2021年6月、新型ランドクルーザーが世界初公開された(正式な発表発売は今夏を予定)。デザインと同時に公表されたパワートレーンは、純ガソリン仕様と純ディーゼル仕様のV6ツインターボ。つまりハイブリッド仕様もPHEV仕様も用意されていない。
トヨタは今年5月、「2030年には電動車(ハイブリッド、EV、FCV、PHEV)の世界販売台数を年間800万台程度とする」という目標を公開している(従来は2025年に550万台)。ランドクルーザーのモデルサイクルを考えると、9年後の2030年は思いきり新型の販売期間に入っているはず。ではなぜ新型ランクルにハイブリッド仕様が用意されなかったのか? 国沢光宏氏に読み解いていただいた。
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文/国沢光宏 写真/TOYOTA
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■新型ランクル300が電動化しない理由とは?
2021年6月10日、トヨタは新型ランドクルーザーを世界初公開。パワートレインは3.3L V6ディーゼルターボと3.5L V6ガソリンターボ
トヨタ筋から仕入れた情報によれば、新型ランドクルーザー(ランクル300)のメディア対応Q&Aマニュアルの筆頭に、「なんでハイブリッドなどの電動化車両をラインアップしないのか?」という質問に対する答えの項目があるという。いまや環境の時代。東京都のように2030年以降は電動化車両じゃないと登録できない地域も出てきた。
(※編集部註/2020年12月の東京都議会代表質問において、小池百合子都知事が「都内で新車販売される乗用車について、2030年までに純ガソリン仕様車をなくし、すべて電動車にかぎることとする」という目標を発表した)
実際、発表前はランクル300に3,5Lハイブリッド仕様も存在するというウワサが流れていたほど。レクサスLSやクラウンなどに搭載されるV6のハイブリッド、システム出力で345馬力もあるから搭載できないワケじゃないと思う。
ランクル300のディーゼルエンジンは309馬力。動力性能的だって問題ないレベルになるだろう。
それでも採用しなかった。
理由は簡単。総合的に考えると二酸化炭素の排出量をあまり減らせないからだ。
写真のモデルは標準車と異なる顔つきを採用。よく見るとグリル内に「GR」のロゴが
「THS-II」と呼ばれるトヨタ式のハイブリッド、高速巡航時は普通のエンジン車と同じでエンジンパワーをそのまま駆動力として使っている。クラウンのような、空気抵抗が少なく&転がり抵抗の小さいタイヤを履いていれば走行抵抗は小さい。
けれどランクル300のように空気抵抗が大きく、転がり抵抗の大きいタイヤを履くと、高速巡航時のエンジン出力が大きくなってしまう。ランクル300で100km/hくらい出すと、クラウンなら160km/h巡航くらいの走行抵抗をイメージしてもらえばよかろう。燃費の良いTHS-IIも、高速巡航すると燃費は一気に悪くなってしまう。
■当分の間はディーゼル車で排出目標をクリアできる
新型ランクル300に搭載される3.3L V6ディーゼルエンジンは最高出力309ps/700Nmを発生する(海外仕様)。これに10速ATが組み合わさる
極悪路を走るときのパワーユニットとしても、苦手とする状況が出てくるようだ。ようするにランクル300のようなヘビーデューティのクルマだと、ハイブリッドはメリットを出せないということ。
いっぽうディーゼルエンジンであれば、こういった問題をすべて解決できた上で、燃費=二酸化炭素排出量も大きく減らせるのだった。
考えていただきたい。我が国における二酸化炭素対応は、クリアすべき2つのゲートがある。9年後の2030年にクリアすべき最初のゲートと言えば「2013年比で46%の削減」。つまり二酸化炭素の排出量を半分くらいに減らしましょう、ということ。ハイブリッドでもディーゼルでもいいから減らせばいい。電動化車両に限定されない。
そして2050年のゲートが「二酸化炭素を増やさない」(カッコよく表現すると「カーボンニュートラル」)。
走行中、二酸化炭素を排出しちゃダメということ。ランクルもこのゲートを通過することになる。しいてもうひとつ理想を挙げるなら、「ただちに二酸化炭素の排出量を減らしたい」--こうした状況に、どう対応しているのか?
まず「ただちに」ということへの対応はディーゼルなんだと思う。
V8のガソリンエンジンしか選べない現行型ランクル200のWLTCモード燃費をみると、6.7km/L。ランクル300の売れ筋はWLTCで10km/L程度のディーゼルになるだろう。乗り換えたら、実用燃費だと間違いなく30%以上改善される。ハイブリッドをしのぐ燃費改善率といっていい。現行モデルから新型のディーゼルに乗り換えたら、それだけで30%近い二酸化炭素削減になるワケ(下取られたランクル200の大半は海外に出て行く)。
直近の「やるべきこと」は、ディーゼルの投入で充分達成可能。
■「陸の王者」には代替燃料がピッタリ!?
「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」として、これまで世界中で高い評価を獲得してきたランドクルーザー。砂漠地帯など補給地が少ない地域ではバイオエタノールの使用も選択肢に入るだろう
2013年比46%減が要求される次なるゲートがやってくるまでにハイブリッドや電気自動車を作ればいいか?
これは簡単じゃない。そもそも「遠くまで行って帰ってくる」というニーズのランクル300と、電気自動車の相性はよくない。前述のとおり、ハイブリッド化しても二酸化炭素の排出量を半分にできるという雰囲気もなし。
そこで出てくるのが二酸化炭素を増やさないeフューエルやバイオエタノール、バイオディーゼルといった代替燃料である。
航空機や船舶など、電動化出来ない移動手段は、大気中の二酸化炭素を植物やプランクトンなどから回収し、そこから燃料にした、広い意味でのeフューエルを使うことになる。ブラジルなどで使われているガソリン代替のバイオエタノールや欧州のバイオディーゼル、二酸化炭素の排出量は、ゼロ(カーボンリサイクル)とされる。
当然ながら(そうした代替燃料を)大量に作るだろう。ガソリンや軽油より高くなるだろうから乗用車用としては使いにくいが、ランクルのような特殊用途のクルマなら多少割高でも使用せざるを得ない。
2030年で半分をバイオ系にし、2050年時点で100%バイオ系にすればカーボンニュートラルになる。エンジンなど主要ユニットは小改造で対応できます。
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みんなのコメント
代替燃料の件もユーザーが普通のガソリンや軽油を入れたら意味無いしスタンドでも売ってないので、ハイブリッド化しない理由になってない。
ハッキリ「俺には分からない」と言えばいいのに。知らないのに記事を書くからいつもバカにされる。