「Qシリーズ」の延長線上にはない。アウディが本気で目指す“脱・優等生”のタフネス
アウディが、メルセデス・ベンツ「Gクラス」の強固な牙城を崩すべく、本格的なタフネス・オフローダーの開発に本腰を入れる兆しがある。既存のクロスオーバーSUV「Qシリーズ」の延長線上にはないこの新型車計画は、一度は沈黙を守っていたものの、トップの強い意志によって再び動き出そうとしている。ライバルとして想定されるのは、Gクラスをはじめ、ディフェンダーやレクサスGXといった、市場を牽引する強力なモデルたちだ。
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2年越しの沈黙を破るトップの宣言
この「本格オフローダー計画」の噂には前段がある。発端は2023年初頭、当時アウディのチーフデザイナーを務めていたマーク・リヒテ氏が英メディア『Autocar』に対し、GクラスなどのタフなSUVに対抗しうるモデルの開発意欲を語ったことだった。それから2年以上が経過したが、アウディから頑丈なSUVが登場することはなく、現在開発が進められている新フラッグシップ「Q9」も、あくまで従来のQシリーズの流れを汲むクロスオーバーSUVに留まっている。
高額でありながら好調なセールスを続ける象徴的なGクラスに対し、対抗馬を持たない状況が続いていたが、事態は急展開を迎えた。アウディのゲルノット・ドルナー社長自身が先日、同じく英国メディアに対して頑丈なオフロードSUVを発売するという「夢を諦めない」と明言したのである。この言葉は、凍結されていたかもしれない本格オフローダー開発が、水面下でスタートしたことを示唆している。
予想CGが描く「脱トレンド」のタフネス
この報を受け、デジタルアーティストのTheottle氏が作成した予想CGからは、アウディが目指すであろうタフネスぶりが具体的にイメージされている。フォルクスワーゲングループ傘下のスカウトモーターズが手がける「トラベラー」と、アウディ「クロスレーンクーペ」を融合させたその姿は、これまでのアウディSUVとは一線を画すものだ。
フロントエンドには巨大なスクエア型のシングルフレームグリルと大型サイドインテークが鎮座し、近年のスリム化トレンドに逆行するかのような大型LEDヘッドライトとデイタイムランニングライトが装備されている。一方リアセクションにおいては、外付けスペアホイールを廃止したシンプルかつ直立したデザインを採用。さらに、トレイルでの走破性を高めるために短くアグレッシブな角度を与えられたリアバンパーが、本格派としての性格を強調している。
グループシナジーで挑む最強の市場
中身となるパワートレインに関しては、航続距離に対するユーザーの不安を払拭するため、フォルクスワーゲングループ内であるスカウトと同じ構成を共有するのが合理的との見方が強い。
アウディが本気で参入を画策するこの本格オフローダー市場は、長らくGクラスが王座に君臨してきた領域である。「夢を諦めない」という社長の言葉が具体的な形となって現れたとき、果たしてアウディはライバルの牙城を崩すことができるのか。今後の続報から目が離せない。
【ル・ボラン編集部より】 「技術による先進」を掲げるアウディが、不変の象徴たるGクラスの牙城に挑む。Qシリーズで見せる知的な振る舞いとは対極にある、泥臭いタフネスをどう解釈するのか。VWグループの「スカウト」との共有は合理的だが、そこにアウディ独自の「クワトロの哲学」が宿らなければ、単なるバッジエンジニアリングに終わる懸念もある。洗練された都市の移動と、未踏の荒野。この二律背反を高度に克服できた時こそ、ブランドの新たな真価が問われることになるだろう。
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