最新XC60は、よりスタイリッシュに心地よく熟成
現行XC60が日本で登場したのは2017年の秋だった。同年末に輸入車として2台目となる「日本カー・オブ・ザ・イヤー」に輝いたほか、年明け3月には「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」を獲得。世界中で数々のアワードを受賞した。
ボルボXC60がマイナーチェンジ。B5系のエンジンはミラーサイクル化して燃費効率を向上
それからだいぶ時間が経過しているが、XC60は大きな存在感を発揮し続けている。2024年のボルボの世界販売台数は過去最高となる76万3389台。その中で、XC60は約23万台を販売。いまでもグローバルでボルボのベストセラーとなっている。
XC60が属するプレミアムミッドサイズSUV市場は激戦区である。メルセデスGLC、BMW X3、アウディQ5、レクサスRX&NXなど強敵がしのぎを削る。その中で、ロングライフのXC60が健闘しているのは、それだけ魅力があるからだ。
さらにXC60は、2025年6月25日に新たな称号を手にした。累計販売台数が270万台を超え、往年の名車、240を抜いて、ボルボ史上最多販売モデルになったのだ。
240シリーズは1974年から1993年にかけて268万5171台を生産したFRモデル。セダンとワゴンが選べ、ファミリーカーの定番というイメージ。とくに母国のスウェーデンやドイツ、北米などで人気が高かった。その240とともに育った人々が、いまでは自分の家族のためにXC60を選んでいるのだろう。
エンジンのミラーサイクル化で効率を改善。インフォテインメントも最先端に
XC60は、これまでも積極的な電動化やグーグルの導入などいちはやく新しい技術にトライしてきた。2026年モデルでは大幅なアップデートが実施された。デザインのモダン化をはじめ、MHEV仕様となるB5の2リッター直4ターボのミラーサイクル化を実施。より快適で、応答性の高いインフォテインメントシステムが与えられている。
先進安全装備も充実。基本的には2022年から変わっていないが、エマージェンシー・ストップ・アシスト機能が追加された。これはパイロットアシスト作動中にドライバーがステアリングを握るよう求められても反応しない場合に自動で安全に停車させる機能だ。
試乗したのは日本市場で約6割を占めるというUltra B5 AWD(879万円)だ。ほかに90万円安でPlusというグレード名の2WD、150万円高でPHEVのUltra T6の4WDが用意されている。このところ自動車業界全体が値上げ基調の中、XC60の上がり幅は控えめ。この点は大いに歓迎したい。
ボルボというと10年ほど前までは、安全性や実用性の高さで選ばれていた。最近はデザインで選ぶという人が最も多いそうだ。確かに最近のボルボはどれもオシャレである。XC60の容姿はエレガント。古さを感じさせない素晴らしいデザインだと思っていたが、今回さらに磨きがかかった。主な変更点はXC90と同様に斜めのモチーフを採用したフロントグリル、新意匠のホイール。LEDテールランプは内部がグロッシーブラックになり、ボディカラーには新色が追加された。
インテリアも新しい。センターディスプレイの画面が大型化し、システムを更新したほか、センターコンソールのワイヤレス充電器の位置がより使いやすく変更されている。シートはバイオリサイクル素材を用いた仕様や、レザーフリーを好む人向けの仕様も選べる。試乗車にはベンチレーションやマッサージ機能の付いたファインナッパレザーシートが装備されていた。
最新のインフォテイメントシステムはインターフェイスが非常に使いやすく整理されている。情報処理速度が2倍以上、グラフィック生成速度は10倍に向上したというだけあって、確かにレスポンスが速く、音声認識の正確性にも感心した。
走りも進化している。B5のマイルドHEVシステムは、2リッターターボ(250ps/360Nm)のミラーサイクル化で燃費が5%ほど向上した。ミラーサイクルというと低回転域のドライバビリティが気になる。この対応でボルボは、バリアブルノズルタービンを採用。低負荷時でも十分に過給がかかるようにし、実用的なパワーを確保した。アクセル操作に対して応答遅れなく加速してくれるのは好印象。動き出しは従来モデル以上に軽やかだ。マイルドハイブリッドとの連携も進化して、これまでにも増して俊敏でスムーズな走りを実現している。
静粛性も一段とレベルアップしていた。最新モデルは充填発泡材をピラーの中に入れて透過音を抑えるとともに、エンジンルームに遮音材を追加している。その効果は幅広いシーンで実感できる。従来モデルも静かな印象だったが、確実にレベルアップしている。
シャシーに関する変更はとくに伝えられていない。だが乗ると明らかに印象が変わっていた。ステアリングフィールはスッキリと滑らか。動きの一体感が増している。心なしか乗り心地もよくなっているように感じられた。
今回の改良で、XC60はもうしばらく現役を務めるのに十分以上の完成度に到達したと実感した。これまでも古さを感じさせないクルマだと思っていたが、その思いがさらに高まった。
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