ヤマハSR400とセローを足して割ったような味付け!が楽しくないわけがない
ロイヤルエンフィールドのスクラム411は、同社のヒマラヤをベースにしたストリートスクランブラー。車格は大柄だがバランスがとてもよく、ライダーを急かさない特性の空冷単気筒は、味わいと十分な力強さを約束。411ccのスクラム411に乗るには大型二輪免許は必要だが、空冷単気筒好きは必見の1台だ!
【ロイヤルエンフィールド スーパーメテオ650 インプレ】バイクらしさとは何か? イージークルーザーとは何か? その答えがここにある
―― 早朝の都内がツーリングになるのが、気軽に走り出せるスクラム411の良いところ。
微妙に大型。でも、こだわる価値はある。
この日、早朝の都内は空気がピシッと音を立てて凍ってしまいそうな冷気に包まれていた。でも、こんな日は、空冷単気筒が抜群に気持ちが良い。空気が圧縮されてガソリンと燃焼する感じがその日の気温や湿度で変わることを感じられるのは、こういった昔ながらの設計のエンジンの特権だろう。
スクラム411のエンジンは、排気量411ccのロングストローク単気筒。日本では免許区分的にとても微妙である。しかし411の数値には意味があり、これはインドのヒマラヤを走るために生まれた排気量。スクラム411のベースはアドベンチャーモデルのヒマラヤで、その血が流れているのである。
僕は、2022年8月に実際にヒマラヤに行って驚いた。毎日1000台以上のバイクとすれ違うのだが、その大半がロイヤルエンフィールドのヒマラヤなのだ。
「これよりも大きくても小さくてもダメ。この排気量じゃないとダメなんだ」と、ヒマラヤの開発陣は教えてくれた。ヒマラヤで走っているライダーたちも「ヒマラヤじゃないとヒマラヤを登れないんだ」と口を揃える。そのエンジンは、ヒマラヤの刻一刻と変わる路面に瞬時に応えてくれた。
砂地、ガレ場、さらには川渡りまで、エンジンの1発1発の爆発をトルクやパワーに変え、その力は確実に路面を掴むのだ。これが、たまらなく心強かった。
そして、スクラム411は日本でもすべてのシーンで確実に路面を掴んでくれた。これがヒマラヤの血が流れていることを実感させてくれる。大型免許を取得したら大排気量モデルに乗りたくなる気持ちもわかるが、こんなマニアックなモデルを選ぶのはどうだろう?
どのメーカーにもないパッケージだが、僕は走り出した瞬間にヤマハSR400とセローを足したようなバイクだなぁ、と思った。これが楽しくないわけがない。
―― ストリートスクランブラーらしく市街地で絵になる。フロントタイヤはヒマラヤの21インチから19インチに変更することで重心とロール軸が下がり、軽快さを増した。
―― エンジンは、SOHC2バルブのロングストローク単気筒。クランクやフライホイールマスの使い方が上手いのは他モデルと同様。
バイクとの対話を楽しみながら一体感を高めよう
走り出した直後は、バイクとライダーが互いにその日のコンディションを確認しながら走っていく。路地でライダーの体重がのる感覚、サスペンンションが動く感覚、タイヤのグリップ感などでコミュニケーションをとりながら、バイクとライダーの一体感を高めていく。そんな一連のやりとりが、スクラム411はとても楽しい。時速5km/hくらいの、走り出した瞬間から楽しいのはとても良いことだ。
―― 車体やタンクはヒマラヤを踏襲しつつ、まったく別物のバイクとなったスクラム411。
各部は決して高性能なパーツで構成されているわけではないが、バランスが良いのだ。すべての動きがわかりやすく、僕の身体にスッと馴染んでくる。キャリアのあるライダーならもしかしたら懐かしさすら覚えるかもしれない。そんな昔ながらのバイクらしさもあるのだ。
78×86mmのボア×ストロークを持つロングストローク単気筒は、振動がなくそれでいてロングストロークとは思えないレスポンスを見せる。例えば生産を終了したヤマハSR400のボア×ストロークは87×67.2mmのショートストロークだが、SR400よりもスクラム411はトルクフルなままレスポンスも良く、振動も少ない。
洗練されている感じはしないが、適度にガサツな感じもとても良い。高いギヤで2000~3000rpmからスロットルを大きく開けたときのトラクションもよく、低いギヤで5000、6000rpmまで回した時は胸が空くような加速を見せてくれる。
車体は排気量の割に大柄だが、身長165cmの僕でも持て余すようなことはない。ハンドリングはベースとなったヒマラヤよりも軽快でスポーティ。市街地をリズミカルに駆け抜ける。サスペンションのストロークもロードバイクにしては長く、乗り心地も良い。これなら多少の未舗装路もいけるはずだ。
高速道路にも乗ってみたが、80km/hだと心地よく、空冷単気筒にしては100km/h巡航もラク。120km/h巡航になると振動が気になってくるができなくはない。
―― 身長165cm、体重65kgでこんな感じ。排気量の割には車体は大柄だが、とても扱いやすい。
―― オフ車でもロードバイクでもない、独特の感性で生まれたスクラム411。走破性が高く、このサスペンションなら未舗装路も行けそうだ。
自分の価値観がフィットするバイクを見つけたい
せっかく大型二輪免許を持っているなら、溢れ出すスペックに傾注するのも良いと思う。フル電子制御でバイク任せの走りを楽しむのも良いと思う。でもどうだろう? 気軽に走り出せて、日常で恍惚するシーンが多いのはスクラム411のような気もするのだ。ここにオーセンティックなバイク作りを貫くロイヤルエンフィールドらしさがある。
大型免許があるのに、スクラム411を選ぶのはかなりマニアック。日本でメジャーな存在になることはないだろうが、兄貴分のヒマラヤも含めてここに自分の趣味を投影するのはとてもカッコいいと思うのだ。
もし市街地などでスクラム411に乗っているライダーを見たら、僕はその人はとても趣味性が高い方だと思い、思わず服装や持ち物などもチェックしてしまうと思う。人と違うモノ……そんな安っぽい価値観ではなく、もっと何か深いこだわりを感じるからだ。
気になる方はロイヤルエンフィールド東京ショールームで試乗もできるのでぜひ。
実車を見たい方は大阪、東京、名古屋のモーターサイクルショーを訪ねてみるのをオススメする。
―― デザインもロゴの配置も独特。車両のR&Dだけでなく、デザインもインドやイギリスのテックセンターで行われている。
―― 単気筒らしいスリムな車体。ヒマラヤよりもとっつきやすく、多少だが足着き性も良い。
―― ブレーキはバイブレ製。リヤサスはリンク式のモノショック。前後サスペンションは不必要に柔らかいところがなく、レスポンスのよいセッティングが施される。
―― スピードメーターのみのシンプルなメーターまわり。ちなみにヒマラヤはタコメーターを装備する。フロントカウルは独特の形状。
―― タイヤはインドのシアット製。未舗装路もいけるデザイン。411ccの排気量はハードルが高いかもしれないが、ロイヤルエンフィールドのこだわりを是非とも感じ取っていただきたい。
―― バイクに乗りたい! そんな時、すぐに走り出せるのがスクラム411最大の魅力。
スクラム411のカラーバリエーションを見てみよう!
―― WHITE FLAME/85万3600円
―― SILVER SPIRIT/85万3600円
―― GRAPHITE RED/83万8200円
―― GRAPHITE YELLOW/83万8200円
―― GRAPHITE BLUE/83万8200円
―― SKYLINE BLUE /84万5900円
―― BLAZING BLACK/84万5900円
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みんなのコメント
名言。刺さって撃たれた。欲しくなった。実物見に行ってみたいと思った。
バイクもいいけどやっぱりライターってすごいな。着眼点と紡いだ言葉で人を刺激する。こういう文化が末永く残りますように。