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“アメリカン・スポーツ”は驚きの進化を遂げた!──新型シボレー・コルベットの大胆な変貌とは?

日本に上陸した新型シボレー「コルベット」に触れた今尾直樹の印象とは? 大量のバックオーダーを抱えている人気の理由も考えた。

目玉は5台の新型コルベット

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5月最後の土曜日、新型シボレー・コルベットの日本仕様が富士スピードウェイで初披露された。1953年の発表以来、初めてミドシップに進化した「アメリカズ・スポーツカー」、コルベットの8代目、略称C8を、霊峰富士も寿いでいるような快晴に恵まれ、コロナ禍の気鬱もしばし吹き飛ぶ心持ちがした。

もともと今回のイベントはC8の納車を心待ちにしている顧客を富士スピードウェイに招き、到着したばかりの日本向け右ハンドル(RHD)のC8に触れてもらおう、とGMジャパンが企画したものである。目玉は、清水和夫さんらプロフェッショナル・ドライバーによるタクシー走行で、そのために5台のC8が用意された。

ミドシップ化に当たって、あえて伝統的な6.2リッターV型8気筒ガソリンOHVを選んだのは、コルベットらしさを残すためだったに違いない。それ以外はまったく新開発で、前後ダブル・ウィッシュボーンのサスペンションは、これまた伝統のリーフ・スプリングを捨ててコイル・スプリングを採用。ハシゴ型フレームもやめて、アルミ製のバスタブ型に変更している。

サーキット走行に備えてドライ・サンプ化された6153ccのV型8気筒ガソリンOHV直噴自然吸気ユニットは、最高出力495psと最大トルク637Nmを発揮し、8速DCTとの組み合わせで1526kgの軽量ボディを0~60mph(96.5606km/h)2.9秒で加速せしめ、最高速197mph(317.041km/h)に到達させる。富士のストレート・エンドでは300km/hに達するはずで、もしもこのGMジャパンの企画が実行されていれば、参加者たちにとってはプライスレスな思い出になっただろう。

ところが例の「緊急事態宣言」により、主催者のGMジャパンは、これを無観客のオンライン・イベントに切り替える決断をくだした。関係者、顧客のみなさんにとっては残念無念だったろうけれど、こればかりは致し方ない。

おかげで、と申し上げるのもなんですけれど、メディアのひとりとして参加した筆者は眼福のひとときを味わえた。色とりどりのC8の現物を6台も一挙に見られ、運転席に座ることもできたからだ。

ミドシップ化の恩恵

記者会見場のパドックにゼウスブロンズメタリックというシブいボディ色の「2LT」が1台展示してあり、その隣のパドックには5台が並んでいた。そのうち「3LT」のクーペが3台、コンバーチブルが2台で、コンバーチブルは本邦初公開。

クーペは2020年1月の東京オートサロンで国内発表を済ませていたけれど、このときは左ハンドルだった。トリムの違いで2LT(1180万円)と3LT(1400万円)の2タイプがあるが、基本性能は同じで、タイヤ&ホイールのサイズも変わらない。

外から見ての識別ポイントは、ドア・ミラーのケースがボディと同色かブラックか、あるいはホイールがヒトデ型か、サクラの花びらと5本スポークを合わせた感じか、といったところで、2LTは内装も含めてシンプルなところが、3LTはそれに較べるとちょっぴり複雑なところが、それぞれにステキだ。

コンバーチブルは2020年に2021年モデルとして本国で発表されたもので、コルベット史上初のリトラクタブル・ハードトップである。クーペもルーフの部分は手動で脱着できるけれど、コンバーチブルでは自動で、開閉に16秒しか要さない。48km/hまでであれば走行時も作動する。しょっちゅう開け閉めしたいひと向きだ。車重が46kgしか増えていないこともあって、クーペと同等の性能を誇る。価格は1550万円と法外に高くはない。

コルベット史上初のRHD(右ハンドル)が実現したのは、ミドシップ化によるところが大きい。フロントにエンジンがないから、ステアリングのシャフトを左右どちらからでも通しやすい。ミドシップには意外なメリットもあったのだ。

コルベットとモータースポーツの関係は1950年代から密接で、それというのも、「コルベットの父」と称される、ゾーラ・アーカス=ダントフの存在が大きい。1905年にベルギーで生まれ、レニングラードで育って、ベルリンで教育を受けたこのGMの伝説のエンジニアは、レーシング・ドライバーでもあり、ポルシェ「550」を駆って、1954年のル・マン24時間耐久レースでクラス優勝を遂げるほどの腕を持っていた。

その彼がカタチだけのスポーツカーだったコルベットをペブル・ビーチやシーブリングに連れて行き、徹底的に鍛え直すことで、真のスポーツカーへと変貌させたのである。コルベットのミドシップ化は、「コルベットの父」の積年の理想であり、夢だった。彼は1950年代からコルベットのミドシップ化を試み、GMは1960年代からコルベットのコンセプト・カーをしばしば世に問うた。

ミドシップ化は既定路線だった?

いささか余談ながら、8代目にしてミドシップになった、と2019年にそう知ったとき、筆者は、ああ、ついに……と思った。でも、ホントにやるとは予想していなかった。

あれは先代、略称C7が発表されたデトロイト・ショウのおりだから、2013年1月のことである。デトロイトで発表前夜に開かれたコルベットのオウナーズ・クラブ主催のイベントに筆者はたまさか参加し、C7のチーフ・エンジニアのタッジ・ジェクターとオウナーたちとのあいだで交わされた熱いやりとりを、うろ覚えながらに覚えている。

このとき、クリント・イーストウッドを思わせる風貌のチーフ・エンジニアはミドシップを検討したと言明した。それは「フロント・エンジンではレースで勝ちにくくなっている」からで、それでもC7をミドシップにしなかったのは、コルベットは実用的なスポーツカーでなければならないと考えたからだ、と述べた。「フロント・エンジンのほうがミドシップより居住空間やラゲッジ・スペースの面で優れているからね」と、エンジニアは淡々と語っていた。

当時のGMはリーマンショックで2009年に破綻したばかりで、ミドシップにすることは、予算的にもむずかしかった。ということも今回耳にして、なるほど、と思った。

ともかく彼らは本気だったのである。これで日産にも火がついて、次期フェアレディZをミドシップにしてくれたらいいのになぁ、と夢想する。

さらに余談を続けたい。筆者はデトロイトでC7のデビューを見届けた後、ケンタッキー州ボーリング・グリーンにあるナショナル・コルベット・ミュージアムを訪問した。ナショナルといっても国立ではなくて、コルベットのいちファンが10年がかりで基金を募り、コルベットの組立て工場の隣に設立し、1994年にオープンしたもので、その目的は、コルベットの誕生を祝い、過去、現在、未来を守り、コルベットについて啓蒙することにある。

初代からのコルベットが一堂に見られることもさることながら、筆者が驚いたのはお墓があることだった。「コルベットの父」、ゾーラ・アーカス=ダントフさんはこの施設内でコルベットを永遠に見守り続けている……。アメリカズ・スポーツカーは霊的な存在なのだ。

う~む。安い!

閑話休題。富士スピードウェイのパドックに時間と場所を戻すと、赤、青、黄色、オレンジ、ガンメタと、どのボディ色もキレイで、どの色もヨカッタ。スーパーカーというのは、そこにあるのに現実感がないもの、である。新型コルベットはまさにそれだ。

運転席に座ってみると、フロントにエンジンがないから視界がよい。シートの位置は40cm、C7比で前進している。スポーツカーらしい囲まれ感があって、C7以上にタイトで、スイッチ類がセンター・コンソールにいっぱい並んでいる。ルーフのトップが外してあったこともあって、閉所感はない。品質感の高さは驚嘆に値する。その精密さにおいて日本車はもちろん、ヨーロッパの高級車ブランドにも負けていない。

いまやフェラーリのV8ミドシップは3000万円以上もすることを考えると、う~む。安い。と、言いたくなる。2000年代の初めにフェラーリ「360モデナ」が登場した頃の価格よりも安いのだ。21世紀の現在、どうやってこの価格で、この品質を実現しているのか、不思議なほどだ。

そうそう。ラゲッジ・ルームは前後にあり、コンバーチブルでも、ゴルフバッグが2個入るという。どんなゴルフバッグは知りませんが、確かにスペースは確保されている。それでいて、プロポーションが崩れていないのだから、すばらしいパッケージングである。

GMジャパンによると、RHD(右ハンドル車)はグローバル・マーケットにあって日本先行発売で、もしもほかの国でRHDのC8を見たら、それはパチモンだそうだ。冷静になって考えれば、日本は世界第3位の自動車市場で、世界最大のRHD市場なのだから、ビジネス的には当然ともいえる。とはいえ、納車を待っている顧客にすれば、グッド・ニュースであろう。

“侠気”の時代は変わった

年内の日本市場分は300台で完売しているということだけれど、それも当然だろう。コルベット初のミドシップで、ドライバーの背後に伝統のV8OHV自然吸気が鎮座して、価格は先代C7よりはちょっと高いとしても、イタリアン・スーパーカーの半額以下。RHDで、おそらく自然吸気V8エンジン最後のコルベットとなるだろう。内外装の質感はこれまでのコルベット以上だし、これまでコルベットに関心がなかったひとにも魅力的に映るのではあるまいか。実際、世界中で大人気とのことで、生産が需要に追いつかないという。

日本での受注はいまのところ、40:40:20で、2LTとコンバーチブルがどちらも4割、残りの2割を3LTが占めている。2LTの1180万円に対して、3LTは1400万円。3LTにはフロントを40mm上げる、段差を乗り越える際に便利なリフト機構が付いている。これは実用上、大きなメリットになるだろう。

内装には、カーボンやナッパ・レザーが使われていたりもする。2LTには220万円も安いというメリットがあるし、コンバーチブルには屋根が自動で開くという特徴がある。どれでもいいなぁ。うらやましいです。

いよいよレーシングコースをデモ走行する時間となり、その直前、パドックで乗り込んだドライバーたちがオンラインの視聴者にV8OHVのエグゾースト・ノートを聴かせるべく、それぞれブリッピングした。ボア×ストローク=103.25×92mmの巨大なシリンダー8本が発する、雷鳴のような爆音が轟く。それぞれ、てんでバラバラだったブリッピングが、やがてジャズの即興演奏のようにハーモニーっぽくなり、筆者はその音色にシビレタ。1基あたり495psと637Nm。合計2475psと3185Nmの大合唱である。

そのデモ走行に向かう直前、ドライバーのひとりをつとめる旧知の清水和夫さんに近づいていくと、「オレのコメントとして、こう書いといて」と、筆者に言った。

「酒とタバコとギャンブル。男の嗜みとして足りていないものがあるとしたら、でかいエンジンのスポーツカー。それがアメリカの男の“侠気(おとこぎ)”だよ」

これは走行前の、つまり運転する前の発言で、富士スピードウェイのレーシングコースを全開で駆け抜けたあと、清水さんに感想を求めると、清水さんは神妙な顔でこう語った。

「先代C7は、フロント・エンジンで速くするためにサスペンションのブッシュを硬くしたり、高性能なタイヤを履かせたりしていた。C8はミドシップにしたことで基本の運動性能が上がり、NVHが向上して、高級車になった……」

“侠気”の時代が変わったことを、清水さんはアメリカのスポーツカーを通して知ったのだ。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)

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