2022年シーズンは、劇的な形でタイトル争いが決着したスーパーGT・GT300クラス。ここでは、光るところを見せながらも最終戦を前に事実上のタイトル争いから脱落してしまった陣営に、『反省』や『タラ・レバ』などを含めて、2022シーズンを総括してもらった。
第2回は、新型GT3車両『BMW M4 GT3』の導入とミシュランタイヤの装着、そしてBMWワークスドライバーであるアウグスト・ファーフス起用により開幕前から注目を集めていたStudie BMW M4陣営だ。
インターバルで見つけた「ウエイトを感じない」セットアップ【2022年GT300“反省”レビュー(1)UPGARAGE NSX GT3】
■Q1落ちは一度だけ。予選では速さを発揮も……
2022年のStudie BMW M4は、第1戦岡山の予選でいきなり7番手に食い込み、周囲から警戒される存在となった。ライバル陣営からは、「ここで速いんだから、鈴鹿でも絶対に速い」との声が聞かれていた。
果たしてその第3戦鈴鹿では、ファーフス不在のなか、荒聖治/近藤翼のコンビでポールポジションを獲得。そして決勝でも危なげない走りで、M4 GT3導入3戦目にして優勝を遂げたのだ。
新型車両のとミシュランタイヤの導入について、高根裕一郎エンジニアは次のように振り返る。
「先代のM6 GT3よりはトータルでのクルマの素性は上がっていましたが、やはり新型車ゆえのマイナートラブルには見舞われてしまい、実際そのために第2戦は落としてしまいました」
「クルマのパッケージング的に大柄ですので、岡山みたいな小さいコースはあまり適さなく、中高速主体のSUGO、鈴鹿は得意分野だろうとは思っていました」
優勝を飾った鈴鹿以降、8月の2レースでは苦しむことになる。このあたりは第3戦優勝で搭載したサクセスウエイト、そして夏場のコンディションに対して、対応が難しかったようだ。
「タイヤメーカーが変わり、マッチングがしっかりと噛み合えば第3戦のような圧倒的な速さがあったのですが、その後はとくにサクセスウエイトを積んで重量がかさんだことに対して、1年目であるがゆえに合わせきれていなかったという部分がありますね」と高根エンジニア。シーズン前のテストが雪でキャンセルになるなど、新型車両導入に際して充分な走行距離を稼げなかったことも、タイヤ選択含めた面で影響していたようだ。
「とくに8月以降のレースにおいては、予選はそこそこ良かったとしても、決勝で苦しかった部分は多かったですね。BoP(性能調整。スーパーGTでは参加条件)の変更もあって、ウエイト、タイヤ、BoPと、3つのアンマッチが起きてしまうと、まったく箸にも棒にもかからない、という状態でした」
ミシュランは2022年シーズンに向け、前回GT300に参入した2020年とは異なる供給コンセプトを採用した。平たく言えば、2020年は『すでに存在しているスペック』からしか選べなかったのに対し、2022年は『それ以外の先行開発スペック』も選択肢に含まれるようになっており、よりスーパーGTの環境に合わせたタイヤが投入できる体制となったのだ。
このコンセプト変更について高根エンジニアは、「2020年(のミシュラン)は予選ではとても苦しんでいるように見えたのですが、ロングランのアベレージは条件さえ合えば良かった印象でした。今年はより『一歩踏み込んだタイヤ』になったことで、一昨年とは正反対になったと思います」と所見を述べている。
「予選タイムに関しては、パフォーマンスがありました。実際、Q1落ちしたのは1回だけです。その部分では、スーパーGTに適したタイヤだったと思います。その反面、今度はロングランに対して、路面温度やウエイトの面で、センシティブなものになっていました」
新たな車両、新たなタイヤで戦った2022年は、鈴鹿での優勝含めポイント獲得は3戦にとどまったStudie BMW M4。2023年の体制は未発表ながら、「もし同じパッケージで走るとしたら」という仮定で話を向けると、高根エンジニアは次のように希望を込めた。
「来年のカレンダーに大きな変動はなく、今年と同じサーキットで同じ時期にレースが行われます。言い方は悪いですが、今年は半分“当てずっぽう”でやっていた部分が、来年は今年得られたものを有効に使うことができる。1年目からうまくいくとは思っていませんし、我々もそこに期待しています」
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