2019年に開催初年度を迎えたTCRオーストラリア・シリーズ。そのトップチームのひとつであるケリー・レーシングが2020年シーズンへの参戦を見合わせると発表した。チームは同国最大のツーリングカー選手権であるVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーにも参戦しており、VASCでマシンをニッサンからフォードへとスイッチすることにともなう決定としている。
シーズン開幕からスバルWRX STI TCRとホールデン・アストラTCRの各2台、計4台体制を敷いて初のTCRシリーズを戦ったケリー・レーシングは、VASCでも同チームに所属するアンドレ・ハイムガートナーをエースに、VASC経験者のアレックス・ルーロやブライス・フルウッド、そして女性初のARCオーストラリア・ラリー選手権王者のモリー・テイラーや、同じく女性ドライバーでNZ出身のチェルシー・アンジェロなど多彩なドライバーを起用してきた。
WTCR:オーストラリア拠点のGRM、ルノー・メガーヌR.S.TCRでワイルドカード参戦を検討
しかしシーズン中盤にはハイムガートナーをスバルからホールデンへとスイッチさせるなど試行錯誤が続き、ランキング13位が最上位となるなど苦しいシーズンを送った。
こうした結果も踏まえ、VASCでは2020年にニッサン・アルティマL33からフォード・マスタング・スーパーカーへマシンを変更するケリー・レーシングは、本業に集中することを決断。チーム共同オーナーのトッド・ケリーは「2020年TCRオーストラリア・シリーズのグリッドにマシンを並べることはないだろう」との見解を示した。
「残念ながら、TCRシリーズでホールデン(アストラTCR)を走らせることはできないだろう。選択肢として、TCRでもフォードからのすぐれたファクトリーサポートが得られるような環境があれば最高で、僕らはすぐにでも対応できると思うんだけどね」と、地元豪州のモータースポーツ専門サイト『speedcafe.com』に語ったトッド代表。
「しかし、現時点でフォードにTCR規定に則した車両は存在しない。(VASCでは)フォード・パフォーマンスと強力かつ友好的なアライアンスを結んでおきながら、空いた週末には別のサーキットでホールデンを走らせるのは、おそらく正しいことではないだろうし、我々はそれを実行しないつもりだ」
しかし、1年間のチャンピオンシップ経験で蓄積したTCRシリーズへの理解は確かに価値があり、マシンのコンディションはシーズン開幕前とは比較にならないとも明かす。
「マシンのワイヤリング(配線)の細かな修正や、エンジンマップの調整、サスペンションの最適なセットアップなど、シーズンを通じて細部に至るまであらゆる問題に対処してきた。それらを考慮しても、最終戦まで走らせたホールデン・アストラTCRはシーズン後半に入り、非常に高い競争力を示した」と続けたトッド代表。
「そうしたプロセスを経たマシンは、いつでも実戦投入が可能な状態だ。我々が努力を続けてきたすべての仕事に関して、2020年にそのリターンを得ることができなくなったのは少しばかり残念だね」
「でも、今はこの装備に数名が興味を示してくれている。これは僕たちにとっても、非常に良いことだ」
同じく、初年度のTCRオーストラリア・シリーズでアルフォロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェTCR、ルノー・メガーヌR.S.TCRの各2台を投入した名門GRM(ギャリー・ロジャース・モータースポーツ)は、ケリー・レーシングと対照的にVASCからの撤退をすでに表明済みだが、2020年に向けてはプジョー308TCRもラインアップに加え、そのドライバーには2000年のバサースト1000勝者ジェイソン・バーグワナを起用すると発表した。
このプジョー308TCRは、初年度最終戦にTCRでプジョーのファクトリー活動をサポートするDGスポーツ・コンペティションが持ち込んだ個体で、47歳のバーグワナは2年契約を締結。さらに2020年後半に初開催予定の500km耐久戦"バサースト・インターナショナル"には、18歳の息子ベンとのペアリングで出場することも決まっている。
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