メルセデス・ベンツをモータースポーツ界に呼び戻した伝説のラリーカー
2025年4月13日、英国チチェスター近郊のグッドウッド・サーキットにて開催されたエクスクルーシヴなレースイベント「グッドウッド・メンバーズミーティング」。その公式オークションとして行われた、名門「ボナムズ」社の「GOODWOOD Members Meeting 2025」オークションでは、かつてWRC(世界ラリー選手権)を沸かせつつも、退役後の足跡が長らく不明となっていたメルセデス・ベンツの伝説的ラリーマシン「450SLC5.0」の元ワークスカーを出品。世界的な話題を提供することになりました。
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メルセデスのWRC参戦を果たすために開発されたスペシャルマシン
メルセデス・ベンツは、1955年のル・マン24時間レースにおける歴史的大惨事を引き起こしてしまった道義的責任を取るかたちで、じつに四半世紀以上にわたり、あらゆるモータースポーツから完全に一線を引いていた。
ところが1977年、同社は1978年シーズンの世界ラリー選手権の出場資格となる「FIAグループ2」ホモロゲーション要件を満たす「450SLC」を発表し、国際ラリーシーンにワークスエントリーするという、サプライズ的な発表を行う。
長大なボンネットの下には、完全新設計となるオールアルミ製5L V型8気筒SOHCエンジンが搭載され、オートマティックトランスミッションが組み合わされた。またボディには、エーリッヒ・ヴァクセンベルガー博士の設計による軽量合金製のボンネットパネルとトランクパネルを採用。ただし左右ドアはスチールのままとされながらも、市販モデルよりも著しく薄いアウターパネルに換装されていた。
ダイムラー・ベンツ社(当時)はWRC選手権用に19台の「450SLC 5.0」を限定生産し、そのうちの7台がワークスカーとして指定された。
「ラリー・コダスール」に1度だけ出走し2位入賞
このほどボナムズ「GOODWOOD Members Meeting 2025」オークションに出品されたシャシーナンバー「107 026 12 000 626」。この車両は、1979年2月2日に完成した7台のワークス・ラリーカーのうちの1台である。
「#626」は1979年4月にワークスチームに配備され、このシーズンのWRC第4戦「イーストアフリカ・サファリラリー」ではプラクティスカーとして活躍。名手ハンヌ・ミッコラとワークス450SLC5.0の2位入賞に貢献する。蛇足ながら、この年のサファリラリーで首位を走っていたミッコラを終盤で追い越し、総合優勝を飾ったのは「ダットサン160J(日産バイオレットA10)」を駆るシェカー・メッタであった。
その後、コートジボワールで開催されたWRC最終戦「バンダマ・ラリー」では、再びプラクティスカーとしての役割を果たし、メルセデス・ベンツにとって歴史的な戦果となる1-2-3-4フィニッシュを飾ったことにも貢献した。
シャシーNo.#626は、1980年に南米初のWRC戦としてアルゼンチンで開催された「ラリー・コダスール」に1度だけ出走し、ハンヌ・ミッコラとコ・ドライバーのアルネ・ヘルツが18本の長いステージを走りきって2位に入賞。この表彰台フィニッシュにより、ミッコラは同年のWRC選手権でドライバー部門2位を獲得する。
そして、この目覚ましい戦果を記念して、ミッコラのサインが入った「#626」のオフィシャルフォトまで販売されることになった、といわれている個体なのだ。
1度は解体されつつも、今世紀に入ってフルレストア
メルセデス・ベンツのワークスカー「#626」のその後については、1981年3月27日付で「Verschrottet(廃棄)」と記録されている。今回のオークション出品者でもある現オーナーは、このときいったん解体されたと考えている。
ダイムラー・ベンツ社によるWRCラリー参戦プログラムの終了後、プロジェクトの責任者であるヴァクセンベルガー博士はすべての(部分的に解体された)ワークスカーと設備をアルベルト・プフールなる人物に売却した。情報筋によると、この取引には6台のSLC(「626」を含む)、大量のスペアパーツ、600本のタイヤが含まれていた。
その後は、四半世紀以上にわたって消息を絶つことになる。しかし、2007年になるとスロバキアに本拠を置く「SLCレーシング」社が、ドキュメント類やパーツ、車両を含むすべてのストックを購入したことにより、再び表舞台に姿を現す。
「メルセデス・ベンツ・クラブ・オブ・アメリカ」に残された2009年の登録資料によると、SLCレーシング社はこの個体(’107 026 12 000 626’)と「107 026 12 000 837」からなる、2台の元ワークスカーの歴史的アイデンティティの所有権を獲得したことになる。
ドイツのプライベートコレクションから出品
そして、いったんは分解されたと思われていた「#626」は、メルセデス・ベンツのスペシャリストである同社によって完全にレストア。1979年シーズンおよび1980年シーズンにダイムラー・ベンツ社のラリープログラムで使用されたワークスマシンを再現するかたちで仕立てられた。
2008年5月20日、レストアを完成させた「#626」は、FIA検査員ロバート・レンナー氏によって精査され、「FIAヒストリカル・テクニカル・パスポート」を取得。さらに2016年1月14日には「メルセデス・ベンツ・フランス」のセドリック・ドゥアバン氏による車検を受け、適合書類が作成されている。
この歴史的なメルセデスのラリーカーは、今回ドイツのプライベートコレクションから出品されたもので、ボナムズ・オークション社では、そのオーナーとの協議のもと12万ポンド~20万ポンド(邦貨換算約2320万円~約3870万円)という、かなり幅の広いエスティメート(推定落札価格)を設定していた。
ところが、4月14日に行われた競売では売り手側が設定したリザーヴ(最低落札価格)には及ばなかったようで、残念ながら流札。現在でも競売前のエスティメートを提示したまま、継続販売となっている。
その歴史的価値からすれば、たとえば「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」のような世界的ビッグイベントに招待されてもおかしくはないレベルの1台。そのあたりを勘案するならば、とくにメルセデスやWRCの熱心な愛好家にとってはなかなかリーズナブルな買い物であるようにも映るだが、いかがなものであろうか……?
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