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山本尚貴がバトンから受け取った貴重な2年間の財産「みんなが思っている以上に彼のすごさを感じた」

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山本尚貴がバトンから受け取った貴重な2年間の財産「みんなが思っている以上に彼のすごさを感じた」

 昨年、初めてのコンビながらGT500でチャンピオンとなった山本尚貴とジェンソン・バトンのRAYBRIG NSX-GT。今年は開幕戦で勝利が目前に迫りながらNSX同士で接触を受けて勝利を逃すと、その後は勝利に届くことなく、未勝利のドライバーズランキング8位でシーズンを終えることになった。そしてシーズン終盤にバトンはスーパーGT離脱を発表し、日本を去ることになった。バトンとコンビを組んだ山本尚貴に、今シーズンの最終戦についてとともに、スーパーGTで過ごしたバトンとの2年間について聞いた。

「クルマのセットアップはすごくよかったのですが、タイヤのピックアップ(自分のタイヤかすが取れずに表面にくっついて凹凸となりグリップダウンを招く)が走り初めの段階から出てしまいました。ピックアップはタイヤだけの問題ではなくて、クルマのエアロとか車高、タイヤの内圧の関係とかいろいろな要因で起きる。クルマが抜群に良かっただけけに、非常に残園な結果ですね」と、6位で終えた最終戦のレースを振り返る山本。

ジェンソン・バトンがファン、チーム、日本、ホンダへの感謝を語る「2年間、本当に楽しかった」

 今年のRAYBRIGは要所要所で速さを見せながら、決勝では接触やクラッシュで結果を残すことができなかった。

「それがレースですし、それがGT。やはり速さ以上に強さが求められるのがスーパーGTですよね。そういう意味ではチャンピオンを獲った6号車(WAKO'S 4CR LC500)はやっぱり1年間通して強かったと思います」

 山本の目の前ではGT500新チャンピオンとなった大嶋和也と山下健太が表彰台に上がり、溢れんばかりの賛美を受けていた。

「やっぱり他のチーム、ドライバーがチャンピオンを獲って喜ぶ姿を見ると悔しいですね。このまま黙って見ているわけにはいかない。また、あの場所に戻りたいし、また1番を付けて走りたいですね」と山本。

 RAYBRIGに限らず、ホンダ陣営としても今季はドライバーズランキング最高位がKEIHIN NSX-GTの7位、勝利は開幕戦の1勝のみに終わってしまった。ホンダとしても悔しいシーズンとなっただけに、新車両となるFR化したNSXでの2020年シーズンの戦いが早くも期待される。だが、来季の山本にはこれまで2年間を共にした相棒がいない。バトンは今年いっぱいでのスーパーGT離脱を発表し、山本尚貴とのコンビは2年で終了することになった。

 F1ワールドチャンピオンと過ごした2年間を、山本はどのように振り返るのか。バトンから受けた影響にはどのようなものがあったのか。

「それは……いっぱいありますので……もうちょっと落ち着いてから話したいです」とレース直後の山本。それでも、感謝とともにバトンへの想いの一部を話した。

「彼とチャンピオンが獲れたというのも嬉しいんですけど、スーパーGTではふたりのドライバーがお互いを尊重し合って戦わないとチャンピオンは獲れない。彼は今まで、そういう経験がないなかでスーパーGTに来て、僕との信頼関係を構築することがチャンピオンへの近道だということを瞬時に感じ取ってくれました」と山本。


「彼は自分が速く走るための努力はもちろん、逆に僕を速く走らせるための努力もしてくれた。そういうことを考えてくれるドライバーが側にいてくれると、やっぱり僕も彼がもっといい環境で走れるように努力したいと思うようになる。そういう相乗効果が去年の結果につながったと思っています。今年、結果は良くなかったですけど、昨年以上の信頼関係を築けて1年間のシーズンを戦えたというのは、本当にスーパーGTの大切なパートナーシップの部分を、改めて彼に教わったと思いますね」と、バトンの姿勢に感謝する山本。

■2年間で変わったバトンへの印象。山本尚貴「彼にはなれないけど、彼みたいなドライバーになりたいなと近くにいて思いました」
 山本にとっては、スーパーGTのカテゴリーを越えて、日本GPの鈴鹿のFP1でF1マシンをドライブする機会を得られたことにも、バトンの影響が大きかった。

「F1に乗れたというのも、彼と一緒にチャンピオンを獲れなかったらスーパーライセンスは取れなかっただろうし、彼と組めたことで、僕の名前が彼を通じてF1の世界の人たちにも早く知れ渡ることができた」

「F1のパドックに行ったときに、僕はF1では無名なはずなんですけど『ジェンソンと組んでいる山本だよね』と言ってくる人が本当に多くいるのを、ヨーロッパに行くたびに感じていました。そのとき、そのときには分からなかったけれども、結果的にはこれまでの出来事や縁がすべてつながっているように感じます。F1に乗れたのもジェンソンと組めたからですし、F1マシンにあれだけ早く順応できたのも、ジェンソンがそれまでF1の世界で築き上げてくれた彼のパーソナリティがあるから。F1のパドックの人たちもすぐに僕のことを受け入れてくれた。なにかこう、いろいろつながっているなというのを感じる2年間でしたね」

 バトンとコンビを組む2年前、山本はここまでバトンの存在が自分のメンタリティに影響を及ぼすとは、想像すらしていなかった。

「もちろん、組む前も素晴らしい選手なんだろうなと思っていましたけど、実際に組んだ人じゃないと彼のすごさはわからないと思います。彼には彼にしかわからないプレッシャーと環境というのがあるので、それを間近で感じながら彼のタフな姿を見ることができました。僕はみんなが思っている以上の彼のすごさを隣で感じることができた、日本人で唯一のドライバーだと思います」

 バトンからは別の一面からの影響も受けた。人気者であり、実力もあり、そして人格者として評判のバトンからは、強さや誠実さだけでなく、ドライバーとしてのエゴや弱さをも共有することで、山本はドライバーとしてまたひとつ、大きなステップを踏むことになったのかもしれない。

「もちろん、外には出ていない彼の黒い部分もあるんですけど(苦笑)、それはレーサーとしてはあたり前の部分でもありますし、逆に彼も普通のレーサーと同じように感じている部分があることがわかって、僕もそれでいいんだと理解できた部分がある。彼からは、みんなが見ているもの以上のものを感じることができたし、学ばさせてもらいました。自分の一生の財産になりましたね」と山本。

 スーパーGTだけでなく、スーパーフォーミュラを含めて、この2年間の山本は名実ともに国内トップドライバーとなっただけでなく、国内モータースポーツのあり方や提言など、ファンへの責任を感じる言動が多くなった。この背景にもかつてGPDA、F1ドライバー協会などに積極的に関わったバトンの影響があるのかもしれない。

「今は何もないと思っている縁も、将来的にどこかでつながる可能性があるし、本当に一瞬一瞬、無駄なモノはないないということを改めて気づかせてくれた2年間でした。もちろん、彼にはなれないけど、彼みたいなドライバーになりたいなと近くにいて思いました。これはやっぱり、一緒に組む前と組んだ後では全然、感じていたことは違っていたと思います」

 そのバトンも、来年はいない。来シーズン、マシンを一新して巻き返しを計るホンダ陣営のなかで、山本尚貴は新しいコンビとともにどんな新しい姿でスーパーGTに臨むのか。これまでは節目節目で涙を見せることが多かった山本だったが、スーパーGT最終戦のもてぎでは、その目はしっかりと前を向いていた。

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