンテージを持つメルセデスのハミルトン。予選でのハプニング等が無ければ、ほんの僅かだけハミルトンに分がありそうなのだが、レースは水物、そんな予想は過去にどれだけ覆されてきた事か……。

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津川哲夫
 1949年生まれ、東京都出身。1976年に日本初開催となった富士スピードウェイでのF1を観戦。そして、F1メカニックを志し、単身渡英。
 1978年にはサーティスのメカニックとなり、以後数々のチームを渡り歩いた。ベネトン在籍時代の1990年をもってF1メカニックを引退。日本人F1メカニックのパイオニアとして道を切り開いた。
 F1メカニック引退後は、F1ジャーナリストに転身。各種メディアを通じてF1の魅力を発信している。ブログ「哲じいの車輪くらぶ」、 YouTubeチャンネル「津川哲夫のF1グランプリボーイズ」などがある。
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みんなのコメント

4件
  • いよいよ最終戦。
    どうなることでしょう。
  • 前戦はタイヤ戦略も間違っていたし、手が出なかった。
    今回もポールスタートとはいえ、Q2で不要なミスをしてしまいソフトスタート。
    またタイヤ戦略の幅が大幅に狭まってしまった。
    焦りすぎだよマックス。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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