もくじ
決勝・前編
ー ひとことでいえば「いいヤツ」なCX-5
ー SUVらしい「無敵感」満点のXC40
ー ホットなハンドリングのX1
ー スカンジナビアンの快適性は秀逸
ジャガーE-PACE 初試乗 まずは2ℓ直4ガソリンから 独特な使命とは?
決勝・後編
ー プレミアム勢に劣らぬマツダのクオリティ
ー エンジンパワーは力関係を変えるか
ー 三者三様の乗り味
ー 勝因は目的に見合った仕上がり
ひとことでいえば「いいヤツ」なCX-5
いよいよ決勝が始まる。予選を勝ち抜いたのは、集合写真で姿をみせながらも、ここまで名前の挙がっていない3台だ。いずれ劣らぬ実力者揃いであるが、それぞれが独自の異なる狙いを持つクルマたちである。はたして、最もその目指すものに納得でき、またその狙い通りに仕上がっているのはどれか。最終結果はさておき、まずは順不同で、それぞれを読み解いていこう。
最初に取り上げるのは、コストパフォーマンスに優れ、運動性にも秀でた元気なオールラウンダー、マツダCX-5だ。好みはあるだろうが、ひとことでいえば「いいヤツ」といったところか。試乗車は、2.2ℓディーゼルにATと4WDを組み合わせた最上級仕様で、トルクではほとんどのライバルを寄せ付けない。
そして、真の使い勝手がいいファミリーカーに求められる実用面の要件を満たしている。それは大人4人が座れるシートと、500ℓ以上の容量を持つ荷室だ。さらに詳しく見ていくと、キャビンの上質感ある仕上げと、ドライバビリティと洗練性、安定性が調和した巧みなチューンで、予選落ちしたクルマたちとは一線を画する。3万3000ポンドほどという値付けが安く感じられるほどだ。
SUVらしい「無敵感」満点のXC40
対してボルボXC40の、今回用意したD4 AWDファースト・エディションがお値段以上だというひとは、おそらくそう多くはないだろう。もっともそれは、発売記念に設定されるフル装備の特別仕様車には付きものの話。今後の売れ筋になるだろうグレードは、CX-5と価格的に競合することになるはずだ。
この3台の中にあって、XC40だけの魅力は多く、その中核をなすのは「街乗りヨンク」の典型的な使命ともいえるもの。それだけに、このボルボはそうやすやすとライバルに屈しないクルマとなるだろう。エクステリアは新鮮で、大胆で、カリスマ性を感じさせる。
インテリアは創意に満ち、魅惑的で、いかにも高価そうに感じられる。ドライビングポジションにも中途半端さはなく、セダンやコンパクトカーのルーフを見下ろせるくらい高い。インフォテイメントを含め便利なアイテムは充実しているし、低速での乗り心地は快適。なにより運転していて、SUV特有の無敵感が満喫できる。
ホットなハンドリングのX1
3台目は、今回のサプライズだ。いつもならAUTOCAR好みの本命候補に挙がることの多いBMWが、この中では大穴的な位置づけなのだから。X1 xDrive25dの、なんといってもMスポーツ仕様であるにもかかわらずだ。
なぜか。まず、コンパクトSUVの基準に照らすと、X1は小さく、低く、狭い部類のクルマだ。求められるレベルの快適性や居住性の確保に苦労したであろうことが、このクルマには見て取れる。
次に、ユーティリティが求められる小型車としては、サスペンションは張り詰め、ハンドリングは敏感で、ボディコントロールはタイトであり、あまりにもドライバーズカー志向に過ぎる。ディーゼルを積むコンパクトSUVを選ぶようなユーザーは、231psで0-100km/h7秒切りといった数字やホットハッチのような身のこなしなど望んでいないのだ。われわれの好みではあっても、今回の趣旨にはそぐわないクルマが、このX1なのである。
スカンジナビアンの快適性は秀逸
7台の候補をふるいにかけた予選ラウンドより、残ったこの3台での比較テストの方がしっくりくるように思えた。ロンドン南西部を出発し、ミッドランズを目指す400kmあまりの道のりは、撮影に適し、決勝進出者たちのさまざまなチャレンジを可能にする、空いた道を求めてのことだ。行程は高速道路少々、大半はA級道路で、その後また少々のB級道路。そして、そのほとんどがやはり英国の冬らしく、陰気で湿っぽい灰色に閉ざされた中で進んでいった。
そんな天候を避けるのに最適なのは、どのクルマのキャビンだろうか。その答えは車内のどこに座っているかに多少左右されるが、XC40が一歩抜きんでているのは間違いない。これは最も高いヒップポイントと視点を持つボルボで、最高に安楽な運転席と、最も包み込むようでラグジュアリーな雰囲気のインテリアも備えているのだ。
BMWのシートは驚くほど調整が利くが、幅が狭く、時として快適でないこともある。マツダのそれはやわらかくワイドだが、ボルボほどには、形状がしっくりきて長く乗っていても快適、なものではない。
後編につづく。
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