クレアチンの筋トレ効果以外のメリットとは？ 脳や心臓にもうれしい5つの効能を専門家に訊いた

筋トレの定番サプリメントには、認知機能からエネルギー代謝まで、あなたが思っている以上に多くの効果がある。

クレアチンの効果に関する売り文句はすでに強力だ。この単一成分のサプリメントは、栄養カテゴリーで最も徹底的に研究されている分野のひとつであり、特に筋肉の成長と筋力の向上効果が科学的に示されていることから、週末戦士やエリートアスリートの定番サプリメントとなっている。

アミノ酸の一種であるクレアチンは細胞レベルで作用する。ホスホクレアチンとして細胞に貯蔵され、細胞にとってのエネルギー源となるアデノシン三リン酸（ATP）の生成を促進する。私たちが消費する（そして、ゆっくりではあるが体内で自然に合成する）クレアチンのほとんどは筋肉に貯蔵される。

しかし、クレアチンは脳など体のほかの部位にも貯蔵され、筋肉を肥大させる以上の働きをしている。長年の研究により、クレアチンの作用には、脳機能の向上や認知機能の低下防止から、血糖値のバランス調整、エネルギーレベルの上昇まで、様々な効果があることが明らかになってきた。

「クレアチンは身体的な強さを高める効果で有名ですが、認知力、ミトコンドリア、代謝の面でも同様に効果があります」と、自然療法医で研究者のジーナ・ニック（NMD、PhD）は言う。「パフォーマンスと寿命の両方を向上させるサプリメントに世間の関心がシフトするなか、クレアチンは費用対効果が高く、研究にも裏打ちされており、細胞レベルで健康を改善するための選択肢として際立っています。それでも、脳機能、エネルギー、代謝をサポートするクレアチンの利点は、まだあまり話題にされていません」

以下に、あまり知られていないクレアチンの効果をいくつか紹介しよう。

クレアチンがもたらす5つの健康効果

1. エネルギーを長時間持続させる2. 集中力を高め、認知機能の低下を防ぐ3. 運動時の持久力を高める4. 運動後の回復を早める5. 心臓と循環系をサポートする1. エネルギーを長時間持続させる

体内で必要なエネルギーを供給してくれるATPは、単に体を動かすためだけに用いられるのではない。細胞の「エネルギー通貨」とも呼ばれるATPは、体全体で普遍的なエネルギー源として利用されている。

ATPの前駆体であるクレアチンは、疲労と闘い、エネルギー代謝をサポートすることで、体内のあらゆるシステムを維持するのに役立つ。「朝のカフェインや世の中に出回っている様々なエナジードリンク以外で活を入れる方法をお探しなら、クレアチンをお勧めします。もしかしたら、それらよりも高く評価すべきかもしれません。リスク特性がうんと低いですからね」と、OSF HealthCareのスポーツ医カラン・ライ（MD）は言う。

研究によれば、クレアチンにはグルコース代謝を調整する働きがあるという。これはつまり、一日を通してより安定した持続的なエネルギーレベルが得られることを意味する。「クレアチンは一日のエネルギーレベルを安定させ、持続させる効果があります。これによってより活力を得られ、脱力感を憶えることが少なくなるのです」と、ライは言う。

また、食欲を抑える効果がある代わりに、エネルギー貯蔵と筋肉量を減少させる可能性があるGLP-1などの減量薬を使用している人にとって、クレアチンは特に有効であるとニックは言う。「クレアチンは、除脂肪組織（筋肉や内臓など体脂肪以外の体内組織）を維持し、細胞エネルギーをサポートすることによって、これらの副作用に対抗するのに役立ちます」と、彼女は言う。

2. 集中力を高め、認知機能の低下を防ぐ

体内のホスホクレアチンの約5%は脳に貯蔵され、そこでは細胞がエネルギー源としてATPに大きく依存している。クレアチンを補給すると、脳細胞は余分な燃料をうまく利用し、最適な効果をもたらすようになる。

「クレアチンが蓄積されることで、認知力、気分、記憶力、感情などに好影響が出ます」と、管理栄養士でアメリカ栄養士会のスポークスパーソンであるヴァネッサ・キング（MS、RDN）は言う。ある臨床試験では、クレアチンのサプリメントを補給した人の認知・記憶テストのスコアに最大50%の改善が見られた。また別の研究では、睡眠不足の被験者がクレアチンを摂取したところ、短期記憶に関わる課題の成績が大幅に向上し、認知プロセスにかかる時間や反応速度も改善したという。

クレアチンは脳を活性化させるだけでなく、認知機能の低下などを防ぐ神経保護的な役割を果たすことで、脳の防御力を強化するのにも役立つかもしれない。ある臨床試験では、クレアチンが特定の神経変性疾患の進行を遅らせるのに役立つ可能性が示唆されている。また、いくつかの研究では、クレアチンがうつ病に対抗する強力な味方であることが判明している。「クレアチンの認知機能に対する効果は、もっと知られていいと思います」と、ライは言う。

3. 運動時の持久力を高める

クレアチンは筋肉や筋力を増強するためのツールとして広く知られているが、このサプリメントは有酸素運動や持久系スポーツのアスリートにとっても貴重なアドバンテージとなる。「（クレアチンが筋力増強のみに役立つという）思い込みが今後も払拭されることを願っています」と、ライは言う。「持久系スポーツの観点から、（持久力に優れた）遅筋繊維と（瞬発力に優れた）速筋繊維の違いについて考えてみると、どちらもエネルギーの生産にクレアチンを利用していることに変わりはありません」

クレアチンは、高強度で長時間の運動をサポートするために使用される燃料の一種である、グリコーゲンを貯蔵する筋肉の容量を増加させる。2012年の研究によると、クレアチンはまた、有酸素持久力とパワー出力を向上させ（トライアスロン選手にはうれしい情報だ）、身体の酸素消費効率を高める可能性があるという。

「クレアチンの摂取をVO2max（最大酸素摂取量）改善を目的とした運動と併用すると、運動単独よりも大きな向上が見られるというデータもあります」と、ライは言う。クレアチンは持久系アスリートにとって、暑さのなかで運動する際、体温を下げることで疲労困憊までの時間を延ばすのに役立つという研究結果もある。

4. 運動後の回復を早める

筋トレ、有酸素運動、持久系スポーツ、あるいは草野球など、どのような運動をしている場合でも、クレアチンはセッション間の筋肉の回復を早めるのに効果的なようだ。「わかっているのは、クレアチンは筋肉がグリコーゲンを蓄えるのを助けるということ。それも、ほかのどんなポストワークアウト・サプリメントよりも効果があります。運動後の回復に非常に有効なのです」と、キングは言う。

また、クレアチンが運動後の筋繊維の修復を担う細胞の助けになることもわかっている。これらのファクターが組み合わさることで運動後の回復が促進され、自転車やベンチ、バスケットボールのコートへと、より早く戻ることができるようになるのだ。

また、最近の研究で、クレアチンは激しい運動後の回復を早めると同時に、その後の数時間から数日間の筋肉痛を軽減することもわかった。この研究の著者は、クレアチンがケガからの回復を早める効果的なツールになる可能性さえ示唆している。

5. 心臓と循環系をサポートする

体内のクレアチンのほとんどは筋肉に貯蔵されるが、その筋肉にはもちろん心臓も含まれる。実際、ATPは心臓の主要なエネルギー源であり、クレアチンサプリメントが健康な心拍をサポートし、心臓の全体的な働きの効率を高めるという研究報告もある。

クレアチンは、血液中に含まれる脂肪の一種であるトリグリセリド（中性脂肪ともいう）のレベルを下げるのを助けることが示されている。トリグリセリドは高濃度になると動脈硬化や肥厚の原因となり、心臓病や脳卒中のリスクを高めると同時に、認知機能から性機能まであらゆる身体機能に影響を及ぼす。

また、クレアチンにはホモシステイン（血液中に含まれるアミノ酸の一種）のレベルを下げる働きもある。ホモシステインは体内で自然に合成されるアミノ酸で、動脈の内膜を傷つけ、血栓や冠動脈疾患を引き起こす可能性があるものだ。

「効能の観点から言うと、クレアチンは1～4週間以内で健康に改善が見られるようになるというように、比較的短期間で効果が現れることが示されています」と、ライは言う。ひとつだけ留意すべきこととして、クレアチンを摂取したいという人は事前に医師に相談するようにと、彼は付け加える。腎臓や肝臓に問題がある場合は特に注意しよう。

From GQ.COM

By Dean Stattmann
Translated and Adapted by Yuzuru Todayama