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移動革命の切り札「MaaS」、なぜ日本で全然広がらない? 「認知度18%」が突きつける辛らつ現実とは

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移動革命の切り札「MaaS」、なぜ日本で全然広がらない? 「認知度18%」が突きつける辛らつ現実とは

MaaS認知度は18.3%の現実

「MaaS」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

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 2022年の調査によると、MaaSの認知度は18.3%で、内容理解は5.9%に過ぎないことがわかった。

 特に、10代から30代で認知度と理解度が高い傾向があるが、最も高い20代でも75.1%は「全く知らない」と回答している(2022年12月、MMD研究所の調査)。

 MaaSは移動を劇的に進化させる可能性を持つ技術でありながら、なぜこれほど広く知られていないのか。その理由を考えてみよう。

移動手段の統合で利便性向上

 MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)は、移動手段をひとつのサービスとして提供する新しい概念で、フィンランドで誕生した。「マース」と読む。

 MaaSの主な特徴は、複数の移動手段をひとつのプラットフォームで提供することだ。これにより、利用者は異なる交通手段を統合的に利用でき、移動に関する検索、予約、決済がすべてひとつのアプリ内で完結する。このサービスの考え方は、

・バス
・電車
・タクシー
・自転車
・カーシェアリング

など、個別の交通手段を単独で利用するのではなく、それらを組み合わせて効率的に移動できるようにすることだ。これによって、移動にかかる時間や費用を最適化できるだけでなく、環境にも配慮した移動が実現できる。

 簡単にいえば、MaaSは乗換案内アプリとSuicaを組み合わせたようなサービスだ。乗換案内アプリでは交通情報は得られるが、支払い機能はない。一方で、Suicaだけでは複数の移動手段をどう活用するかはわからない。MaaSは、こうした異なる移動手段をひとつのプラットフォームで統合し、検索から予約、決済までをひとつのアプリで完結させる。

 MaaSの発祥は2016年、フィンランドのヘルシンキでMaaS Global社が「Whim」というアプリを試験運用したことから始まる。このアプリは、ヘルシンキのバス、電車、トラム、メトロ、フェリーに加え、タクシー、レンタカー、シティバイク、カーシェアリングなど、複数の交通手段を一括で利用できるようにした。これにより、自家用車の利用が減り、環境負荷の低減にも貢献した。

移動手段間の壁を越える課題

 MaaSは現在、黎明期にあり、進展の度合いによってレベル0からレベル4までの段階がある。日本では2019年から国土交通省の支援のもと、実証実験が始まり、全国各地でMaaSサービスが立ち上がっている。

 サービスは地域ごとの特徴が強く、そのため地域内で完結するシステムが数多く存在する。都市ごとに交通事情が異なり、それに合わせてサービスが最適化されている。しかし、地域間を移動する際には複数のMaaSを利用する必要があり、これが課題となっている。

 また、サービス間には壁も存在する。MaaSを実装するためには、データの活用が重要だ。

・どの地域に利用者が多いか
・どこが渋滞しているか

といった情報は不可欠だが、移動手段には官民を問わずさまざまなサービスが関わっており、交通機関同士で情報を共有することには障壁がある。情報の共有自体は可能だが、大規模なエコシステムを構築するには多くの組織が協力する必要がある。

 そのため、MaaSは現在、地域ごとに独自のシステムが存在し、全国で共通の

「これさえあればどこでも移動できる」

というサービスはまだない。例えば、LINEは日本全国で普及しており、ほぼ全ての人と連絡が取れるが、MaaSにはそのようなキラーアプリは登場していない。Suicaは全国規模で公共交通を接続しているが、MaaSは多くの要素を含み、実現にはかなりの時間と労力がかかるだろう。

サブスク時代のモビリティ革新

「交通」とは主に移動手段を指すのに対して、「モビリティ」には移動そのものだけでなく、その前後の活動や施設へのアクセスも含まれる。MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)を開発し、活用するためには、この「交通」から「モビリティ」への発想転換が求められる。

 例えば、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に住む人が病院に行く際、診察予約を基に、時間に合わせてオンデマンドで配車されるサービスや、旅行者が電車やシェアバイクなどを組み合わせて観光スポットを巡り、事前に予約した博物館に入場するケースが考えられる。

 また、航空機を利用し空港からホテルへ向かい、荷物を置いて一息ついた後に予約していたレストランに向かうなど、人々の移動ニーズは多様で一度きりの旅に限らず、サブスクリプションサービスで繰り返し利用されることもある。

 同じ地域を繰り返し回遊する場合、複数のサービスと料金体系を用意し、移動と活動をシームレスに結びつけ、サービス間での決済統合を行うことが求められる。このためには、単なる技術革新だけでなく、実際の実装に向けた創意工夫や継続的な改善が欠かせない。

 MaaSには、公共交通機関からAIを活用した配車アプリ、オンデマンド交通サービスなど、さまざまな形態のサービスが存在する。例えば、仙台MaaSでは、公共交通やタクシー、観光施設などを組み合わせて利用することができる。

普及進展、課題と未来の展望

 現在、多くの人は目的地までのルートを調べて、別途チケットを購入しているだろう。MaaSは地元住民にとって便利なだけでなく、旅行者にとっては非常に重要な役割を果たす。特にインバウンドにとって、日本の交通機関や日本語の壁は移動の大きな障害だが、MaaSはその解決策となる可能性がある。

 MaaSは一言で説明するのが難しく、まだ決定的なプラットフォームが確立されていないため、少し分かりにくいかもしれない。この点がMaaSの認知を妨げている大きな要因だろう。

 MaaSが普及すると、誰でも簡単に移動できるようになる。移動そのものだけでなく、移動の前後に関わる活動もシームレスに結びつけるためには、さまざまなプラットフォームをつなぐための継続的な努力が必要だ。

 MaaSはまだ発展途上にあり、非常に大きな挑戦だが、まずは多くの市民が身近なMaaSを知り、利用することが、その発展に向けた重要な基盤となるだろう。

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みんなのコメント

13件
  • BEM1650024
    何?わからない。
  • tcnr33
    そりゃ創価の公明党が国交省の大臣やってるうちは何も進まんでしょう。
    国を衰退させるのが連中の目的なんだから。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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